17 Nov
2015

外国企業が中国で特許権の臨時保護を行うために

発明特許出願の公開から授権日までの間の特許保護は、特許権の臨時保護と呼ばれている。中国専利法第十三条では、特許権の臨時保護について、「発明特許出願の公開後、出願人はその発明を実施している組織又は個人に適当な額の対価を支払うよう求めることができる」と規定している。本稿では中国の特許臨時保護の関連規定と判例について詳述し、外国企業が臨時保護期間内に潜在的な「権利侵害」行為を発見した場合の対策について提案する。

一、中国の法律における臨時保護に関する規定

まず始めに、米国や日本などの特許法の規定とは異なる点について述べる。中国においては、特許権者が権利を侵害した側に臨時保護期間内の合理的な費用を求める権利は、警告によって要件が成立するのではない。ただし、特許が授権を得た後にのみ、特許権者は臨時保護期間の権利について申し立てができる。

次に中国の専利法に基づき、授権された特許の保護については、授権時に確定した請求項の範囲に依拠する。しかしながら、臨時保護期間の特許の保護範囲に対しては、利益均衡の原則と社会公衆利益の原則に基づき、現行の方法で授権時の特許請求の範囲における保護範囲と公開時の特許請求の範囲における保護範囲が異なる場合、両者のうち、より小さな範囲を基準とする。

また、中国専利法には、特許の臨時保護期間の合理的な費用を確定するための明確な規定がない。司法の実際では、一般的に合理的な使用料は特許権侵害の損害賠償とは同等でないものと見なされる。つまり、「臨時保護の使用料を徴収する時、特許権侵害の損害賠償を判定する際に、被告が全利益を原告に賠償するよう要求するのとは異なり、『合理的な使用料』を徴収するだけである。そのため、それは製品の実際のコスト、販売利益等の状況を考慮しなければならず、かつ技術の使用者に適切な利益を残すべきである」ということである。これにより、臨時保護期間の合理的な費用は、一般に相応の期間の特許ライセンス料あるいは特許権侵害の賠償金を超えることや、それよりも低すぎることがあってはならない。

最後に、中国専利法は出願人がその発明を行った組織あるいは個人に合理的な費用の支払いを求めることができる権利を規定しているが、出願人は特許の臨時保護期間内にその発明を実施する行為に対して、実施の停止を求める権利はない。そのため、発明特許の臨時保護期間内に関連する発明を行うことは専利法の禁止行為には当たらない。つまり特許権者には、他人が特許臨時保護期間内に製造、販売、輸入した、特許権を侵害したとして起訴された製品の継続的な使用、販売の許可、販売を禁じる権利はない。

二、判例

1. 2013年、深圳市斯瑞曼精細化工有限公司と深圳市坑梓自来水有限公司、深圳市康泰藍水処理設備有限公司との特許権侵害紛争事件

本件では、発明特許の授権後に、被告坑梓社が発明特許の臨時保護期間内に被告康泰藍社から購入した特許権侵害の被疑製品を使用し、また被告康泰藍社は発明特許授権後に、被告坑梓社が使用する特許権侵害の被疑製品に対してアフターサービスを提供した。

法院の最終判定は次のとおりである。康泰藍公司は特許権侵害の被疑製品を案件に関与する発明特許の臨時保護期間内に販売したため、その行為は専利法で禁止されるものではない。この状況においては、後に坑梓自来水が購入した特許権侵害の被疑製品を使用する行為も許されるべきである。ただし原告はなおも被告に合理的な費用の支払いを求める権利を有する。

2. 2000年、蒋柏平が李磊等を告訴した、特許出願公開後、特許授権前の使用料支払いと特許侵害事件

本件において原告蒋柏平は被告李磊等を訴え、被告が案件に関与する特許の臨時保護期間内に原告の技術を使用して製品を生産した行為に臨時使用料を支払うよう求めた。

法院は以下のとおり判示した。被告の製品の技術的解決手段と原告の特許の技術的解決手段は一致し、権利の侵害を構成する。また発明特許の臨時保護期間の使用料54万元を支払わなければならない。

三、臨時保護期間内に潜在的な「権利の侵害」行為を発見した場合の対応

外国企業が中国で特許を出願する際に、特許の臨時保護期間に潜在的な「特許の侵害」行為を発見した場合、通常は警告状を発送しないことを提案する。なぜなら、中国では特許権者が権利を侵害した側に臨時保護期間内の合理的な費用を求める権利は警告を要件としないため、警告状を発送することは法律上必要な行為ではない。また、もし警告状を発送すれば潜在的な権利を侵害した側は考えを巡らせて権利の侵害と証拠の隠匿を「回避」する可能性があり、後の合法的権益の保護に不利な影響をもたらす。それ以外にも特許の臨時保護の権利は授権以後にしか行使できないため、特許権が最終的に授権されなかった場合や、授権の範囲と公開の範囲が実質的に異なることで臨時保護の権利を行使できない場合には「警告」の意義はなくなってしまい、人々に「悪意」の印象を与えることが考えられる。

しかしながら、警告状を発送しないことはただ受け身で特許の授権を待つということではない。外国企業は潜在的な「権利侵害」行為を発見した際に速やかに協力関係にある中国の弁理士事務所に知らせることができる。中国の弁理士は積極的に関連する「権利侵害」についての証拠を集め、それにより後の訴訟行為のために十分に備えることができる。また、拒絶理由通知書に回答する際には中国の弁理士は関連する証拠に基づいて目標を定めたうえで拒絶理由通知書に回答し、また請求項を変更する。できる限り授権した特許の請求項が潜在的な権利侵害製品をカバーするようにし、そうすることで授権後に一括して臨時保護と権利侵害の訴えを提起できる。

四、結論

外国企業は臨時保護期間に潜在的な権利侵権行為を発見した場合、中国の代理機構と共に積極的に対応するべきである。関連する証拠を収集して潜在的な権利侵害製品の特徴を考慮し、方向を定めて拒絶理由に回答する。そうすることでできる限り早急に臨時保護期間内の権利侵害製品をカバーできる特許を取得し、より効果的に中国で特許権を行使する事ができる。

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Jing Qu

弁理士

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柳沈律師事務所の弁理士。特許出願の準備と手続きに関して高品質なサービスを提供している。主な取扱分野は、電気通信、コンピューターサイエンス、電子工学、ネットワーク。

2010年に北京郵電大学にて情報工学の学士号を取得したのち、2013年に同大学にて信号と情報処理の修士号を取得。

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Dongguo Liang

弁理士

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柳沈律師事務所の認定弁理士。特許出願の準備と手続き、特許の再審査と無効手続き、特許調査、特許分析と査定、さまざまなクライアントの知的財産戦略の策定や実行支援に関して高品質なサービスを提供している。主な取扱分野は、半導体、電気回路、電気通信、機械。

2005年に清華大学にて電子工学の学士号を取得したのち、2008年に中国科学院微電子研究所にてマイクロエレクトロニクスの修士号を取得。現在、テンプル大学にてLLMプログラムを受講中。

AIPPI(国際知的財産保護協会)中国部会のメンバーであり、AIPPIが指定したQ244動議の起案に参画。2015年、北京でAIPPI中国支部が開催した会議で「従業員の発明に関する各国の所有権の比較」についてのプレゼンテーションを実施。