自動車業界の特許と標準

自動車における情報通信技術の融合が進むことにより、一般的な特許のライセンシングと、特に標準必須特許のロイヤルティの支払い交渉において新たな課題が生じている。

とんどの市場専門家が、消費者嗜好の変化、新しいビジネスモデルや業界プレイヤーおよび新興市場によって自動車業界に劇的な変化が生じると予測している。このセクターは、新たな持続可能性にかかる方針や環境政策の変更、安全性の問題に関する今後の規制によって大きな影響を受けることも確実視されている。こうした要因により、自動運転車両や電動化、相互接続といった破壊的な技術トレンドが引き起こされることが予測されている。

予測調査は、近未来のスマートカーは絶えずその周辺環境と情報を交換することになるだろうと推測する。「Car-to-X(車X間)」や「car-to-car(車両間)」通信システムが車や沿道およびインフラ間の通信を可能にする一方、機械要素は近いうちにインターネット基盤内でコンピュータシステムに組み込まれるであろう(図1)。将来の自動車業界は、装置や機械、建物その他の品目をエレクトロニクスやソフトウェアまたはセンサーとつなぐモノのインターネット(IoT)技術に依存する最初のセクターの一つとなるかもしれない。

図1.自動車における接続技術の進化

複数の機器やユニットをまたぐ相互接続性は、技術標準の仕様に依存する。こうした標準が技術の共通言語を確立し、複雑な技術システムの互換性や機能横断性を確保する。標準はしばしば革新的技術(ユニバーサル移動体通信システム(UMTS)、ロング・ターム・エボリューション(LTE)、WiFi、アドバンスト・ビデオ・コーディング(AVC)、デジタル・ビデオ・ブロードキャスティング(DVB)、近距離通信(NFC)等)の骨組みを作り、ますます多くの標準必須特許(SEP)の対象となる。高度に特許化された標準技術が融合されると、自動車メーカーには経済リスクが生じる。例えば、グローバル移動通信システム(GSM)やUMITS、LTEといった移動体通信規格のSEPに対するロイヤルティは、年間何億ドルにも容易に増大しかねない。そうした規格は、車両が周辺環境と通信するためのアプリケーションにとっても必須となるであろう。

ICT対自動車業界

自動車業界における標準設定は、ほとんどの場合、メーカーの生産ライン内の事実上の標準の設定に関連しているか、法律によって設定された安全基準の承認を伴う。しかし、情報通信技術(ICT)セクターにおいては、標準設定は互換性標準の範囲を超え、高度技術の共同開発と言い表すことができる。企業は標準設定作業部会の会合を開き、各々が自社の革新的技術を提示して選考および非常に複雑な標準化システムへの組み込みを行う。現在のところ、こうした技術のほとんどは、スマートフォンやタブレット、ノートブックといった機器での使用に限られているが、これらは間もなく建物やインフラや自動車に組み込まれる可能性がある。

自動車業界とICT業界では、標準の策定や用途が違うだけでなく、特許のライセンシング・メカニズムも異なっている。自動車業界における特許は、通常、縦方向でライセンスされる。ティア1の部品メーカーは通常、OEMメーカーにライセンス料を要求するのではなく、こうしたコストを部品価格に組み入れる。これによって、部品のサプライヤーとして、自社の部品に第三者の権利が含まれていないことを保証することができるのである。ライセンス交渉に関して言えば、ロイヤルティは大抵、発明によって改善された単一部品に基づいており、そのため、車両価格に対するライセンス・コストの影響は、これまでのところ最低限にとどまっていた。これに対し、ICT業界における特許ライセンス供与は、機器に重点が置かれ、よってOEMが対象となり、ロイヤルティは機器の平均販売価格に基づく。この結果、ロイヤルティは、比較すると、特にクロスライセンスを行う特許ポートフォリオを持たないメーカーにとっては、ずっと高額となる。

欧州電気通信標準化機構(ETSI)の知財方針といった標準化団体の規約は、SEPのロイヤルティをどう計算すべきかについて明確に定めていない。ところが、ICT業界と自動車製造業界のSEP所有者の間のロイヤルティに対する期待は大幅に異なっていることがある。ICT業界では製品全体の市場売上高に基づく2ケタのロイヤルティ率が一般的なのに対し、限界利益が比較的低い自動車業界では、これは想像を超えた水準であろう。しかし、今後、部品や製品全体ではなくモジュールに基づいてライセンス計算が行われることになった場合、自動車メーカーにとって法外なコスト増の原因となりかねない。自動車には複数のモジュールが組み込まれることが多く、そのためロイヤルティを幾重にも支払わなければならなくなる可能性があるためである。こうしたライセンスモデルは、自動車メーカーにとっては経済的に成り立たないものとなる恐れがある。

多くのSEP所有者は、標準の価値は特定製品の使用に基づくべきであると主張することに慣れている。現在のところ、自動車の接続性は、主に、規制措置によって強制されることもある緊急呼び出し(例:eコール)のような例外的ケースでのみ使われている。そのため、SEPのライセンス交渉の過程においては、ロイヤルティ率は最小販売可能特許実施ユニット(大抵、ベースバンド・チップとされる)に基づくべきであると主張されている。しかしこれは、機器の相互接続性の増分値を無視している。確かに相互接続性はスマートフォンで特に高いが、自動車に関しては、状況はそれほど明確ではない。

現時点では、LTEやWiFiなどの接続性機能は、新車購入の意思決定において重大な影響を及ぼしていない。しかし、そうした標準技術によってスマートで接続された新サービス(信号認識、事故防止、自動運転車等)が導入されれば、これは変わる可能性が高い(図2)。

図2.コネクテッドカーに含まれる技術標準

画像: Vladimiroquai/shutterstock.com

こうした可能性は、既に、SEP所有者の間に自動車メーカーに対し自身のSEPを主張することについての関心をかき立てており、電気通信業界の企業は今後の展開に注目している。

欧州裁判所(ECJ)や米司法省(DoJ)は、SEPライセンシングや差止救済について明確なルールを設定しているが、SEPの公正、合理的かつ非差別的な(FRAND)ライセンス条件をどのように計算するかに関する具体的な指針は設定されていない。既存の判例法の解釈は司法域によって根本的に異なっており、即ち、差止救済は問題外とされる国もあれば、それが問題なく可能な国もある。例えばドイツでは、訴訟手続の開始前であっても侵害メーカーが適切な保証金の支払を義務付けられることも多い。このことによって、多くの自動車メーカーに法的不確実性や予測不可能なコストが生じている。

準備をすすめる自動車業界

結果として、いくつかの自動車メーカーとSEP所有者は、過剰なロイヤルティを主張しようとするアグレッシブなSEP所有者に応戦するためのイニシアチブを開始した。

その一つが、ヨーロッパを拠点に2015年11月に立ち上げられたフェア・スタンダード・アライアンス(FSA)で、その方針書によればFRAND条件でのSEPのライセンシング推進を図ろうとしている。FSAは、革新的産業は不公正で不合理なSEPライセンス慣行に脅かされており、これによって市場参入への障壁が生み出される可能性があり、重要なセクター全体の経済成長への潜在力が低下しかねないと主張している。そのメンバーには、フォルクスワーゲン、ダイムラー、BMW、グーグル、AirTies、シスコ、デル、フェアフォン、HP、インテル、ip.acess、ジュニパー・ネットワークス、レノボ、マイクロマックス、パイカー・アクースティック、シエラ・ワイヤレス、テリット、ユーブロックス等が含まれる。

もう一つの取り組みは、ヨーロッパに拠点を置くCAR 2 CARコミュニケーション・コンソーシアムで、その主目的は、ヨーロッパにおける協調型高度道路交通システム(ITS)の調和的な実施と展開について合意することである。同コンソーシアムは、安全関連サービス用として、アメリカ、カナダ、メキシコ、オーストラリアの同様の周波数割当と足並みをそろえ、5.9ギガヘルツ帯にロイヤルティフリーの周波数帯を獲得した。自動車メーカー、インフラ提供業者、電気通信業者間の協力を促進している。そのメンバーには、フォルクスワーゲン、ダイムラー、BMW、アウディ、トヨタ、ホンダ、ルノーといった自動車メーカー、デルファイ、デンソー、コンチネンタル、ヴァレオ、カプシュ、ボッシュなどの自動車部品サプライヤー、クアルコム、LG、ファーウェイのような電気通信セクターの供給業者が含まれる。

3つ目のコンソーシアムはカー・コネクティビティー・コンソーシアムで、MirrorLinkと呼ばれるスマートフォン中心の自動車の接続ソリューションのためのオープン標準を策定している。メンバーには、シボレー、フォルクスワーゲン、ホンダ、トヨタといった自動車メーカーのほか、サムスン、ソニー、HTCなどの移動体通信メーカーが含まれる。

さらに、アバンチ(Avanci)という新たな特許プールが形成されている。この共同ライセンス・イニシアチブは、既にエリクソン、クアルコム、インターデジタル、KPN、ソニー、ZTEといった移動体通信業界でSEPを所有する大企業を引き付けており、ライセンサーとライセンシーの間の単一契約の創設を目標としている。結果として、メーカーは近い将来、各技術所有者にアプローチしてライセンスに関する要請、交渉、支払を行うのではなく、接続技術のライセンスを得るのに単一の市場に依存できるようになるはずである。このワンストップショップの原則は、まだ全てのSEPを完全にカバーしておらず(例えばLTEは含まれていない)、これが実現するかどうかは今のところまだわからない。しかし、SEP特許プールはそれでも所有分布に関する透明性を高めることができるであろうし、アバンチ特許プールの単価は、SEP交渉において参考として引き合いに出せる可能性も考えられる。この点において特許プールは、全体的なSEPロイヤルティ率を低下させる可能性のある多重または二重限界化の問題の解決において重要な役割を果たすかもしれない。「多重限界化」は、特許の所有状況が透明でないために、ライセンサーが自らのSEPポートフォリオのシェアや価値を過大評価する可能性がある状況を表す。複数のSEP所有者からのライセンスが重複する結果、市場において経済的に最適で実行可能な限度を超えてしまう可能性がある。LTEの全SEPの例えば約60%をカバーして一定の単価を設定する特許プールは、プール外のSEPが引き続き高価格でライセンスされたとしても、その点において透明性を生むのに役立つであろう。

関連するSEP

図2に示されるような、自動車業界にすぐに関連してくるであろう宣言SEPのボリュームをさらに理解するために、我々は、IPリティックス・プラットフォーム・ツールを使って検索クエリを複数回実行した。こうしたクエリでは、特定の標準化プロジェクトや標準仕様番号に焦点を当てて、アクティブな登録特許のみを考慮に入れた。我々は、GSM、 UMTSおよびLTEの宣言SEPを特定するために、具体的な技術仕様リストを使用し、宣言SEPの全体数についてより正確な状況をつかもうとした。しかし、この実証的調査では、法的な意味における宣言の正確さを検証することは試みなかった。ある特許が必須特許であるとの宣言は、宣言権を持つ者の評価にのみ基づいている。 図3は、移動体通信の3世代の標準であるGSM、UMTS、LTEのための全宣言SEPのうち、アクティブかつ登録済みのものを示している。数字から宣言SEPの量が膨大であることがわかる。宣言SEPの大きなポートフォリオを所有することは、ロイヤルティ収入の観点のみならず、クロスライセンスの交渉において強力な交渉力を持つという観点からも非常に有利である。自動車メーカーは、移動体通信標準のためのSEPを所有していないため、ロイヤルティの交渉となると立場が弱い。

図3.各標準化プロジェクトに含まれるアクティブで登録済みの宣言SEPの数

図4は、図2に示すように自動車の接続性に関連してくる可能性の高いその他の技術標準のためのアクティブで登録済みの宣言SEPの数を示す。宣言SEPの対象となる大型標準化プロジェクトには次のようなものがある。

  • AVCや高効率ビデオ符号化方式(HEVC)などのビデオ符号化技術
  • DVB、地上DVB、第二世代地上DVBなどの放送規格
  • WiFi(802.11a/b/g/n)、ワールドワイド・インターオペラビィティ・フォー・マイクロウェーブ・アクセス(802.16)、HaLow(802.11ah)、車両環境での無線アクセス(WAVE)(802.11p)、専用狭域通信(DSRC)(IEEE 1609)などの無線技術規格

無線規格のHaLow、WAVE、DSRCは新しいものであるため、今後数年のうちに関連するSEPの数は増える可能性が高い。

図4に示す数字は具体的なSEP宣言のみを表している。特に米国電気電子技術者協会(IEEE)が発表する標準の場合、SEPは特許権者が特許の内容を明らかにしない、いわゆる白紙宣言で宣言される場合が多い。この点について、米国の裁判所は、IEEEのSEP宣言データに反映されていないものの802.11系規格に必須の特許はおそらく数千(約3,000)あるだろうとの証言を受け入れている。この例から、例えばWiFi関連のSEPの実際の数は、図4で報告されているよりもずっと大きい可能性が高いことがわかる。宣言SEPに関する透明性が欠如していることにより、自動車メーカーの直面する法的不確実性が増大しており、車に統合される技術標準について発明特許請求を行う全SEPの実際の数の推定がきわめて困難となっている。

図4.標準化プロジェクトに関するアクティブで登録済みの宣言SEPの数

コネクテッドカーの関連標準

未来の技術によってコンピュータを使ったシステムに物理的世界が直接統合され、機械や車が情報を交換できるようになるであろう。こうした異なるシステムの相互接続性や複数の機器をまたいだ通信は、標準の共通仕様に依存する。したがって、標準化も技術のペースに遅れずに進む必要がある。このため、最新の技術成果の標準化を扱うための新たな作業部会が形成されつつある。ここでも我々は、IPリティックス・プラットフォーム・データベースでキーワード検索クエリーを実行し、コネクテッドカー関連の技術標準を公表している標準化団体や作業部会を特定した。図5から図7で、DSRC、ITS、WAVEについて活動している主な作業部会を示している。

図5.DSRCに関して発表された標準化文書の数

図5は、アメリカに拠点を置き世界的に活動する標準化協会である米国自動車技術者協会(SAE)がDSRCに関する標準化文書を最も多く発表しており、ETSIの複数の作業部会、国際材料試験協会アメリカ支部(ASTM)、IEEE、国際電気通信連合(ITU)、欧州標準化委員会(CEN)、国際標準化機構がこれに続くことを示している。合計約36の標準化文書がこれらの団体によって正式に発表されている。

図6.ITSに関して発表された標準化文書の数

これに対し、図6は、ITSに関しては600を超える標準化文書が公表されており、最も活発なのはETSIの各作業部会、CEN、IEEE、ITU-RおよびASTMであることを示している。こうした文書のうち、90%が過去3年間の間に公表されている。

図7は、WAVEの規格を公表している作業グループを表している。この技術は、ほとんどがIEEE 802.11p規格によるもので、これまでのところIEEEとそのパートナー団体である米国規格協会(ANSI)やSAEによって開発が進められている。

図7.WAVEに関して発表された標準化文書の数

各標準化団体の知財方針にはかなりの違いがあるため、技術の標準化が行われる公開討論の場が必須である。標準化団体は、SEPを宣言する方法に関するルールを設定し、加盟メンバーがそのライセンス付与や執行をどのように行うべきかについての指針を確立する。IEEEは、最近知財方針を変更したばかりであるが、そのプロセスにおいては政策立案者や業界の専門家、標準化法人の意思決定者の間で活発な議論が行われた。新しい方針は以下の通りとなっている。

  • 特許権者は、侵害者に対する差止を求める権利を放棄する確約書を提出しなければならない。
  • SEP所有者は、上訴段階まで訴訟を進めた後に初めて差止を求めることができる。
  • SEP保有者は、実施者が保有する非SEP特許に対するいわゆる「相互アクセス」から除外される。
  • ロイヤルティの交渉は、必須特許クレームを実施する最小販売適合実施に基づかなければならない。

IEEEで活動する一部の企業は、この新方針はロイヤルティの支払を求める際に自社の立場を弱くすると考えている。方針協議は、いわゆる「ホールドアップ」や「ホールドアウト」の状態に関する議論に巻き込まれることがよくある。「パテント・ホールドアップ」とは、SEPの所有者が、ある規格の実施者からFRAND条件によるロイヤルティより多額の支払を要求する状況を指す(例えば、企業がある技術を実施した後に特許権者が訴訟を起こし、技術開発プロセスを中断するには遅すぎる場合)。「パテント・ホールドアウト」は、実施会社がSEP所有者によるロイヤルティの請求を無視し、特許保有者に対する合理的な支払から逃れたり、遅らせたりする場合である。標準化団体の知財方針は、そうした状況に影響を及ぼす可能性があり、従ってライセンス交渉における交渉力が違ってきたり、ロイヤルティの支払強制のための選択肢が変わったりすることがある。

コネクテッドカー規格の主要特許所有者

自動車業界にとって重要な新たな標準化技術の周辺の技術を開発する現在の市場参加者について理解を深めるために、我々は、特許文書において特定の標準化文書番号(IEEE 802.11pなど)に言及している特許について、IPリティックス・プラットフォーム・ツールを用いた検索を行った。図8は、IEEE 802.11p規格に言及する上位15の特許権者およびポートフォリオを示している。最上位には、コンチネンタルやカプシュといった自動車部品サプライヤーや、ゼネラルモーターズ、フォルクスワーゲン、BMW等の自動車メーカー、およびNXP、ブロードコム、シーメンスといった部品メーカーが含まれる。移動体通信メーカー(クアルコムやLG等)の数は、図9と比べると、予想されるであろう数より少ない。

図8.IEEE 802.11p規格に言及する特許ファイルの数と現在の特許権者

図9は、自社の特許ポートフォリオにおいてIEEE 802.11ahに言及する上位15の特許権者を示している。最上位にはクアルコムやLG、マーベル、インターデジタルが含まれる。IEEE 802.11p関連特許に比べると、IEEE 802.11ahの特許権者は全てICT業界出身であるという違いがある。

図9.IEEE 802.11ah規格に言及する特許ファイルの数と現在の特許権者

IEEE 802.11ah規格は通信距離が長く消費電力が低い。HaLow規格は900メガヘルツ帯域まで拡張するが、本来はウェアラブルや低電力センサー用に設計されたものである。これは、定着しているWiFi規格のほぼ2倍の距離で、厳しい環境(街路や路側、建物、塀など)において性能がより安定する。また、IEEE 802.11pは、多くの車X間アプリケーション要件を満たすよう設計されており、最も厳しい性能仕様であるが、距離は短い。従って、これら2つの規格の使用事例は、応用の段になると異なってくるかもしれない。

図8と図9の分析は、自動車業界がICT世界と重複するという技術提供者の情勢の変化を示唆している。自動車メーカーや自動車部品サプライヤーは、競争力を維持するためには、コネクテッドカー領域における新発明をモニターするだけでなく、その開発に関与しなければならない。

展望

フィーチャーフォンからスマートフォンへの移行が見られ、新たなビジネスモデルやプラットフォームおよび市場参加者が企業間における利益の分配のし方を変えた携帯電話業界と同様、我々は、間もなく、自動車業界内においても転換や利益の再分配を見ることになる可能性が高い。目下の軌道は、現在使われているインターネットを利用したインフォテインメント・システムから、より高度な運転支援システム、そして完全無人運転技術まで、さらなる接続性の拡大を指し示している。車の接続性は、自動車のバリューチェーンを根本的に変える潜在力を有している。

こうした挑戦に立ち向かうために、自動車メーカーは、ICT業界の複雑なライセンスの世界を直視し、正しい知財戦略を作り上げる必要がある。これには、自動車業界の競合他社やサプライヤーの既知の環境を超えた、知財活動のより総合的なモニタリングが含まれる。自動車メーカーの知財分析では、ICTの標準化活動の理解についても考えるようにすべきである。現在策定や設定が行われている標準は、将来の新興技術やアプリケーションの基本的な技術基盤となるかもしれない。

一方、電気通信業界は、ロイヤルティの計算に関する業界慣行を自動車業界に押し付けることはできないかもしれないことを認識する必要がある。それどころか、自動車メーカーのバリューチェーンをもっと理解する必要がある。この点において、全ての市場プレイヤーは、イノベーションのための刺激を生み出し、新たな企業やモデルが市場参入できる均等な機会を確保するために、知的財産の共同利用に対応できる経済的に実行可能なメカニズムを確立しなければならない。

行動計画

SEPのライセンシングは、自動車業界全体にとって大きな問題となりそうである。自動車メーカーや自動車部品サプライヤーの経営陣や部長は、次のような重要検討事項を念頭におくべきである。

  • 接続性を可能にする未来の技術は、LTEやWiFi、HEVCといった特許技術標準にますます依存するようになる。
  • 宣言SEPの数は絶えず増加している。知財部長は、ロイヤルティ費用や適切な前払保証金について考慮すべきである。
  • 知財部長は、特許出願データから検索される情報について検討するだけでなく、標準化活動やSEPの宣言についてもモニターしなければならない。特許と標準の相互作用の分析は、知財のリスクポテンシャルの数量化に役立つ可能性がある。
  • 経営幹部は、特許主張主体が広範囲にわたるロイヤルティの支払を主張するためにSEPポートフォリオを取得することの多いダイナミックなSEP市場について留意すべきである。
  • 自動車メーカーは、未来の接続技術の開発に十分に関与できるようにするために、特許および標準化のための共通戦略を追求すべきである

ティム・ポールマンは、ドイツ、ベルリンのIPリティックスの創業者でCEOである。

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