世界の動向
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IAMその他の情報源による知財ビジネスに関する世界の最新ニュース
米国
1月 - ドルビーが支援するパテントプール運営会社、バイア・ライセンシングはそのAACパテントプールの新たなロイヤルティ率の構造を公表した。これにより、ライセンシーが発展途上市場でデバイスを販売した場合は割引ロイヤルティでの支払いが可能となる。この新たな料率によれば、販売台数5,000万台までは35~36%の割引きが適用され、それを超えると1台当たりの値引率は段階的に30%まで低下することになる。米国、カナダ、欧州の大半、オーストラレーシア、日本、韓国および台湾を含む先進国市場での売上に適用される標準ロイヤルティに変更はない。
米国
2月 - マイクロソフトは、Azure(アジュール)クラウドサービスのユーザーを対象とする知財関連の特典パッケージを公表した。その内容は、補償ポリシーの対象を拡大し、Azureサービスを促進するオープンソース技術の提供者が含まれるようにする、というものである。また、Azureの顧客が侵害訴訟から自身を防御する一助となるよう1万件の特許を提供すると同時に、マイクロソフトがNPEに特許を売却した場合、Azure顧客に対してNPEが訴訟を起こさないことを保証している。「マイクロソフトAzure知財特典」プログラムと呼ばれるこのイニシアティブは、ソフトウェアの巨大企業が、アマゾンやグーグルといったクラウドの主要な競争相手に対して優位に立つために、大量の知財資源を活用する用意が十分にあることを証明している。マイクロソフトでは、知財部門責任者のエリック・アンダーセン氏がコーポレート・バイス・プレジデントに昇格した。
米国
2月 - 防衛的パテント・アグリゲーター、RPXの共同設立者でCEOのジョン・アムスター氏が、会社の非公開化に対する意向に同意を得られなかったことから退職した。RPXの株価は上場時の19ドルから大幅に下落していた。その背景には、eディスカバリー企業のインベンタスを2億3,200万ドルで買収したときに市場が反応しなかったこと、および米国の特許主張市場が一段と厳しさを増すなか、NPEの脅威が外見上弱まったことがある。アムスター氏の退職後、RPXは多数のプライベートエクイティ投資家から会社の非公開化の申込みを受けているが、PXはまだ正式回答を行っていない。
米国
2月 - インテレクチュアル・ベンチャーズ(IV)は、元コダックの約4,000件の特許から成るポートフォリオをドミニオン・ハーバーに売却した。これは、巨大知財企業であるIVが積極的に保有資産を削減しようと努めていることを改めて示したものである。この取引はIVにとって、過去最大規模の特許の売却となる。ドミニオンとの取引は、約50件の資産を売却した2016年11月の取引を含め、今回で4回目である。IVはまた、巨大なポートフォリオを縮小するため、ICAPパテント・ブローカレッジの元CEOのディーン・ベッカー氏率いる収益化企業、エクイタブルIPおよび華星光電にも特許を売却している。
米国
2月 - エリクソンの元知財責任者、カシム・アルファラヒ氏が指揮する、モノのインターネット(IoT)向けライセンス・プラットフォーム、アヴァンチは、自社、および新たにライセンスを供与する企業に支援サービスを提供する新企業、マルコーニ・グループを設立した。アヴァンチの包括的な再編の一環として、マルコーニおよびNPEのパンオプティスはいずれも、インセプション・ホールディングスという名称の新たな持株会社の傘下に入った。インセプションの株主は個人投資家や株式ファンドで構成されている。マルコーニは、アヴァンチ、パンオプティス、およびアルファラヒ氏やそのチームが設立する新たなライセンス・プラットフォームのために、ファイナンス、人事、法務などのバックオフィス業務すべてを取り扱う。アルファラヒ氏は、アヴァンチのCEOおよびこの新たな支援企業の責任者を兼任する。
米国
2月 - マサチューセッツ工科大学(MIT)とハーバード大学が共同で運営する非営利研究機関であるブロード研究所は、近年最も注目された特許紛争の1つで勝利を収めた。特許審判部(PTAB)は、CRISPRと呼ばれる革命的なゲノム編集技術の特許権が争われた抵触審査において、ブロード研究所を支持した。審理では、カリフォルニア大学、ウィーン大学およびエマニュエル・シャルパンティエ博士が異議を申し立てた12件の特許が取り扱われた。しかし、実務筋によれば、ゲノム編集は急速に進化しているライセンス市場であり、CRISPRをめぐりさらに多くの紛争が発生する可能性があるとのことである。
米国
2月 - グーグルの親会社であるアルファベット傘下の自動運転車開発企業ウェイモは、企業秘密を盗用し特許を侵害したとしてウーバーおよびその子会社のオットモットとオットー・トラッキングを提訴した。この事案の核心は、ウェイモの元経営幹部が、急速に開発が進むこの技術に関連する膨大な企業秘密や他の知財を盗んだとする告発である。その経営幹部は2016年初めにウェイモを退職し、自身の自動運転車開発企業オットーを設立したが、同社は同年8月に6億ドル以上でウーバーに買収された。グーグルは2010年に自動運転技術に注力することを発表して以後、このセクターのリーダーとなっている。これに対し、ウーバーは急速かつ大幅な進歩を目指しており、ウェイモの申立てによれば、自身のポジションを強化するために知財の盗用という手段に訴えたとされている。
欧州連合
2月 - イタリアは統一裁判所(UPC)協定を批准した12番目の国となった。欧州理事会は2月10日にこの決定を正式に通知された。したがって、残るドイツと英国が批准すれば、UPCが発足することになる。消息筋によれば、状況から判断して、2017年内のいずれかの時点でその実現が見込まれているという。そうなれば、G8中4カ国を含む、人口3億人以上の市場での単一の特許権の取得・行使が可能となる。
欧州
欧州特許庁(EPO)は、2016年に96,000件の特許を付与したと発表した。この件数は2015年を40%上回り、過去最高を更新した。付与件数の大幅増は審査官全体の生産性が一段と向上したことを示している。また、EPOへの特許出願数も6.2%増の296,000件以上と、前例のない水準に達した。米国からの出願が全体の25%を占めている。中国からの出願件数は24%以上増加し、韓国からの出願は6.5%増となった。2016年に米国、日本、中国および韓国を合わせた出願はEPO出願全体の47%を占めた。
インド
11月 - ドルビーは、中国の電子機器・スマートフォン製造会社のオッポ(欧珀)と維沃が特許技術の使用について適切なロイヤルティを支払わなかったとして、両社をデリー高等裁判所に提訴した。同裁判所は命令により暫定的な支払いの仕組みを定めた。その条件に基づき、被告は被疑デバイスを引き続き販売することはできるが、販売台数に34ルピーを乗じた金額を毎月、裁判所管理下の供託所に支払わなければならない。同時に、「対象技術を使用したデバイスの製造、販売および輸入に関する明細」も毎月ドルビーに提供するものとされている。この間、ドルビーと被告はFRAND条件のロイヤルティ率について交渉・合意することを求められている。
インド
11月 - メディアの報道によれば、インド特許庁は458名の特許審査官の新規採用を完了した。インドの特許審査官数は、約200名であった2012-2013会計年度に比べて3倍となった。当局は、平均審査処理期間を2018年までに18カ月に短縮するという野心的な目標の達成を目指している。近年、審査待ちの未処理出願数は約25万件まで膨れ上がっていた。
中国
1月 - アップルはクアルコムを相手取った2つの別個の訴状を北京知財裁判所に提出した。1つは10億元(1億4,500万ドル)相当の中国独占禁止法違反の申立て、もう1つは、当該チップメーカーのライセンス実務を「不公平かつ不当」なものとする異議申立てである。この新たな動きは、アップルが米国で同様の訴訟を提起した直後に起こされたものである。クアルコムはこの訴訟について、アップルが自社の使用する技術に対する支払いを減らそうとする無益な努力であると一蹴した。
中国
3月 - 中国国家知識産権局(SIPO)は、ソフトウェア関連発明に関する新たな審査ガイドラインが4月から発効すると発表した。この改訂ガイドラインでは、「コンピュータプログラムそれ自体」と「コンピュータプログラム関連発明」が区別され、後者には特許適格性があるとされている。報道によれば、新規則の下では「コンピュータプログラム製品」、「機械可読媒体」といったクレームが特許適格性を認められるようになる。弁護士によれば今回の発表は中国におけるソフトウェア特許の保護強化を示すものだという。またこの新基準により、ビジネス方法特許のほか、特定の生命科学特許の出願における実験データの出願後の提出に対する制限が緩和されるものと思われる。
中国
11月 - カナダのPIPCO(公開知財企業)ウィーランの子会社、ワイヤレス・フューチャー・テクノロジーズ・インクは、ソニーに対する特許侵害訴訟を南京中級人民法院に提起した。同社は以前にも、ドイツで9月に同じ被告に対して同じ訴訟を提起している。また、インターデジタルとクアルコムに対する規制当局の調査を発端としてライセンス環境が大きく変化して以来、中国の外国NPE(特許不実施主体)によって提起された最初のSEP(標準必須特許)訴訟ともなっている。「通信ネットワークシステムにおける制御盤」を対象とするこの特許は、もともとノキア・シーメンス・ネットワークスOYに譲渡されたものである。ワイヤレス・フューチャー・テクノロジーズは差止命令、800万人民元(120万ドル)の損害賠償および弁護士費用を裁判所に求めた。
日本
2月 - ソフトバンクは、フォートレス・インベストメント・グループ(FIG)を30億ドルで買収するニュースで再び市場を驚かせた。この取引により、エラン・ザー氏率いるFIGのIPファイナンス・グループはこの日本企業の傘下に入る。フォートレスのチームは企業の特許ポートフォリオを評価し、その特許資産を担保に融資している。これは、債務不履行時にそうした資産を売却などにより換金する同チームの能力を基礎とするモデルである。とりわけフォートレスが12月にインベンタジーから740件の特許で構成されるポートフォリオを支配下に置いたことを発表した後は、同社がより直接的に収益化の活動を行うようになるのではないかという見られていた。
日本
11月 - 日本の政府系特許ファンドを運用するIP Bridgeは、九州大学との間で創薬に関する取引を締結した。両者は、新たな薬物送達システムの開発を目指して、「シリカ多孔体から成るマイクロカプセル技術」についてのR&Dを共同で実施する。この発表の1カ月前、IP Bridgeは、マレーシア・デジタルエコノミー公社と協定を結んだ。これは知財創造に関して協力し、マレーシアのハイテク企業が「技術革新の実現に向けて日本の巨大な研究開発分野を活用すること、および日本市場に参入すること」の実現を目指すものである。
韓国
12月 - 韓国科学技術院(KAIST)の関連機関は、米国テキサス州東部地区連邦地裁に訴訟を提起した。この訴訟では、米国の半導体企業グローバルファウンドリーズとクアルコムが韓国の巨大企業サムスンと共に、チップ製造技術に関連する特許を侵害していると主張している。この製造技術はソウル大学校のイ・ジョンホ教授が発明し、KAISTと共同で開発したものとされている。訴状によれば、サムスンは、2000年代にイ教授を何度も同社の施設に招き、その際に教授が技術開発のロードマップを同社従業員と共有した発明をその後不正に使用した、とKAISTは申し立てている。