今日の企業の成長戦略を後押しする、知的財産に関する5つの最新の考察
This is an Insight article, written by a selected partner as part of IAM's co-published content. Read more on Insight
今日、企業価値の80%以上が無形の資産であるということは、共通の認識となっている。知識集約型の経済において、知的財産は企業の成長と高度化に対し、極めて重要な役割を担っている。見る限り、知的財産はビジネスである。
イノベーションの支援 – 市場調査とイノベーション 提案の合理化
洞察
競合の分析と市場解析の実施
競合の分析と市場解析の調査は、どの発明に追求する価値があるのか、発明者たちに今後引き継ぐことが可能な知識は何かを企業が理解するのに役立つ。今では企業の特許弁護士はテクノロジーを活用し、すでに市場に出ている製品や、競合他社が開発を手がけている製品を知ることができる。例えば昨年は、ロボット芝刈り機に関する特許が申請されている。競合の芝刈り機企業が、この特許または製品の市場投入よりも前にこの出願の存在を認識していることがいかに有用か、想像してみてほしい。
市場及び技術動向に対する洞察は、発明者たちにとって、どのアイデアが追及する価値のあるものかを決定する際に非常に有益となる。さらに、企業の戦略と取り組みに基づき、最も収益の高い方向へ発明者たちを導きたいと思っている企業にとっては、計り知れないほど貴重であろう。
行動
イノベーション提案の合理化
企業には、発明者たちがオンライン上でアイデアを出し合い、機密保持契約(NDA)に署名し、レビュープロセスの中で、発明の状況に関する最新情報にアクセスできる機能を持った発明者ポータルが必要とされている。アイデアが承諾されたら、エンド・ツー・エンドのIPMツールによりすべてのメタデータを捕捉し、発明者と企業との間で必要となる必須契約を迅速に作成する。
全面的なイノベーション・レビュー
イノベーション・レビューは、発明者のアイデアに投資をすべきかどうかを企業が判断するために不可欠である。この発明で特許権を取得できるのか?この発明で市場で差別化が図れるだろうか?今日の知財のベスト・プラクティスには、他の特許やすでに実行されている出願に関して、競争力のあるインテリジェンスが必要とされる。そのインテリジェンスにより、代理人は該当の発明で特許権を取得できるかどうかを判断できる。代理人はさらに、競合他社が同種の技術分野でイノベーションに着手しているかどうかを確認することができる。この種の情報は、企業が追求すべきアイデアかどうかを判断するときの手段となる。
出願手続きの最適化 – より優れた特許の設計
洞察
最高品質の特許申請書を作成することは、あらゆる特許弁護士が目指すところである。そうすることが技術を保護するだけでなく、革新的な企業を世界で最も競争の激しい市場の最前線に押し出すことになる。申請書作成および拒絶理由通知対応ツールは、IPMソフトウェアに外部のデータを統合することにより、代理人がより強力な特許申請書を作成し、より優れた拒絶理由通知対応を展開し、管理上の雑用を削減し、作業の最も実質的な部分に継続して集中できるようにする。
特許クオリティ・レポートのレビュー
特許クオリティ・レポートは、利用可能な最新の特許ソフトウェアを活用することで、作成されたすべての申請書に対し、最高の価値と防御可能性が確保されるようにする。また徹底した品質と、特許または申請に関するリスク評価を提供し、特許クレームの言葉に伴う潜在的な問題と脆弱性を特定する。
徹底的した分析は瞬時に行われ、出願にかかる費用と時間を大幅に削減するとともに、防御と権利行使の可能性を向上させる。これらのツールはクレームを評価し、分析を行っている代理人に対し、技術ユニット予測、アリス判決リスクなどの情報を伴う分析結果を提供し、先行技術に基づく過誤や避けるべき用語に関する警告を発する。目的が提出前の文書を見直すことであれ、競合者による既存の資産に関する問題を確認することであれ、特許クオリティ・レポートは知財分野の実務担当者にとってダイナミックなツールとなる。
審査統計の検討
拒絶理由通知レポートは審査官、技術ユニット、今後の訴訟について分析し、特許査定率、係属、申請の勝率、特許査定通知に対する拒絶理由通知の数、継続審査請求(RCE)に関する特許査定率、インタビューがある場合の特許査定率、拒絶理由通知対応の改善に必要なその他の関連データを提供する。
行動
弁護士は前述のデータを活用して、ソフトウェア・ツールによりさらに優れた申請書を作成し、拒絶理由通知対応を繰り返すことにより、特許査定通知を獲得するチャンスを最大化することができる。
より質の高い特許申請書の作成
代理人は作成ツールにより、文書入力、編集、書式設定、図表などの文書準備タスクを合理化し、申請書の作成において知的要素に注力することができる。これらのツールは法律の専門家たちに対し、コンピュータ支援設計(CAD)がエンジニアや建築家に与えるのと同等の自動化のメリットをもたらす。質の高い特許申請の作成、申請、処理にかかる時間を50%以上も短縮することができる。
最上の申請書作成アプリケーションは、インポート済みのクレームセットの書式を整え、タグ付けされた一連のクレーム用語とフレーズを提供し、クレームに対する校正サポートを行い、方法クレームを装置クレームおよびCRM(コンピュータ可読媒体)クレームへ瞬時に変換する。また先行技術の過誤、クレームの記載順、クロスリファレンスの誤りを検知し、繰り返されるクレーム番号の引用も確認する。搭載されている図表ツールは、明細書の「発明の詳細な説明」セクションと内容を同期化させ、図表や番号の変更を申請書のテキストと一致させる。さらに図表について、完全にフォーマット化されたReady-to-File形式のPDF文書を生成する。
拒絶理由通知対応を向上
拒絶理由通知対応ソリューションでは、光学式文字認識(OCR)により拒絶理由通知をインデックス化することで、全文検索や審査官が記載するテキストのコピー・ペーストが可能となる。自然言語認識機能が自動的に審査官による問題提起と引用を確認し、拒絶理由通知とクレームをワード文書に変換する。これにより代理人が使用できるカスタマイズ可能なテンプレートから、対応の技術的・法的主張をまとめた文書を作成することができる。さらにこれらのツールは、審査官が引用した技術に関する概要およびリンクを含む、報告レターを自動で生成する。
ポートフォリオ管理 – 文書管理を超えた進化
洞察
知的財産管理(IPM)は、基本的なドケッティング(文書管理)、タスク管理、出願手続きを超えて進化している。多くの従来型のIPM活動は、今日ではどこでも使っているありふれたものとなっている。現代のIPM戦略は、ワークフロー、コラボレーション、ドケッティング、データ視覚化、および世界の特許解析を集約的に統合して、新たなレベルの生産性と、より賢明で競争力のある経営判断を行うための洞察を提供する。こうした戦略は、企業によるポートフォリオ管理業務の効率性をはるかに向上させる深い見識をもたらす。
パテントスコアの検証
パテントスコアは、それぞれの特許について、技術、引用、法的強度に基づき評価、ランク付けする定量的アプローチである。それぞれの測定基準が、1から100に数値化される。これら3項目のスコアを組み合わせたものが、合成パテントスコアとなる。このスコアは、特許の品質、実用性、市場へのインパクトを確認するのに役立つ。例えば、ある分野におけるスコアの平均が85であるのに対し、ある企業の特許のスコアが45しかなかったとしたら、これは特許強度や市場における重要性の低下を示している可能性がある。
引用スコアと拒否分析に関する調査
企業は、引用解析により、あらゆる特許の引用プロファイル、ポートフォリオにおける適用、引用の頻度、特許を引用した企業などを視覚化することができる。見落とされやすいが、企業が出願する際に引用される特許にとって、その引用は概して最も重要である。
審査官が他からの出願の拒絶理由として企業の特許を引用している場合は特に、引用解析は(特許の)削減作業において不可欠のプロセスとなる。自社と競合しようとしているものや、すでに市場で侵害製品を有しているのものを明らかにすることができる。
特許から製品への全面的なマッピング構想
特許の分類は概して2つの観点に基づいている。1つは製品/機能のマッピングに基づく特許で、2つ目は技術マッピングに基づくより一般的な特許である。例えば、一般的なBluetooth特許は、ある企業のインベントリにおける事実上すべての製品に対して割り当てることができるだろう。このような場合、技術ベースの分類がより有用であることが多い。企業はマッピングにより、特許に関連する収益を追跡し、報酬支払を管理することが可能となる。
IPM技術は、製品と特許がどこで交差するのか、どの製品がどの特許を有しているのか、あるライセンス契約に特定の特許が含まれているかどうか、などを可視化することできる。これにより企業は、特許の価値と、それが企業にもたらす収益の額を判断することができるようになる。
行動
より賢明で、データに基づくポートフォリオ管理の判断
企業の知財資産の価値に関する戦略的な考察は、知財ポートフォリオの管理について情報に基づき判断することを可能にする。価値を失った資産や、事業の推進に不可欠な資産を特定することは、効率的かつ効果的なポートフォリオ管理に対し非常に重要である。
ポートフォリオの縮小は、データに基づいて行われなければならない。ポートフォリオのあらゆる資産に対して毎回の更新料を支払うことは、著しく高くつく可能性がある。特許と製品のマッピング、パテントスコア、引用解析を活用することにより、企業はほとんどあるいはまったく価値がないことが明らかな資産を削減しつつ、競合他社を阻止し、収益を拡大し、市場に影響を及ぼす資産を更新することができる。ここで明確な視覚性を得ることは、企業が知財予算を最大限に活用することを可能にするとともに、知財チームを社内のコストセンターから、利益センターへと引き上げることにも役立つ。
ライセンス供与と収益化 – 事業における最も価値が高い資産の活用
洞察
特許は製品を保護するだけではない。多大な収益化の機会をももたらす。知財ライセンスの供与と収益化への取り組みは、知財チームを事業にとっての利益センターに転換するためのさらなる方法となる。企業の技術をライセンス供与することは、追加の収益として数百万ドルを生み出す可能性がある。課題は、企業の技術に対して見込みのあるライセンシーを見つけることである。企業が所有する知財に対して収益化のチャンスをどのようにして特定できるのか、いくつかの具体例を挙げて説明していく。
特許強度、引用、拒絶分析の活用
パテントスコアは、同じ技術分野の市場における特許の強度を示すものである。これは、事業に対し更新判断に関する情報をもたらすだけでなく、該当の技術について、ライセンス供与の機が熟しているかどうかを示唆するものにもなる。例えば引用解析により、同種の出願に関して米国特許商標庁(USPTO)から拒絶通知を受けた人物がいることが明らかな場合、ライセンス供与の見込み顧客が存在する可能性を示している。
競合に関する分析と技術市場開発の実施
競合に関する分析と技術市場の開発も、特定の資産または資産セットの価値に対する洞察をもたらしうる。ある企業の技術の周辺で、競合他社が絶えず特許を取得しようと試みており、その特定技術のニッチ分野の動きが活発で力強い場合、この技術は価値の高い特許になることを示している可能性がある。この種の調査と分析は、製品の価格設定や、特許に関連するライセンス供与の機会に関する判断に役立つ。
行動
協調的な行動が伴わなければ、洞察には意味がない。適正なデータとツールにより、事業は将来の収益機会について、より戦略的な判断を行うことができる。これにより特許弁護士は、企業の製品開発と収益化の目的における戦略パートナーとなるのである。
企業知財ポートフォリオの活性化
ポートフォリオを本質的に活性化するということは、企業が所有する知財資産をライセンス化し、それにより収益を促進していく意向を持っていることを意味する。企業は、ライセンス供与の機会を特定するか、あるいは特許を売却することによっても、ポートフォリオを活性化することができる。上記で述べてきたように、ポートフォリオ管理調査により、もはや収益やその他の価値を牽引しない一連の特許を企業が有していることが明らかになれば、企業は処分したいと思っている種類の技術について、購入を希望する他の企業を探すことができる。引用解析を通じて、企業は関心を持っている購入者を特定することができる。さらに、企業は高価値の知財を手放さないようにすることも、適切なポートフォリオ活性化の手順において重要な点である。
訴訟機会の確認
ある企業の技術の周辺で特許を獲得しようとしてUSPTOから拒絶通知を受け取った競合企業を特定することにより、侵害の可能性について相手に警告することが可能となる。特許侵害訴訟は数百万ドルの価値になりうる。サムスン、アップルなどの大規模な多国間特許所有企業を見てみると、この種の研究から得る投資利益は非常に大きい。
合併買収戦略の反復
合併と買収に関する研究と分析は、企業が成長機会のために着手可能なもうひとつの戦略的取り組みである。テクノロジー業界を調査すれば、同種の技術を保護する別の特許の所有企業を明らかにすることができる。それにより、特許を一から作成するのではなく、単に技術を購入するか、または技術導入契約の締結を検討することが可能となる。調査で優れた投資利益率(ROI)が見込まれれば、企業は他企業の買収や、合併を検討することもできる。一方で、目的が企業のポートフォリオの見込み購入者を見つけることであれば、テクノロジー業界を調査することにより、同種の特許の所有者や、興味を持っている事業者を特定できるであろう。
外国への出願 – 企業ポートフォリオの戦略的な 位置づけ
洞察
外国への特許出願の主な目的は、収益源を保護し、競合を阻止することにある。ただし、出願手続きの時間と出費の見通しに応じて、効率と価格妥当性を中心に戦略を検討することになる。世界中を特許で保護することは、単純に現実的ではない。結局のところ、外国出願の計画を立てるには、選択した市場の徹底的な分析、付随コスト、競合他社の位置づけ、特許査定通知の獲得に成功する確率の分析、そして、最も重要なことだが、特許により生じる価値の確保が必要となる。
国際市場分析の実施
企業の主要市場で出願している相手を知ることは不可欠であるが、世界各国で特許を出願している事業体を考察することは、ますますグローバル化していく経済において同じように重要になりつつある。例えば、競合企業がある国で一連の特許を出願している場合、それは今後の技術と事業開発計画に対する警告となりうる。
未開発/飽和状態の市場の特定
外国市場のどの地域がまだ未開発であるか、または飽和状態であるかを特定することは、企業が知財戦略を繰り返し実行する際に必要な、さらなる判断材料である。技術の成長にとって他の国々の市場が大きく開かれている場合もあれば、飽和状態によって新たな参入の余地がほとんど残されていない場合もある。選択肢を絞り込み、より効果的かつ効率的に外国出願の取り組みに注力することにより、予算を節約しつつ、保護範囲を最大化することができる。
行動
国際市場に対する明瞭な視点を持つことにより、企業は外国出願に関してより焦点を絞った判断を行うことができる。
国際出願戦略における判断
特許査定通知の取得に関して、価値が低く、より困難な管轄区域への出願に不必要な時間とコストを費やすことは、リソースの無駄となる。例えば、欧州全域での保護を獲得することはおそらく多くの企業にとって有益ではないだろう。代わりに、企業の主軸産業に対して大きな収益を促進する管轄に申請することを検討するとよい。
競合企業による販売と製造の阻止の申請
関連の各管轄区域における競合企業の知財の位置づけに対して明瞭な視点を確保することは、出願戦略に大きなインパクトをもたらすとともに、特定管轄での申請を開始または継続することが有効かどうかを判断するのに役立つ。個々の管轄で競合他社がそれぞれの製品をどのように展開しているかは、企業の戦略にとって最大の重要事項でもある。将来の権利行使手続きが多数存在し、件数が立て込んでいる対象管轄を競合他社が回避する可能性はあるものの、ある管轄において競合があまりに激しい場合は、成長の余地がないことを示唆していることもある。優れた管轄区域の評価には、安定した特許保護と、十分な成長余地のバランスが必要とされる。
しかし、ある管轄においては、特許が競合製品の販売だけでなく、製造をも妨げることも考慮しなければならない。計算した上で外国への出願を行うことにより、競合企業を強制的に、より高いコストあるいは低い技術生産能力しかない他の場所で製造させるように仕向けることも可能である。従って、低コスト製造の管轄における保護は、販売製品の保護以上に戦略的な価値を有する場合がある。
まとめ
知財管理は、多数の異なる調査手段、出願手続きプロセス、長期に及ぶ資産管理手順を伴う、非常に複雑で詳細にわたる作業である。様々なワークフローや(社内外両方の)データとともに、これら5つの大きな考察を完全に理解することは、最も賢明な組織にとってさえ難しい試みである。優秀な経営幹部たちはこれらの考察を詳細に理解し、より優れた判断を下すために、適切なフォーマット、正しいタイミングで適切なデータとツールを自社の知財チームに確実に提供するようにしている。

カレン・テイラー(Karen Taylor)
パートナー アジア太平洋地域担当 ジェネラルマネージャー
カレン・テイラーは、アナクアでアジア太平洋地域担当ジェネラルマネージャーを務めている。この役職において、アジア太平洋地域全域のすべての事業開発を統括し、アナクアの成長する顧客アカウント・ポートフォリオを強化している。香港を拠点とするテイラー氏は、この地域の人事管理を担当し、アジア太平洋地域の販売・マーケティング活動と戦略的パートナーシップを推進している。ヨーロッパとアジアにおけるオンライン情報およびデータ業界で15年以上に及ぶ経験を有する。アナクアに入社する前は、レクシスネクシスのエグゼクティブディレクター、トムソン・ロイター のディレクターを務めた。
アナクア (Anaqua)
W22F Shibuya Mark City West
1-12-1 Dogenzaka, Shibuya-ku
Tokyo ‒ 150-0043
Japan
電話 +81 (0)3 4360 5530
ホームページ www.anaqua.com