知財最高責任者がPTABについて知っておくべきこと

米国特許審判部は定着しており、今後知財最高責任者が行うあらゆる決断に影響することを、120件を超える当事者系レビューやビジネス方法特許レビューを担当した元特許審判官が解説する。

2012年9月に特許審判部(PTAB)が当事者系レビューを開始して以来、特許に異議を申し立てる者たちがPTABに押し寄せている。PTABの特許審判制度の運用が始まってからまだ今年で4年目というのに、この制度は既に米国の特許制度を変貌させた。異議申立人らは、侵害や救済といった他のあらゆる特許の問題と離れた形でこの制度を利用し、特許の有効性に異議を唱える。申請数は年々増加して4,000件を超えた(図1)が、新規申請数は今では1ヶ月当たり130件から150件で横ばいとなっているようである(図2)。件数は全ての技術分野で増えており、コンピューター/エレクトロニクスが他を圧倒しているものの、最近ではバイオ医薬品が勢いを増している(図3)。

図1.年度別の当事者系レビュー申請数

PTABの特許審判は2段階で進められる。予備段階は最長6ヶ月かかり、その間にPTABは異議申立人の主張の予備的な評価を行う。その後、最長1年間続く審理段階に入る。

手続は、審判対象のクレームの特許性に関する決定を述べた最終決定書が出されて終結する。

異議申立人は、特許の全部または一部の取消を求める請願書をPTABに提出して手続を開始する。異議申立人は、勝訴するには証拠の優越によって非特許性を証明しなければならないが、これは、従来の民事訴訟において無効性を証明するために必要とされる「明確かつ説得力のある」立証基準ほど厳格ではない。特許権者は、自身の特許を防御するため全面的に訴訟に参加 する。

図2.月別の当事者系レビュー申請数

図3.技術分野別の当事者系レビュー申請数

PTABでは次のような複数タイプの特許審判が可能である:

  • 当事者系レビュー
  • ビジネス方法特許レビュー
  • 付与後レビュー
  • 冒認手続

図4.タイプ別申請累積数

当事者系レビューは、PTABに提出される全ケースの90%以上を占めて他を圧倒しており、2位のビジネス方法特許レビューを大差で引き離している(図4)。本稿では当事者系レビューを中心に論じるが、論点のほとんどは他のタイプの審判にも同様に当てはまる。

異議申立人は、先行技術に基づいて特許の有効性を攻撃するために当事者系レビューを利用する。当事者系レビューでは、開示の不十分性といったその他の理由は認められない。ビジネス方法特許レビューは、その対象が金融商品やサービスに関するもので、異議申立人がその侵害を疑われている場合であれば、あらゆる無効理由に基づいて特許を攻撃するために用いることができる。全ての特許が当事者系レビューの対象となるが、例外として、新しい特許は付与後9ヶ月経過するまで対象にはならない(最初の9ヶ月間、こうした特許は付与後レビューという制度を通してあらゆる無効理由に基づく攻撃にさらされる)。冒認手続は、発明者と模倣者とされる者の優先権争いの解決に利用される。また当然ながら、PTAB審判において侵害は争点とはなら ない。

当事者系レビューの約80%には同時係属中の関連訴訟がある。こうした当事者系レビューのほとんどは異議申立人が特許侵害で訴えられた後に申請されていたが、当事者間に何も訴訟がない時点で提出されたものもあった。異議申立人が請願を行うことのできる時期には期限があるため、この戦術の選択は重要である。侵害の訴状が既に送達されている場合、異議申立人が当事者系レビューの申請を行えるのは、送達後1年までである(合衆国法典第35巻315条(b))。異議申立人が特許無効化を求める確認訴訟を既に提起している場合、同人は当事者系レビューを求めることはできない(合衆国法典第35巻315条 (a)(1))。

優秀、迅速、安価

当事者系レビューが何千もの申請を呼び寄せてきたのは、科学に精通した審判官による特許有効性に関する迅速な決定(最長18ヶ月)が、民事訴訟の約10分の1の費用で得られるからである。

優秀

各当事者系レビューは、3人の特許審判官による合議体によって行われる。PTABにいるおよそ260名のこうした審判官のうち約100名は審判手続を担当し、そのほとんどが専任である。残りの者は、却下された特許出願の不服申立てを主に扱っている。特許審判官は、いずれも、理工学系の学位や法律の学位を有し、特許法に長年の経験を持つ。特にバイオテクノロジー分野では、多くの者が博士号やそれ以上のその他の学位を有する。特許審判官の集団的専門知識は、実質的に全ての理工学分野に及んでいる。

いずれの特許審判官も、PTABで審理されるどの訴訟も担当する可能性があるが、技術ごとにグループ化される傾向がある。ゆえに、審判団の少なくとも1名、また多くの場合は3名全員が、当該特許の対象に関連する技術的知識を有する可能性が高い。

迅速

ムダを省いた審判スケジュールと極めて限定的な証拠開示手続が訴訟のスピードを上げている。各当事者は、自らの全主張を60頁の主たる準備書面1冊にまとめなければならない。証人の証言は宣言書の形で提出され、その場での証言が行われることはほとんどない。各当事者は、相手方の証人(通常は、単に1名か2名の専門家である)の反対尋問を行い、そうした証言を筆記録の形で提出することができる。この場合もその場での証言は行われない。それ以外には、原則として他の証拠開示は行われない。但し、一方の当事者が「正義のために」命令するようPTABを説得できた場合はこの限りではない(連邦規則集第37巻42.51条 (b)(2))。そうした追加開示命令が出されることはまれで、PTABで行われた数千の訴訟手続のうち、出されたのは数十件に過ぎない。

安価

米国知的財産法協会が実施した2015年経済調査報告書によると、当事者系レビューの費用の中央値(自己申告)は、全面的な侵害訴訟となった場合にかかる可能性のある最低でも2,500万ドルの費用の10%未満である(この報告についてはwww.ptab-blog.com/2015/11/13/the-cost-effectiveness-of-ptab-proceedingsで詳しく論じている)。当事者系レビューは、関連する侵害訴訟の審問を行う裁判官に対し当事者系レビューの結果が出るまで当該訴訟を延期するよう説得する等、その他の費用の節約になる可能性も ある。

時系列

当事者系レビューの予備段階は、異議申立人が請願書を提出した時に始まる(図5上)。その後、特許権者は、3ヶ月の間に予備的応答書(訴訟が始まる前にその阻止を図るフリースローのようなもの)を提出することができる。この後、PTABは、3ヶ月の間に審理を開始するか否かを決定する。当事者系レビューの場合、異議申立人が申立対象の少なくとも1件のクレームについて特許性がないという合理的可能性を論証しているとPTABが判断しない限り、審理を開始することができない(合衆国法典第35巻314条(a)、連邦規則集第37巻42.108条(c))。

審理段階のプロセスも同様に当事者間を往復しながら進み(図5)、いくつかの期限を設けることにより遅れを防いでいる。例えば、特許権者は、1つ目の期限までの3ヶ月の間に申立人の証人に証言させ、自身側の専門家の陳述を得て完全応答書を作成する。申立人は、2つ目の期限までに、特許権者の証人の反対尋問証言や新たな回答供述と共に、自らの回答書を提出することができる。その後プロセスにとってそれほど重要ではないいくつかの期限を経て、審理が始まってから通常約9ヶ月となる7つ目の期限に審問が行われる。審理は、審理開始から12ヶ月以内に行われる最終決定書の発行をもって終結する。いずれの当事者も、決定から1ヶ月以内に再審理(認められることはまれである)を要請することができ、それから2ヶ月以内に連邦巡回区控訴裁判所に控訴することができる(決定が覆ることはまれである)。

図5.当事者系レビューの手続時系列

申立人の唯一のシュートのチャンス

弁護士は一般に、訴訟の最初にその全ての主張を提示することを好まず、いくつかの論点を伏せて相手方がどう反応するかを見ることを選ぶが、PTABの審理手続の場では、全面的な開示を行わないことが命取りとなる可能性がある。

申立書は、非特許性を主張する申立人がシュートを決める唯一のチャンスなのである。PTABが当事者系レビューにおいて用いる、早いペースで何段階ものプロセスを往復する手続は、この基本的な事実を見えにくくすることがある。しかし、申立人がこのことを認識していないがために請願書にその全面的な主張を提示せず、最悪の結果を招くことになる可能性がある。従って、PTAB訴訟では、申立人の主張は請願書で始まるのではなく請願書で終わるという点が重要な特徴である。

よって申立人は、訴訟を形作る一度限りの機会を捉え、活用しなければならない。つまり、

  • 最初の請願書の中で、可能性のある全ての論点を特定し、断固として論じること
  • 先行技術の弱点を専門家の証言で補強すること
  • 発明時点に存在した様々な知識を専門家が織り込んで説得力を持たせたストーリーと参考文献を結びつける論理的根拠を提示すること
  • 証拠で裏付けられたクレーム解釈を進め、それが明細書に一致する最も広い合理的解釈であり、それより広いものではないことを示すこと。

審理開始はPTABの裁量権

当事者系レビューの法規は、申立人が申立要件を満たしていても、審理開始を米国特許商標庁(USPTO)に義務付けておらず、むしろ、要件が満たされない限りその開始を禁じている。この取り決めの結果、PTABは、審理を拒否する実質的に無制限の裁量権を有することになる。たとえ申立人が非特許性を主張する立派な論陣を張ったとしても、PTABは、何らかの理由で、または何の理由もなく、その裁量権を行使して審理開始を拒否することができるのである。よって、この審理開始段階は、特許権者にとっては、PTABが審理拒否に傾くような基本的公正性や公序の配慮を指摘する最良の機会である。一旦審理が開始されると、申立人による先行技術への異議申立てに直接向けられていない議論は概して軽視される可能性がある。

特許権者の2度のチャンス

多くの特許権者は、異議申立ての無効化のために自らが得ている2度のシュートのチャンスを認識しておらず、または活用できていない。特許権者の予備的応答書と特許権者の完全応答書は、名前は似ているが異なる機能を持つものであり、異なったやり方で利用すべきである。

最も重要な違いは、この2つの応答書は目的が違うということである。予備的応答書は、申立人の主張が認められる合理的可能性がないことを示すのが目的である。これは特許権者にとっては満たすことがかなり難しい基準であり、特許権者は予備的応答書において新たな供述証拠を提示することができないという事実がさらにこれを複雑にしている(連邦規則集第37巻42.107条(c)–但し、PTABで審議中の規則案によって緩和 される可能性がある)。

図6.年度別の当事者系レビュー審理開始率

PTABは、審理を開始するかどうかを判断する際に予備的応答書を考慮する。よって予備的応答書の焦点は、審理を開始できない、または開始すべきではない理由に置かれるべきである。法定拒絶事由 ― 主として先行訴訟、利害関係のある実際の当事者を特定できない、先行技術文献を実証できない等があればこれを中心に据えなければならない。特許権者は、異なるクレーム解釈を主張することもできるし、申立人の主張の実体を攻撃することもできる。しかしこれら2つの戦略には、通常、専門家の証言が必要とされるため、予備段階ではあまり成功しないことが多い。

2013年は、審理開始の決定の87%が申立人に有利なものであったため特許権者にはかなり散々なスタートであったものの、審理開始率は次第に落ち着き、2015年10月に始まった今年度は62%となっている(図6)。

他方、特許権者の完全応答書は、十分な証拠記録の優越によって申立人による特許性への異議申立てが裏付けられていないことを示すことが目的である。これは、技術的には負担が少ないが、経験によると、最終判決に至ることが認められた全ケースの約4分の3において、異議申立対象のクレーム全てが取り消されるという結果となっている(図7)。

図7.現在までに完了した当事者系レビュー請願の処分

*データは2015年12月31日現在

和解が大きな割合を占める

申立人に重い負担を課す決定がなぜ申立人に有利に働くのか?その答えは和解にあるようだ。

当事者系レビュー制度の幕開けには比較的まれだった和解が、今ではこうした手続において40%(約半分が審理開始前、半分が開始後である)の割合で生じおり、著しく目立っている。

和解について覚えておくべき重要なことは、当事者系レビューを打ち切る前に、PTABが和解を承認しなければならないということだ。当事者らは共同で和解を提議しなければならず、(正式捺印された)和解合意書を提出してPTABの審査を受けなければならない。PTABは、和解合意書が、当事者系レビュー自体を含む両当事者間の紛争を完全に解決するものであるとの確認を求めているのである。

大抵の場合、PTABは喜んで和解を認め、訴訟を打ち切る。審理件数が膨大であることから、こうした合意可能性は奨励される。しかし、時折、和解が認められないか、さらに悪いことに、申立人は免除されるが特許権者は免除されないことがある。これは、和解が手続の後半に行われ、PTABが既に当該事案の決定を行っている場合に生じる可能性がある。また、当該特許が先行技術の攻撃に特に脆弱であると思われるなど、PTABが訴訟の継続に何らかの実質的な公益を見出す場合にも生じる可能性がある。

連邦巡回裁判所はPTABを支持

連邦巡回裁判所は、当事者系レビューを開始するPTABの決定を再審理することを断固として拒否している。このことは、セント・ジュード・メディカル循環器科 対 ボルケーノ・コープ事件(749 F 3d 1373 (Fed Cir 2014);開始済みの当事者系レビューからの控訴を棄却したもの)や、プロクター・アンド・ギャンブル事件(749 F 3d 1376 (Fed Cir 2014);開始済みの当事者系レビューからの職務執行令状の送達を拒否したもの)に明白に説明されている。主な障壁は、審理開始の決定は最終的かつ控訴不能であると定める合衆国法典第35巻314条(d)である。この規定に対する違憲訴訟は、今 までのところ徒労に終わっている。

連邦巡回裁判所は、コゾ・スピード・テック社事件(778 F 3d 1271 (Fed Cir 2015))に始まり2015年初頭以降絶え間なく続く控訴において、ほぼ揺るぎなくPTABの最終決定を支持している。連邦巡回裁判所は、PTABが採用した慣行や手続の実質的に全ての側面を支持し、または少なくともこれに従っている。連邦巡回裁判所がPTABの判断を覆すか無効とした数少ない事例においてさえ、同裁判所は、その機会を捉えて、PTABが自らの業務を整理し、自らの規則を解釈する権限を是認している(例えば、PTABによる規則制定に対しシェブロン敬譲を認めたシノプシス・インク 対メンター・グラフィックス事件 No 14-1516の判決速報11ページ(Fed Cir, February 10 2016))。

結局のところ、当事者はPTABでの敗訴から簡単に回復することはできないため、控訴によってPTABの決定が覆されることを期待するのではなく、当事者系レビューにおいて最初から強い立場を築くことにリソースの大半を割くべきである。

申請前和解の急増

最終決定におけるクレーム取消率の高さが和解率の上昇を後押ししていると思われるのと同様に、当事者系レビューが申請すらされないうちに和解するという分かりにくい慣行を推進しているように見える。特許権者が特許侵害の申立書草案を侵害被疑者に見せて和解を促すことは珍しくない。同様に、侵害被疑者も同じ理由で当事者系レビューの請願書草案を特許権者に見せる場合がある。しかし、当事者系レビューの請願書は非特許性の主張のありとあらゆる詳細を全て提示するため、特許侵害申立書の草案よりも和解のツールとしてずっと高いパンチ力を持ち得る。和解を拒む特許権者は、これを拒むことによって、委細にわたる請願書が他の侵害訴訟のターゲットとなり得る誰もが見られる形で公に提出されることを受け入れることになるのである。こうした「闇当事者系レビュー」がどれぐらいあるのかを定量化することは不可能であるが、侵害訴訟の弁護の初期段階と比べても低コストであることから、非常に多数あると 考えるのが妥当である。

補正の申立て - 最後の手段として以外は考慮に値せず

特許権者は、補正の申立てにおけるこれまでの成績が散々たるもの(PTAB審判が始まって以来認められたのは5件に過ぎない)であるため、これについては殆んどあきらめてしまっている。そしてこれはおそらく正解だろう。審判官はクレームの審査を行う態勢になく、先行技術の包括的かつ公平なレビューを行うのに申立人に頼ることをよしとしない。その結果、PTABは、提示されている補正クレームの特許性の証明責任を特許権者に課している。これはつまり、登録済みの、または特許権者にとって既知の先行技術によって当該クレームが特許不可とされることはないということを証明することを意味する。連邦巡回裁判所は、こうした証明責任を課すことを断固として支持してきた。特許権者にとっては、継続・分割出願や再発行出願または再審査手続によってクレームを補正する方が便利なのである。これらの各場面においては、特許審査官による査定系審査が行われる。そうした手続の結果は別のPTAB審判で争われるかもしれないが、特許権者は、少なくとも異議申立人によってことあるごとに反対書面を提出されることなく、自らの主張を審査官に提示する機会を持つことができる。

禁反言の輪郭は未だ不明

PTAB審判法規は、敗訴した申立人に禁反言を課しており、申立人は、最終決定書に至った当事者系レビュー「の間に申立人が提起した、または合理的に提起することが可能だった」根拠に基づいてUSPTOでの手続きを維持し、または特許の無効性を主張することはできない。これが正確に何を意味するのかは法解釈の問題であるが、裁判所はまだ判断を下していない。

かなり明確なのは、当事者系レビューにおいては、禁反言は先行技術の申立にのみ適用されるということである。申立人が記述要件の欠如や実施可能要件の欠如または不明瞭性など、合衆国法典第35巻282条(b)に基づき認められているその他の無効性の主張を行うことは何も禁じられていない。

明確でないのは、破棄された先行技術の異議申立てに対する禁反言の効果である。申立人が請願書の中に先行技術の申立てを入れないでおいて後に法廷でこれを提示したいと考える場合、これは禁じられるのだろうか? 申立人は、その主張を「合理的に提起することが可能だった」と言われるかもしれない。しかし、これが申立書の60頁制限のために省かれたとしたらどうであろうか? 禁反言の適用には、事実集約的審理が必要となる可能性が高そうである。

最後にもう一つ不明瞭なこととして、法律中の「の間に(during)」いう語は正確には何を意味するのだろうか?当事者系レビューは審理が開始されるまで実際には開始されないため、これはPTABが実際に審理を開始した根拠のみに禁反言を限定していると言う解説者もいる。従って、こうした解説者によると、請願書には述べられてはいるがPTABによる審理が開始されなかった申立てについては、後の同庁や裁判所の手続において禁反言の対象とならない。

禁反言に関するこうした様々な不確かさを鑑みると、慎重なアプローチを取ることが望ましい。申請時に申立人にわかっている先行技術の主張は全て禁止対象となるものと考え、そのように計画することである。

当事者レビューに最善の弁護団

当事者系レビューについて定める規則は古いインターフェアレンス規則をモデルとしているため、当事者系レビューが最初に登場した際は、インターフェアレンスの経験を有する弁護士が、この新たな職務について売り込む最適な立場にあった。しかし当事者系レビューの件数が急増したため、その数はインターフェアレンス系弁護士が扱える容量を大きく超えてしまった。そこで問題は、従来の特許弁理士や特許審判弁護士のうちの誰が当事者系レビューを扱うのに最良のスキルセットを有するかということになる。

その答えは、当事者系レビューは通常の出願手続や訴訟とは非常に異なっているため、出願弁理士も訴訟弁護士も最適なスキルセットは持っていないというものである。出願弁理士と訴訟弁護士で構成される協働チームでさえ、必ずしも合わせれば当事者系レビュー特有のスキルセットとなるわけではない。いくつかのスキルは訴訟弁護士の領域である(準備書面の記述、反対尋問、口頭弁論等)。訴訟弁護士にとって主に難しいのは、当事者系レビューでは立証責任が低くなっている点である。訴訟弁護士は、特許が享受する有効性の推定と、法廷でこれを無効化するために必要な明確かつ説得力のある証拠というものに合わせて思考が内面的 に調整されている。これに対し、特許出願弁理士は、当事者系レビューや通常の特許出願において用いられる「優越」基準や、両場面においてクレーム解釈に適用される「最も広い合理的解釈」に合わせて調整されている。理想的な当事者系レビュー弁護士は、従来の訴訟スキルと当事者系レビューにおける低い立証責任に合わせて再調整ができる人である。

審判官はどちらの法的バックグラウンドを好むだろうか?もちろん、彼らが要求するのはUSPTOで業務を行うために主任弁護士は登録しなければならないということのみで、公に好みを述べることはしない。当該案件に限り特許弁理士を支援弁護士として認めるようにとの申立てには速やかに許可を出し、また主任弁護士が出席している限り、支援弁護士が訴訟を遂行しても全く気にしない。しかし、審判官が、PTABの規則に精通し、その厳守を行動で示し、記録についてしっかりとした知識を持ち、質問にまっすぐ答える用意のある弁護士と仕事をすることを好むのは疑う余地がない。問題は、審判官がどのタイプの弁護士を最も好むかということではなく、当事者系レビューを規定する法令や規則に合致するやり方で最も強固に主張を提示できるのはどんな タイプの弁護士かということである。

実務のヒント:特許権者

知財最高責任者が個人的に当事者系レビューを扱うことはありそうもないが、当事者系レビュー弁護団とのやり取りに際し、ハイレベルな戦略的配慮のいくつかは心に留めておくに値する。

優れた予備的応答書の主張は再提示する

上述したように、当事者系レビューにおいて閾値問題を扱うのに最適なのは予備的応答書である。実体的事項を扱うには次善の手段であるが、これは、特許権者は、権利の問題として、新たな供述証拠を補足することができないからである。しかし、このことは、特許権者は予備的応答書を利用して実体的主張を試してみるべきではないことを意味するものではない。厄介なのは、いずれにせよ一旦PTABが審理を開始すると、特許権者はその決定を実体的主張の否定と解釈することが多いということである。そして、彼らはこうした主張を特許権者の完全応答書から削除してしまう。これは過剰反応である 場合が多い。

ここで重要なのは、PTABが当該主張に説得力がないとした理由に注目することである。特に、PTABは主張自体に批判的なのかそれともこれを裏付ける証拠に批判的なのかに注目しなければならない。PTABがある主張について、例えばクレームの範囲と釣り合っていないため、あるいは申立人が構成した異議申立てへの回答となっていないため説得力がないと言っている場合、特許権者はこうした主張を特許権者の完全応答書において維持すべきかどうか再考すべきである。

一方、PTABがある主張について十分な証拠の裏付けがないために説得力がないと言っている場合、これはおそらく、特許権者が十分な証拠を揃えられれば当該主張は審理において優勢となり得ることを意味するだろう。

予備的応答書と一緒に証言録取書が取り入れられるようにする

規則は、予備的応答書と共に新たな供述証拠を提示することを禁じているが、「審判部が許可する場合を除き」と書かれている。これは、許可があれば新たな供述証拠が認められるということを意味する。特許権者は、もっと頻繁に、予備段階における新たな供述証拠の提示を模索すべきである。

真の問題は、どんな種類の新たな供述証拠か?という点である。これまでにこれを試みた特許権者は、たいてい、証人の宣言によってこれを行おうとした。この方法は成功する可能性が低い。それは、直接証言は検証されないからである。理論上、直接証言において表明される陳述や意見は反対尋問で覆される可能性がある。よって、PTABが、申立人の専門家の直接証言は審理開始のための十分な証拠を提供しているかについて十分に判断できると考えても、そうした判断は必然的に予備的なものであって、PTABが最終的に申立人証人の証言にどれほどの重要性を与えるかは、特許権者が反対尋問においてそうした証拠を検証する機会を得るまでは未決定のままである。しかし、特許権者に有利な審理開始に関する決定は、申立人が求める救済を与えないという最終決定である。PTABは、特許権者の証人による未検証の直接証言のみに基づいて申立人の救済を拒否することはしないが、これは、申立人は理論上、反対尋問においてそうした証拠を覆し得るからである。では、審理開始前の回答書において特許権者の予備応答証人の反対尋問を認めないのは何故か?これを行うことは、単に審理を予備段階に押し込み、3ヶ月以内に審理開始の決定を出すというPTABの負担を増大させることになるのである。

より良い方法は、予備段階において申立人証人の限定的な証言録取を認めるようPTABを説得することであろう。PTABは、例えば、申立人の主張は、信憑性があるように見えるが反対尋問で否定される可能性の高いたった1つの事実の主張に依存していると納得すれば、これを認めるかもしれない。その場合、特許権者は、そうした1つの特定事実問題に焦点を当てた短い反対尋問が許可されれば審理全体が回避される可能性があると主張できる。そうすれば、特許権者は、予備的応答書と一緒に、申立人証人の証言録取書の形で新たな供述証拠を提出することが認められるだろう。

その後、PTABは、証言録取書を踏まえて申立人証人の宣言証言を評価することができる。完全な信憑性判断を行い、この証言録取書が当該証人の証拠に与えられた重要性を損なうかどうかを判断することができる。選択的かつ綿密に利用すれば、このテクニックは、特許権者が審理を回避し、または審理の対象となる問題を限定するのに役立つ可能性がある。

弁護側証人を最も効果的に利用する

特許権者は、申立人による非特許性の主張を崩すという基本的な1つの目的のために専門家証人を利用する。専門家証人は、申立人の証拠に反論するか、または申立人の非特許性の証拠を薄めてその優越度を下げるような新たな証拠を提示するという2つのやり方でこれを行うことができる。特許権者は前者を行う頻度が低すぎる。特許権者の証人は、特に当業者の見地から見た先行技術の意味について申立人の証人を否定することが多いものの、何故申立人の証人の分析が誤りであるかを説明していないことが多い。2人の専門家が参考文献の解釈について意見を異にすることは必ずしも不合理ではなく、専門家が相手方の結論が何故誤りであるのかを説明することなく単に異なる結論に達しているように見える場合、PTABは、処分を決めるためには証拠の別の部分を見ざるを得なくなることがよくある。より良いやり方は、証人に具体的な例をもって相手方証人が誤った事実や根拠のない推定に基づいて結論を出していることを示させることである。そうすれば、PTABは一方の証人の解釈を他方のものより信用する理由が得られるのである。

実務のヒント:申立人

和解の力

申立人は、上述した闇当事者系レビュー現象を利用すべきである。申立人の交渉力は、特許性に関する異議申立てが公となるまでの期間に最大となるものである。特許権者にとっては異議申立てを止めさせることに最大の価値があるのがこの段階なのである。一旦異議申立てがPTABに提出されてしまえば、これは一般の人々が自由にアクセスでき、他の異議申立人に食い物にされる可能性がある。従って、申立人は、公的な戦いの前に私的な対話を始めることを期待して、当事者系レビュー案を提出前に特許権者に見せることを検討すべきである。提出前の和解を行うことで、問題の特許のライセンスが申立人に付与される一方で、他社に対しては執行可能であるということもあり得る。

申立ての深さのミスマッチを避ける

実例で考えてみよう。申立人がその申立てにおいて無効化の根拠を6つ提示するとする。申立人は、根拠1つにつき平均約9頁を割くことになる(準備書面の残りの部分は他の必須事項によって占められる)。その後 、PTABがこうした根拠のうち1つか2つについて審理を開始した場合、特許権者は、応答書の30頁か或いは60頁をも使って申立人の主張を攻撃することができる。どんな申立人が特許権者にこのような優位性を与えることを望む だろうか?

たった60頁の中で全ての問題点を十分に扱うため、申立人は、申立ての数と分析の深さのバランスを取らなければならない。申立人は、禁反言を恐れるあまり、請願書を焼き直しただけの形式的な専門家の供述書を裏付けとする分析の浅い申立てを数多く提出することが多い。PTABは、そうした異議申立てのうちほんの一握りについてのみ審理を開始することが多いため、特許権者は持てる60頁をより少ない数の問題点に関して、より深い分析に費やせることになる。そうした深い分析は請願書の証拠の穴を露呈させ、申立人は、自らが示した合理的可能性と自らが求める証拠の優越の間で身動きが取れなくなってしまう。(付与後レビューやビジネス方法特許レビューでは審理開始の基準はこれよりいくらか高く、申立人の異議申立てが反論なく進むには、異議申立対象のクレームの少なくとも1つについて特許性がない可能性が50%を超えることを示すよう求められる)。申立人は、当事者系レビューの全面敗訴のリスクより禁反言のリスクを重視する際は、このミスマッチの可能性を考慮に入れるべきである。

審問は当事者双方にとって重要

PTABにおける大部分の訴訟当事者は、審判官が審問にのぞむ際に、どちらの当事者が勝訴するかについてしばしば明確な考えを持っていないことを明確にすべきである。審判官たちは審問の前に話し合いを行うし、少なくとも意見を書く担当の審判官は、記録を徹底的に読んでいる。しかし記録は膨大であるし、証拠の一部はブリーフィングが終わった後に来ることもある。よって審問は、当該訴訟において、当事者が蓄積された全ての証拠を共に寄せ集め、綿密で一貫した一つのストーリーへとまとめ上げる最初の瞬間なのである。最初は取るに足らないと見えた証拠が、後から現れた証拠に照らして重要性を増すこともある。審問は、PTABが証拠の全体を巨視的及び微視的に審査する正に最初の機会である。当事者系レビュー予算に弁護団が口頭弁論の準備に使える余地をふんだんに残しておこう。訴訟は審問で勝つことは滅多にないが審問で負けることは多いとよく言われる。PTAB審判では、審問において両当事者に等しくシュートが与えられているという方がおそらく正しい だろう。

微調整

初期の懸念や手続に対する継続中の訴訟にもかかわらず、当事者系レビューはアメリカの特許法の風景の中に上手く収まっている。制度についての議論は、制度を維持すべきかどうかではなく、どのように微調整を行うべきかに焦点が移っている。制度は多数の人望の厚い審判官によって運営されており、彼らの決定は、これを審査する裁判所によって圧倒的に支持されている。当事者系レビューは定着した。

 

行動計画

米国特許審判部前審判官から知財最高責任者への当事者系レビューのヒント

  • 異議申立てを行う知財最高責任者は、特許を攻撃する迅速で低コストな方法として当事者系レビューを検討すべきであるが、タイトな期日に注意しなければならない。
  • 特許権者の知財最高責任者は、特許権を執行する際には当事者系レビューのリスクを考慮に入れなければならず、早期に防御戦略を計画し始めるべきである。
  • 全ての知財最高責任者は、当事者系レビューでは立証責任がより軽減されていることを鑑み訴訟スキルを再調整する能力を有する弁護士を選ぶべきである。

筆者紹介 スコット E カムホルズは、米国ワシントンDCのフォーリー・ホーグのパートナーで、以前は米国特許商標庁の特許審判部の特許審判官を務めていた。

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