アジアの特許ブローカーの活動ペースが加速

米国の公開市場で特許を売却することが以前より難しく、利益を生み出しにくくなっている。しかし、アジアでは国内ブローカーがかつてないほど多忙になっている。

し前まで、アジア太平洋地域は特許取引の後進地域とみなされていた。日本や韓国、台湾の企業は、事業運営の自由を確保するために特許を収集し、クロスライセンス交渉のために資産を蓄積することに注力しているようだった。様々な理由から、特許売買はそれらの企業にとって知財戦略の顕著な特性にはならず、第三者への実施許諾から利益を上げるという発想は、たとえあったしても行動計画上あまり重視されていなかった。

一方、中国では大半の企業が特許出願さえ気にかけていなかった。その商業的目的が国境の外に広がることはめったになかったのだ。1984年まで法令集に特許法がなかったこの国では、出願は不要なコストとみなされていた。したがって、大半の企業にとって特許売買がほとんど視野に入っていないのは当然のことだった。それでも実現した少数の特許取引のいずれもが、売手と買手の相対売買ではなく、たいていは米国、場合によっては欧州のブローカーが手掛けたものだった。

時代は一変した。今やアジアには、揺籃期にある自前の特許仲介市場が存在し、世界的な特許取引の減少にもかかわらず、2016年は活況が続いた。

新たな趨勢

2016年末に刊行されたIAM第81号には、カリフォルニア州の特許助言法律事務所、ROLグループのケント・リチャードソン、エリック・オリバーおよびマイケル・コスタによって作成された過去1年の特許仲介市場に関する年次評価が掲載されていた。その結論は、2016年度の特許資産市場は依然として「堅調で成長見込みがある」ものの最低水準を記録したというものだった。市場規模全体は1億6,500万ドルと推定され、前年度に比べ3分の1ほど縮小した。米国最高裁判所のアリス判決が特定の種類のソフト関連特許、特にフィンテックのイノベーションを対象とする特許の需要に引き続き壊滅的な影響を与える中、価格は過去最低水準に達した。

こうした状況は知財業界の者にとってほぼ予想どおりの結果であった。しかしながら、2017年には、特にアジアで興味深い新たな趨勢が現れていると思われる。

一つには、米国最高裁判所の判例や当事者系レビュー制度が特許不実施主体(NPE)に明白な影響を与えている。NPEは総じて活動を縮小しており、一部には廃業を視野に入れる向きもある。こうした中、ROLグループが年次分析結果の編集に着手してから初めて、仲介特許パッケージの購入数で事業会社がNPEを上回った。昨年まで仲介パッケージの購入で首位の座にあったインテレクチュアル・ベンチャーズが、防衛的アグリゲーターで特許リスクマネジメント会社のRPXにその地位を奪われた。

同様に、アジアの事業会社も、特に買手として次第に積極的に仲介市場に参加しているように思われる。ROLはその分析の結果、2016年度に仲介業者を通じて反復して特許を売却した企業の中に日本のNECとパナソニックを挙げている。一方、中国のファーウェイや小米、日本の楽天や台湾のTSMCはそれぞれ同年度中、2件以上の仲介パッケージを購入した。

アジアの二次市場の流動性が次第に上昇しつつあることを示す別の兆候はブローカーの活動に見られる。リチャードソン、オリバーおよびコスタは毎年、分析対象の12カ月間に一定数以上のパッケージの売却を提示したことが判明した全ブローカーのリストを記載している(過去の3つの版では、5件以上のパッケージが基準値として設定された)。これは、過去1年間に最も活発に活動したブローカーを示す指標となる。

2016年度には、5件以上のパッケージの売却を提示したブローカーが29社あり、そのうち15社が10件以上を提示した。それらの29社のうち本社がアジアにあるのは次の4社だった。これは、ROLグループが2012年にこの調査を開始して以来、年次リストに入ったアジアのブローカー数として最も多い。

  • IPパイオニア・グループ(ソウル、韓国)
  • MiiCs&パートナーズ(台北、台湾)
  • P.J. Parker株式会社(東京、日本)
  • 睿智創業(上海、中国)

2015年度リストにも入った睿智創業を除けば、それらの提示者のいずれの場合も、5件以上のパッケージの売却を提示したことが判明したのはこれが初めてである(過去にリスト入りした他のアジアのブローカーは、2013年度リストのトランスパシフィックIPと2015年度のインテレクチュアル・プロパティ・トレードである。両社もシンガポールに本社がある)。

言うまでもなく、これらの数字はアジアの二次市場についてわずかのことしか語っていない。ROLグループのチーム自身が明確に述べているように、基礎となったデータセットは当該チームが追跡できたパッケージに限定されている。ブローカーによって提供されたパッケージ全体に相当するわけではなく、また第三者の仲介業者の関与なしに行われる、多分はるかに膨大な数の相対取引も含んでいない。

ソウルを拠点とするブローカー、IPパイオニア・グループのマネジング・ディレクター、チャン・ホー・キム氏も、同社やアジアの少数の他ブローカーの仕事量が増えているのは、市場のより広い範囲での縮小とも関係があるかもしれないと指摘してこう言う。「他のブローカーが提示するパッケージの規模を推定するのは難しい。しかし、低調な特許市場がアジアのブローカーの取引フロー全般に影響を与えており、中には、少なくとも部分的には他の知財コンサルティング分野に事業を移したブローカーもいると私は見ている」。その結果、IPパイオニア・グループのようにブローカー業務を続ける企業の仕事が増えている可能性がある、と同氏は付け加える。

それにもかかわらず、キム氏や同地域の他のブローカーは、アジア企業は特許購入を戦略上の選択肢として以前よりはるかに重視するようになっていると答える。「依然としてアジア市場の取得規模は評価できるほど拡大しているわけではないため、アジア企業はまだ多数の特許を購入しているとは言えない」と同氏は認める。「しかし、実際に購入する場合は、ほとんどが既存の特許ポートフォリオを強化して、競合や防衛の態勢あるいは顧客の免責の準備を整えることを目的としている。総じて、それらの企業は依然として私掠行為や訴訟目的の取引に対して非常に保守的な見方を取っている」

IAM/ROLグループの市場分析(2012年~現在まで)で取り上げられたアジア拠点の特許ブローカー

中国の二番手グループ

ロジャー・トゥー氏は、台北を拠点とするホンハイ(鴻海)グループの系列企業、MiiCs&パートナーズのバイス・プレジデントを務める。MiiCsは、他の様々な台湾企業や中国企業と協力して、それらの企業の特許売買を支援している。昨年、同社は、大々的に報じられた38億ドル規模の取引によってホンハイが日本の巨大企業、シャープを買収した後、その特許を収益化するという途方もない任務も担った。

トゥー氏によれば、それらの市場で現在売買されているパッケージの大部分は、家電製品関連の通信や半導体などの技術に関係している。同氏はこう説明する。「我々は特許の収益化を専門とし、特許売買の仲介に集中的に取り組んでいる。買手としても売手としても、特許売買の相談に関心を持つアジアのクライアントがますます増えている。その主な理由は、事業運営の拡大と知財資産の収益化の必要性にある」。急成長するアジア企業にとって、国内市場を超えて事業基盤を拡大した結果、知財紛争に巻き込まれる可能性が増大しているため、特許保護が必須となっている。適合する特許がすでに存在し、特許権者も売却の意思がある場合、出願によって保護範囲に対処するより、それを購入する方がはるかに迅速で費用効率の高いことがある。

「かつて買手の大半が北米企業だったのが、アジア企業が大部分を占めるようになっている」と、東京を拠点とするP.J. Parker株式会社の設立者で社長のフィリップ・パーカー氏は言う。熱心な買手の多くは中国企業である。同氏によれば、「我々が知るかぎり、買手は依然として多分10社前後の中国企業に比較的集中しており、譲渡のデータベースもこれと一致していると思う。当然、それらのプレーヤー以外からもより広範な関心は集まっている。しかし、多くの企業は関心を表明し、ポートフォリオを調べても、現段階では購入を確約するまでの準備ができていない。必要となる多額の予算の正当性を実際に上級経営者に納得させるには、目的のポートフォリオに対する十分な自信がなければならない。それには、そのポートフォリオの戦略的意義を理解するための、ある程度の技術とビジネスに関する専門知識が要求される」。中国のハイテク企業のほとんどがまだその形成途上にある。しかし、中国の多くがそうであるように、変化のペースは速く、企業の特許チームの洗練度や使用される戦略は急速に進化している。

上海を拠点とする睿智創業の創設者でマネジング・パートナーのグスタボ・アレー氏は、それらの新進気鋭の企業に対する特許の売却には高い将来性があることに同意する。そして、こう主張する。「中国の買手は(それを言うなら売手の方も)、大部分がファーウェイ、ZTE、小米といったよく知られた国際企業である。彼らは使用の証拠やクレームチャート、被引用を求めており、資産の残存期間が長いことを望んでいる。しかし同時に、アジア、特に中国では有名企業でも、世界にそれほど進出していない二番手の買手が新たに現れつつある」

これらの買手候補は、通信関連特許への関心という点では大手企業の買手と共通している。しかし、アレー氏によれば、ディスプレイ技術、発光ダイオード、バイオメトリクス、無人機、コンテンツのストリーミング、およびインターネットのセキュリティと認証といった比較的特殊な分野に対する関心も高まっている。

購入から売却へ

中国では購入活動が白熱化しているのに対し、韓国は反対の方向へ進んでいるように思われる。キム氏の説明によれば、IPパイオニア・グループの取引のうち、韓国の当事者が絡むものはごくわずかにとどまり、同社チームが扱うパッケージの約80%は日本、台湾、米国のベンダーが売却したものである。「この理由は、ほとんどの韓国企業が特許を売買する内部プログラムを導入していないことにある。それでも、保有する米国特許を世界の市場で売却する依頼を韓国企業から受けることが増えている。だから、今後さらに多くの売却の機会が韓国企業から生まれると思う。購入面について見ると、サムソンが依然として韓国最大の買手なのに対し、LGやハイニックス、インテレクチュアル・ディスカバリーの活動は低下している」

影響を与えている別の要素は、イノベーション主導型経済を創出しようとする韓国政府の取り組みである。この取り組みには、知財資産に対する価値重視の評価を促すことを目指す多額の投資、2010年における上記の政府系特許ファンド、インテレクチュアル・ディスカバリーの設立、および国内ベンチャーキャピタル産業に対する支援などが含まれる。

図1. 東アジアの業界における特許の洗練性

出所:P.J. Parker株式会社

注:図形的理解のみを目的としており、正確な縮尺ではない。

しかしながら、これらの官製イニシアティブを別にすれば、韓国経済は引き続き財閥、つまり、サムソンやLG、ヒュンダイ(現代)といった(通常は)家族経営の巨大コングロマリットによって動かされている。キム氏はこう説明する。「各市場の垂直的系列の中には巨大コングロマリットに納入するサプライヤーが多数存在するが、それらの企業は主としてはるかに巨大な顧客企業に製品を販売しており、特許の問題に直面するのはそれらの顧客企業であるため、あまり特許について懸念しないですむ。こうした状況の中で、企業は少数の例外を除き、さらなる特許の購入に消極的だった。むしろ、品質面で競争力のある製品をなるべく迅速に開発・供給しようとしてきた」。しかしながら、韓国でもそれらの巨大企業への依存度は低下傾向にあり、上級管理職は、中国や欧州など、国外の地域でより多くの製品を売ることを目指すようになっている。「だから、韓国企業の経営幹部の考え方がゆっくりとではあるが、大きく変化しつつある。それに伴い、今後特許の購入活動が活発化するだろう」と同氏は言う。

表1.東アジアと米国の二次特許市場のヒートマップ、2016年

 

売却に対する企業の 積極性

購入に対する企業の 積極性

国内当事者間の 実施許諾/訴訟

国内当事者と外国当事者間の実施許諾/訴訟

中国

ウォーム

ウォームとホットの 中間

ウォーム

コールドとウォームの 中間

日本

ホット

ウォーム

コールド

ウォーム

韓国

ウォームとホットの中間

ウォーム

コールド

ホット

台湾

ウォーム

ウォーム

ホット

ウォーム

米国

ホット

ウォーム

ホット

ホット

出所:P.J. Parker株式会社

注:図形的理解のみを目的としており、正確な縮尺ではない。

再編と撤退

朝鮮海峡を挟んだ日本でも、ブローカーの活動が活発化しているが、どちらかと言えば売却面に偏っている。ROLグループのパーカー氏にとって、調査結果は過去1年における自身の直接経験と一致する。同氏の指摘によれば、「当社が扱うパッケージは増えている。これは、日本や韓国、台湾といった先進国の企業が特許売却に積極的になる一方、アジアの新興国の企業が先進国市場への参入に備えて購入に関心を抱くようになっているためと考えられる」。

このように日本で締結される取引が増加している背景にある要因は、他のアジア諸国や世界全体とは幾分異なる。一つは、企業が、急速に変化し、拡大するハイテクセクターにおける適合性を維持するために事業再編や合理化に向かう傾向が続いていることである。「日本企業は、事業再編や特定の事業活動からの撤退を進める中で、特許売却の姿勢を強めることが多い」とパーカー氏は説明する。

多くの場合、そうした特許売却は、事業部門全体の分離のほか、より有望な新市場への参入を目的とする合併や買収に伴うものである。こうした大きな変革と並んで、事業運営の自由を確保したり、純利益を増大させるための直接的な特許売買も行われている。

日本企業が以前より頻繁に二次市場に参加するようになった別の要因は、主として米国における法律上、行政上および判例上の展開を受けて、NPEセクターの活動がわずか数年の間に著しく低調になったことである。

静かなNPE

北米や欧州ではNPEの関心が低下したため特許売却が困難になったが、日本では企業の特許購入意欲を高める結果になったと思われる。パーカー氏は次のように主張する。「この国ではこれまで非常に保守的であったが、NPEのビジネスモデルの凋落を受けてそれが緩和された。NPEは日本企業にとって脅威とみなされていた。日本の特許権者の間には、海外で特許を売却するとNPEの手に渡る可能性があり、最終的に業界全体にとって厄介なことになりかねない、という考え方があった」。その脅威が低下したため、現在日本では特許売却が無害な活動とみなされることが増えている。

最近まで、アジアで活動する北米の買手は大半がNPEであり、NPEが同地域の大規模な取引の大部分を動かしていた。しかし、アジアの買手はNPEではなく、IP Bridgeやインテレクチュアル・ディスカバリーなど少数の例外を除き、大半が事業会社である。パーカー氏はこう指摘する。「我々が手掛ける取引はすべて実施主体間のものである。アジアでは、事業会社の知財上の地位を強化しようとする動きが見られる。それは、特定のクロスライセンスや訴訟、あるいは特定の市場や技術分野に参入しようとする、より一般的な目的によって動かされている。デバイスメーカーは自社製品に関連する特許すべてを支配しようとしても不可能であり、武器のバランスを図るしかない」

同様に、NPEの活動が二次市場から消失した結果、通常NPEが選好するとみなされる特許への関心が低下した。パーカー氏の説明によれば、「北米の買手はしばしばソフトウェア関連技術に関心を持っているが、それに比べアジアの買手は総じてハードウェア関連や材質科学関連技術に対する関心が高い。アリス判決後、ソフトウェア関連特許の価格が相対的に低下したことを踏まえると、アジアでは買手の関心が北米よりも良好に維持されていると思われる」

アジアのハイテク業界は、(一般的な意味で)ソフトウェア開発よりハードウェア製造に集中してきたという特性を持つ。したがって、アジアの買手がハイテク製品のそうした有形的側面を対象とする特許に対してより強い関心を抱いていることは当然である、とキム氏は言う。「このことは、海外顧客に対する自国製品の販売や輸出に注力してきたアジア諸国の経済構造に原因があると考えられる。海外顧客に対する最終製品にはカスタマイズされたソリューションや関連するソフトウェアが組み込まれていることがある。しかし、個々のバリューチェーンで支配的プレーヤーになるアジア企業が増えており、今後数年内にそうした傾向が大きく変化することが予想される」

図2.2012~2015年におけるアジアの主要企業による米国特許の出願状況

出所:IAM、MDBキャピタル・グループ

*ZTEについては2012~2013年のデータが利用不能

米国特許を超えて

それにもかかわらず、アジアの事業会社からは依然として、米国特許は総じて他国で発行された権利と比べて最も高い戦略的価値を有していると見られている、とキム氏は主張する。そしてこう説明する。「今のところ、米国特許が依然としてほぼすべての特許取引案件を動機付ける主要資産になっている。他の対象地域として中国や欧州連合を含むパッケージの形を取った米国資産はより高い価値を持ち得る。しかし、多くの人が予想するように、今後数年、事業会社やNPEは特許戦略において中国のみの資産を求めることが増えるだろう」

パーカー氏はこれに同意して、米国特許はNPEやライセンス収入を求める事業会社にとって輝きの一部を失ったかもしれないが、アジアの標準的な購入企業にとっては今もなお重要であると指摘する。「明らかにNPEにとって米国特許の重要性は低下した。しかし、米国特許は対象となる市場の点で最重要であると私は今も強く確信している」

欧州特許、特にドイツの特許は訴訟上の価値に関して注目度が高まっているものの、全体的に見れば、米国特許の方が依然として勝っている。同氏は続けてこう述べる。「ドイツの特許が提訴の手段として使用されるかもしれない。しかし、和解やライセンスの交渉ということになると、ロイヤルティの基準になるのは市場規模である。米国特許から得られるロイヤルティの基準の方がはるかに高いのだ」

パーカー氏は、同じ経験則が中国特許にも適用できるかどうかについては確信を持てずにいる。中国特許も巨大な市場を対象としているが、同国は下される損害賠償額が依然として低い上、法の支配に今もなお疑問符が付く。同氏はこう主張する。「中国企業は承知の通り、中国を対象とするパッケージの購入に強い関心を寄せている。それ以外にも、中産階級をターゲットとする消費家電製品であるスマートフォンやテレビのような分野では、市場浸透率が米国と同様高く、今やほぼ同じ水準に達しているだろう」

しばらく前まで、中国で付与される特許に対する典型的な見方は、ほとんどくず同然というものだった。法的管轄区域としては、同国の法執行の実績は問題にならないほど乏しい上、保護主義的な傾向のために外国の訴訟当事者の勝ち目は常に薄いと見られていた。しかしながら、状況は大きく変わった。トゥー氏によれば、「最も関心を集めている地域は米国と中国の二つである。ケースバイケースだが、買手は、防衛目的、訴訟、リスク管理あるいは他の様々な理由により、両地域の特許を欲しがるだろう」

過去1年間に、中国の特許収益化の状況に関して幾つかの画期的な出来事が生じた。ファーウェイが、保有ポートフォリオからの利益創出に向けた、より積極的なアプローチを明確に採用する一方、カナダのウィーランが標準必須特許の訴訟を開始したのである。こうした訴訟は、過去数年内であればNPEとしては極めて異例な措置とみなされたはずである。アレー氏によれば、現在では中国特許がパッケージの売却可能性にとって必須となることがしばしば生じている。「中国の資産が含まれるかどうかでまさに天と地ほどの違いがある。私は、中国特許が欠けているという事実さえなければ、恐らく非常に簡単に売れたはずのポートフォリオを検討したことがある。中でも最悪なのは、かつては中国特許を所有していたのに、それが放棄されたと分かった時である」

日本と韓国の資産に対しては、買手の関心は明らかにそれほど高くない。両国とも侵害訴訟から得られる損害賠償額は依然として低い。パーカー氏の主張によれば、この一因は両国で長年続けられている慎重な経済政策にある。また同氏はこう指摘する。「日本は中国や米国に匹敵する市場規模がない上、同国で提訴する外国人はほとんどいない。このどちらも評価を下げる要因となる。別の要因は日本特許の評価の難しさである。評価には、言語能力と国内法の知識を有する日本の弁理士が必要になる」

一生の仕事?

アジア太平洋地域で特許取引の活動が活発化するにつれ、同地域のブローカーも同様に忙しくなっている。トゥー氏はこう説明する。「我々はこの地域の潜在的クライアントに近い場所にいるという理由で、北米や欧州のブローカーに比べ幾分有利である。定期的に会合を開いたり、訪問したりできるため、結び付きが強まる」

パーカー氏も、アジアに拠点を置くことが明確な利点をもたらすという点に同意する。「立地的に近いことにより、買手や売手とより密接な関係が築きやすくなる。言うまでもなくアジアは広大であり、アジア諸国の間には言語やビジネス文化に大きな相違がある。日本を拠点とする当社のような企業は、米国企業と全く同様に中国での関係構築に熱心に取り組まなければならない」

アジア諸国で特許を売却しようとする者にとって、文化と言語は実際、重要な問題になる。キム氏はこう説明する。「アジアの企業文化は欧米とは全く異なる。そのため、取引過程全体を通じてコミュニケーションに対する異なるアプローチを要求される」

アジアで特許を仲介するためにそこに本拠地を置く必要はないものの、恒久的拠点を設けることにより、アジア太平洋地域で出遭う可能性のあるハードルの多くをずっと容易に克服することができる。アレー氏はこう指摘する。「拠点はこの地域へのコミットメントを示す。またリアルタイムのコミュニケーションが可能になる。ほぼ同じ時間帯の中で電話を通じて話をし、直接面談し、WeChatでつながることができる」。わずかな短距離飛行で(あるいは、同じ都市内ならタクシーや地下鉄で)見込み顧客に会える場所にいるということは、大きな差を生み出す。取引先とじかに話せる関係を形成する能力はアジアでは極めて重要である。同地域のブローカーは、実際にその場にいて同じ言語を話すことによって、世界の他の場所にいる他のブローカーより明らかに有利な立場に立っている。特許資産に対するアジアの企業や投資家の関心が高まる状況にあって、競争優位が結果を左右するほど重要になる可能性がある。

行動計画

 特許取引の大半とまでは言わないとしても、多数の取引が第三者の仲介業者の関与なしに売手と買手間の直接的な相対取引で完了されている。これによってコスト削減が可能になるとしても、ブローカーのサービスを利用することでもたらされる利点は依然として多く、とりわけ、二次市場への参入が比較的新しいアジア企業にとっては特に利点が大きい。そうした利点は次の通り。

  • 多くの事業会社は取引の交渉や締結に必要な専門知識を持たないのに対し、ブローカーはそうした事項を専門に取り扱っており、最高のブローカーともなると、長年にわたる豊富な実績を有している。
  • 社内の知財チームの多くは、自社の中核的事業のために事業運営の自由を確保することにリソースを集中させてきた。特許売買は概して2番目か3番目の関心事であり、このことはブローカーを雇う強力な理由となる。
  • ブローカーは実際上、特許収益化プロセスの多くを外部委託する方法を提案しており、これにより、それらの活動に専念する部門を持たない事業会社にとって時間と労力の節約になる。
  • 優秀なブローカーは概して、権利保有者よりはるかに多くの見込み購入者や売却に利用可能なパッケージを管理しているため、取引締結の可能性が高くなる。
  • 一定期間アジアに拠点を置いているブローカーは、リソースや言語、ビジネス文化の点で現地の状況を乗り切る態勢をより十分に整えている可能性がある。
ジャック・エリス (Jack Ellis) はニュージーランド、ハミルトンを拠点とするフリーランス・ジャーナリストで、IAMの寄稿編集者。

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