グローバル知財市場の 支配者
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高額で革新的な取引、新しい価値創造の捉え方、最先端の思考によるリーダーシップを有したエリート集団が国際知財取引市場を牽引している。IAMマーケットメイカー2015をここに発表する。
I AM第66号(2014年7/8月、61~75頁)に最初のマーケットメイカー・ランキングが発表されてからの16ヶ月の間に知財市場は劇的に変化した。我々がトップ40の名を挙げた1ヶ月後、米国最高裁判所はアリス判決を言い渡したが、これによってソフトウェア特許の存続可能性が疑問視され、特許訴訟の多くの原告が第101条適格性の議論によって窮地に立たされ、深刻な不確実性の新たな時代の幕開けとなった。それまでの多くの連邦巡回裁判所および最高裁判所の判決や特許審判部(PTAB)の活動と並び、この判決によって、潜在的なライセンシーが訴訟開始前に交渉の席に着こうと考える動機はずっと少なくなり、米国における使用許諾活動に萎縮的効果がもたらされた。
その一方、我々は、特許売買実施件数の増加についてもレポートした。アライド・セキュリティー・トラスト(IAM第69号、45~51頁)とリチャードソン・オリバー・ロー・グループ(IAMブログ、2015年5月1日)は、2014年および2015年にかけて取引活動が増加したことを示す調査を発表した。しかし、IAMのベンチマーク調査(第72号、56~73頁)では、価格は膠着状態が続き、下落の可能性すら示唆された。米国は買い手市場と考えられ、この状態が短期的に変化する兆しはない。
米国での取引交渉が困難になるにつれて、世界の他の地域においてその増加が見られるようになった。ヨーロッパ、特にドイツが、魅力的な高額訴訟地として浮かび上がっているが、新たな統一特許および統一特許裁判所が動き始めると、この傾向はますます強まるだろう。一方アジアでは、価値の高いポートフォリオを取得してライセンス・インを行うだけではなく、社内および第三者パートナーとの間で独自の収益化プログラムの開発も行う企業の数が増えている。
こうした傾向を見ると、我々の2015年のマーケットメイカー・リストからNPE(特許不実施主体)幹部や投資家の数が減り、事業会社の上級幹部の数が増えているのは大して驚くことではない。地理的な内訳も変化し、トップ40のうち北米企業は減り、欧州やアジアを拠点にする者が増えた。ただ変わっていないのは、選ばれた個々の能力である。
我々にとって、IAMマーケットメイカーは世界の知財市場の主たる牽引者である。客観的な指標を用いて彼らを特定したのではなく、その選択は我々自身の観察や報告されている取引活動および市場参加者との会話に基づいて行った。もちろん、判定は公に入手可能な情報に基づいてしか行うことができない。内密に行われた取引や公表せずに展開された革新的な戦略は、その性質上、我々のレーダーに検知される可能性が低く、そうした行動について我々が知ることはない。
したがって、挙げ損じた名前もあるだろうし、登場順はもちろんのこと、その選択は誰もが納得するものではないことは確かである。しかしながら、我々の努力が未だ極めて不透明な市場に光を当てようとする誠実な試みであることを認めていただけたら幸いである。
40 ロン・エプスタイン、エピセンターIPグループ
ウィルソン・ソンシーニ・グッドリッチ&ロサーティ法律事務所やインテル社内での任務を含むキャリアを通して磨かれた経験、ライセンシングに関する専門的知識、取引交渉の才覚を合わせ持つロン・エプスタイン氏に匹敵する者は市場にほとんどいない。エピセンターIPグループ設立以降の同氏の最大の成功は、スペインの電気通信企業フラクタスのライセンシング・キャンペーンを大成功させた立役者としての役割にあった。エプスタイン氏は、そのキャリアを通じて、合わせて150件以上の取引の成立を指揮し、10億ドルを超える売上やライセンス収入を生み出した。こうした実績によって同氏は特許市場における頼れるアドバイザーの1人に選抜された。
39 ジェラルド・ホルツマン、パーソナライズド・メディア・コミュニケーションズ
ジェラルド・ホルツマン氏は、1996年から2014年まで、パーソナライズド・メディア・コミュニケーションズ(PMC)の法律顧問として、市場において最も効果的なライセンシング・プログラムの1つを導入することに貢献した。現在は、同社の社長として、様々な通信システムやデバイスおよびネットワークを対象とするポートフォリオの管理に今も積極的に関与している。2015年、PMCは、既にシスコやソニー、モトローラ、ディレクTVなど知名度の高い企業が並ぶライセンシー・リストにシャープとアリス・グループを加えた。米国で継続中の特許改革の議論では、ライセンス部門においてホルツマン氏の意見がより尊重されるようになり、いかなる立法案に対してもバランスを提唱している。
38 クワン-ジュン・キム、インテレクチュアル・ディスカバリー
インテレクチュアル・ディスカバリー(ID)は、韓国政府が同国最初の政府系特許ファンドを運用し、国内産業に対し多数の知財コンサルティング・サービスを提供するために設立した会社であり、2010年7月の立上げ以降ますます力を付けてきている。過去5年間にわたって、IDとその関係会社(運用資産は4億6,000万ドルを超える)は、評価額1億ドルを超える5,000近い特許で構成されるポートフォリオを構築し、200社を超える企業がその防御的特許プールスキームに登録している。2015年に入ってIDの新しいCEOに指名されたクワン-ジュン・キム氏は、今後数年にわたってその事業を拡大し、投資家に収益を約束する任務を負う。キム氏はサムスン・ディスプレイの出身で、同社では最高知財責任者(CIPO)および法律顧問を務め、韓国の知財業界における主要な思想的指導者としての名声を得た。同氏は、サムスン・ディスプレイ在職中、またそれ以前の親会社であるサムスン・エレクトロニクスの知財センターのバイスプレジデントとして、国境をまたいだ知財訴訟や国際出願手続きおよびライセンス交渉の業務で幅広く経験を積んだ。同氏のこうした専門性は、まさにIDがポートフォリオの収益化のための、おそらくより攻撃的となり得る次の局面を開始するにあたって必要としているものであろう。
37 ジョー・チェルネスキー、クデルスキー・グループ
自ら騒ぎ立てることはしないものの、スイスのデジタルセキュリティおよびコンバージェント・メディア・システム企業であるクデルスキーは、過去18ヶ月にわたって重大なライセンス取引を相次いでまとめてきた。ネットフリックス、ブルームバーグ、グーグル、ウォルト・ディズニーといった著名な企業との取引を牽引するのが知的財産担当シニア・バイスプレジデントのジョー・チェルネスキー氏である。バイスプレジデント兼グローバル・ライセンス営業担当ゼネラルマネージャーを務めていたインテレクチュアル・ベンチャーズから2012年に引き抜かれた(その前はIポテンシャルの共同創立者だった)チェルネスキー氏は、創立者でCEOのアンドレ・クデルスキー氏の直属となっている。「穏やかに、穏やかに」というのが彼流の仕事の進め方で、数々の成功にもかかわらず同社が裁判沙汰に至ることは滅多にないことは注目に値し、これは、チェルネスキー氏が率いる評判のチームが将来のパートナーを説得するうえでの強力な材料となる。ただし訴訟となった場合、ヨーロッパの裁判地がより好まれる。 [下記のインタビュー参照]
36 周延鵬、ウィスプロ/ScienBiziP/MiiCs&パートナーズ
ウィスプロCEOの周延鵬氏は多彩な顔を持つ。知財戦略コンサルタント兼法律事務所を率いるのに加えて、同氏は、特許収益化企業であるMiiCs&パートナーズと、ホンハイ(鴻海 ―フォックスコンとも呼ばれる)が2013年に知財機能をスピンアウトした際に設立された組織であるScienBiziPコンサルティングにおいても責任者を務めている。周氏は、ホンハイの最高法律顧問を18年間にわたって務め、この間にこの台湾企業を地域の最強知財チームへと成長させた。その後同社を離れてウィスプロを創立したが、一巡りして今日では、フォックスコンの郭台銘会長の強い要請によって、周氏は再び、但し今回は従業員としてではなく関係第三者として、同社の知財ポートフォリオの価値の最大化に大きな役割を果たすようになっている。周氏の会社では、同グループのほとんどの知財戦略を手掛けるのに加え、台湾の権利保有者らが特許ポートフォリオをより活用するにつれ、他の台湾企業の顧客数も増加している。[下記のインタビュー参照]
35 ピーター・ホルデン、ipCreate
パナソニック、コラーキャピタル、IPバリューなどの企業でキャリアを持ち、いくつもの取引を成立させてきたピーター・ホルデン氏ほど実績の多い特許交渉者は珍しい。しかし、ホルデン氏は、今では資産の売買はもう行っておらず、ipCreateの社長として、主要技術企業における多数のコンタクトを利用して、このインベンション・オン・デマンド企業の事業を推進し、資金の獲得を目指している。初期の段階ではその両面において非常に成功しているようであるが、本当に試されるのはおそらくこれからだろう。事業を軌道に乗せることと、これを維持し成長させることは全く異なる話となる。しかし、同社はジョン・クローニン氏とマーシャル・フェルプス氏をそれぞれ経営執行役会長と会長に迎え、特に企業の研究開発費がかつてなく高騰し、財務上の精査の対象となる時代において、成功するためのすべてのチャンスを握っている。
34 ボリス・テクスラー、アンワイヤード・プラネット
ボリス・テクスラー氏が特許許諾および特許戦略を担当していたアップルを去ってテクニカラーの技術責任者となり多くの人を驚かせたのはほんの2、3年前のことであったが、同氏は6月にNPEアンワイヤード・プラネットのCEO兼社長に就任して再び周囲を驚かせた。この新しいポストが魅力的だったのか、テクニカラーの役員室での攻防に疲弊したのか、或いはこの両方なのか、いずれにせよ、アンワイヤードが8月に発表した4,200万ドルの年間損失は、テクスラー氏が大きな挑戦を手にしていることを示している。しかし、同社の前身であるオープンウェーブから受け継いだモバイルインターネットの基盤的特許に加え、2013年にエリクソンから譲渡を受けた2,000を超える特許があり、テクスラー氏は大量の案件を抱えている。今後、テクスラー氏はハイテク関連の幅広い人脈を生かし、標準必須特許の使用許諾により重点的な取り組みが見られることが期待され、またヨーロッパにおける訴訟も増加するだろう。何らかの製品開発もありそうである。
33 アイラ・ブルンバーグ、レノボ
過去と比較し、ここ2、3年は大型の特許取引については比較的静かであったが、中国のレノボはこの傾向に反して、特に日本のNECやNPEアンワイヤード・プラネットといった会社から特許を購入している。M&Aの領域でも、同社はIBMのサーバー事業やモトローラ・モビリティの買収を通じてポートフォリオを増やしている。こうした高額取引は、レノボの本拠地である北京ではなく、アメリカのノースカロライナにある同社の知財中枢部が指揮した。バイスプレジデントのアイラ・ブルンバーグ氏は、ここで同社の知財戦略を策定し実施しており、北米とヨーロッパのスマートフォン市場における同社のプレゼンスの拡大と共に、本拠地中国および世界各国においても購買を強化することを目指している。しかし、ブルンバーグ氏が提供するのは知財資産購入に対する鋭い目だけではない。同氏はレノボのポートフォリオの有機的成長の推進においても鍵となってきたが、この活動は、同社の将来にさらに貴重な機会を提供する可能性がある。
32 長澤健一、キヤノン
一握りの日本企業が、資産の売却または一部にはNPE(特許不実施主体)との提携による特許の収益化を採り入れることを決定しているが、大多数の国内企業にとって、そうした活動は今も受け入れ難いものである。こうしたより保守的な声の最前線が、キヤノンの知的財産部門長で取締役の長澤健一氏である。長澤氏にとって、一般市場で特許が売買されるような取引は最終的に逆効果で、そうした資産は「トロール」の手に陥るかまたは「トロール」のような行動を奨励する可能性があるため、日本企業の経済的繁栄を損なうものである。しかし、収益化については保守的であるものの、このことは同氏が受け身の傍観者であることを意味するものではなく、実際全くそうではない。長澤氏は、グーグルとのライセンス・オン・トランスファー・ネットワーク(LOTNet:権利保有者の協定で、自社の特許の売却を決めた場合には会員企業にライセンスを供与することを約束したもの)の設立に尽力し、日本の緊密な企業知財リーダーの中で最も影響力の大きい一人である。
31 ダナ・ヘイター、インテル
ダナ・ヘイター氏がバイスプレジデントとして知財部門を率いているインテルは、新たな市場や技術領域への移行を模索する今も、同セクターの最前線で活躍する1社である。この1年間で報告されている同社最大の特許取引は、かつてパワーウェーブに属していた1,400件の資産の取得であった。広報担当者はIAMに対し、支払われた金額は同社にとって「重大ではなかった」と話したが、それでも高額の取引であった可能性は残る。しかし価格がどうであれ、この取引は、インテルが今もスケールの大きな案件を考える用意のある活発な勢力であることを示している。中国の政府系半導体投資事業体のチンファ・ユニグループ(清華紫光集団)に対する多額の投資を含む幅広いM&Aや融資取引も、同社の知財ポジションを増強した。インテルは最近、米国の特許改革や標準必須特許の使用許諾を巡る議論においても、主要参加者として声を上げている。2015年6月にサンフランシスコで開催されたIPBCグローバルで講演したヘイター氏は、こうした問題のために、ストレートな特許許諾ではない技術ベースの取引が知財市場においてより一般的な形となるだろうと予測した。同氏の専門知識を有するインテルは、これが実現すればすばらしい利益を得ることになる。
30 ジュ・スプ・キム、LGエレクトロニクス
特許に関して言えば、韓国のチェボル(財閥)は、概して、クロスライセンス目的のための大量の特許出願に努力を傾注してきた。ところがここ数年、LGグループの旗艦企業であるLGエレクトロニクス(LGE)は、自社の幅広いポートフォリオの価値を高めるために、訴訟や使用許諾においてより攻撃的なアプローチを取るという思い切った行動に出ている。この新たな戦略の採用は、LGEの知的財産センター担当バイスプレジデントであるジュ・スプ・キム氏の尽力が大きい。キム氏は2011年に入社すると、LGディスプレイやゴールドスター、LGセミコンといった他のLG関連会社を代表して世界中で知財紛争や使用許諾交渉を扱った数十年の経験を活用した。以来、キム氏とそのチームは、知財取引を積極化し、主張に対して断固として同社を弁護してきた。ごく最近では、LGEは、自社の知財資産からさらに価値を引き出すべく第三者サービス業者と提携することを検討しているようである。[下記のインタビュー参照]
29 ジョン・リンドグレン、コンバーサント
NPE(特許不実施主体)にとって市場の厳しさが増す中、旧モサイドのコンバーサントは、業界の大物として浮上してきた。同社は2014年に最高収益を享受し、2015年に入ると匿名半導体企業との2件の大型ライセンス取引をまとめた。うち1件はNPEによるものとしては過去最大であった。2006年に入社以来、リンドグレン氏は安定した舵取り役として、社名変更やスターリング・パートナーズによる2011年の株式非公開に続き、2015年の製品開発部門の売却を指揮した。同氏のリーダーシップのもと、コンバーサントは倫理的特許許諾原則や、特許所有者公開簿(ORoPo)への参加を通じた特許の透明性の推奨においても第一人者となっている。リンドグレン氏は、ライセンス事業において長期にわたる実績を有しており、自社とパートナーの知財資産の収益化に集中して取り組む企業を率いるのに最適な資質を備えている。[下記のインタビュー参照]
28 アシュリー・ケラー、ゲルヒェン・ケラー・キャピタル
アシュリー・ケラー氏は、ゲルヒェン・ケラー・キャピタル(GKC)が特許の世界において最も有名で最も資金力のある投資会社の1社となる推進力となってきた。この分野の成功が資金調達によってある程度測定できるとすれば、GKC はまたたく間に市場リーダーとなるだろう。2015年2月、同社は、その最新ファンドであるGKCクレジット・オポチュニティーズを、4億7,500万ドルを超すコミットメントを集めてクロージングしたと発表した。このクロージングによって、GKCは今や8億ドルを超える資産を運用することとなり、法務・規制リスクに専念する最大級の投資会社となった。こうした積極性と、医薬品分野におけるGKC関連会社ネプチューン・ジェネリクスの創立という最近の興味深い出来事(おそらく当事者系レビューに関連する動きか?)を鑑みると、ケラー氏率いる同社の株は今後も上昇し続けるのは確実と思われる。[下記のインタビュー参照]
27 御供俊元、ソニー
日本の複数の代表的な技術企業がそうであるように、ソニーは、この数年間の大部分を今日の市場に合わせた自己改革と黒字転換を図ることに費やしてきた。業務執行役員シニア・バイスプレジデントであり知的財産担当の御供俊元氏は、この長年に渡る再構築プロセスの間、同社の膨大な知財ポートフォリオの変革を専門家として管理してきた。これには、パソコンブランドのバイオなど非中核事業の売却や、ソニーのテレビ製造部門を新子会社ブラビアとするなどのその他の事業のスピンオフが含まれる。同社が従来型事業からモバイル、画像処理、コンピューターゲームといった新たなより将来性のある分野へ移行することで、2015年に行われたクラウド・サービスのオンライブの知財資産の取得、2014年のドロップボックスへの100件を超える米国特許の売却といった特許取引に加え、同じく日本企業のパナソニックとジャパンディスプレイとの合弁会社、JOLED(ジェイオーレッド)への権利譲渡などを御供氏と同氏のチームは指揮してきた。[下記のインタビュー参照]
26 ステファン・ルージョ、テクニカラー
毎年の特許使用料収入が数億ユーロ単位となるテクニカラー(旧名トムソンSA)は、ヨーロッパのライセンス強豪企業の1社である。しかし2014年の大半と2015年初めは、行動派の株主のベクター・キャピタルとの戦略に関する激しい論争に巻き込まれた。ベクターは、事業を2つに分けて一方は製品中心、もう一方はライセンス中心とすることを提唱したが、テクニカラーの取締役会は、事業統一の方が強力な命題であると主張してこれに抵抗した。ようやく解決に至ったのは、ベクターが、Drive 2020という全体の価値の構築のために知財と製品開発が手を携えて取り組むことを前提とする戦略を支持した2月であった。ボリス・テクスラー氏の辞職後、4月に技術責任者に指名されたルージョ氏は、この新計画を達成し、ベクターの支持を維持する任務を負う。ルージョ氏は、テクニカラーの前最高財務責任者であり数字に強い。次は商談の能力を示す時である。ロヴィで知財およびライセンス担当グローバルヘッドを務めたアーヴィン・パテル氏を最近迎えたことは、その面において相当の助けとなるであろう。
25 ジャン-シャルル・ウルカド、フランス・ブルベ
ヨーロッパ唯一の政府系ファンドにとって忙しい年であったが、ゼネラルマネージャーのジャン-シャルル・ウルカド氏は満足げに振り返る。フランス政府と国有銀行であるフランス預金供託公庫が共同で1億ユーロの資金を提供して2011年に設立したフランス・ブルベの任務は、同国につながりのある企業や大学その他の事業体が知財収益を最大化する手助けを行うことである。2014年および2015年にかけて、同社は、提携先のインサイドセキュアを代表してLGとの近距離無線通信特許のポートフォリオに関するライセンス取引を確保し、同資産に基づきドイツの裁判所においてHTCに勝訴するなど、この任務を公に果たし始めた。その他にも取引は水面下で行われており、フランス・ブルベ・モデルが機能することを証明している。現在、防御的活動に集中的に取り組む別個のファンドの創設が議論されている。この話が進めば、ウルカドとその精鋭チームの仕事がさらに増えることを意味するが、これに異存はないだろう。[下記のインタビュー参照]
24 ガイ・プルークス、トランスパシフィックIP
トランスパシフィックIPは、チェアマン兼CEOのガイ・プルークス氏が2004年に、アジア太平洋で初となる大規模な知財戦略サービスを提供者として創立したが、今日に至るまで地域の市場リーダーであり続けている。2014年12月に上海で開かれたIPBCアジアでのスピーチにおいてプルークス氏自身が説明した通り、この2、3年はライセンス活動の低迷が見られ、特許取得に対する買い手のアプローチはより慎重なものであったが、それでもトランスパシフィックのビジネスは好調であった。同社はブローカーや仲介業者として最もよく知られているが、次第に分析や戦略策定、デューデリジェンスなどのコンサルティングの提供へとさらにサービスの領域を拡大している。その結果、同社の勢いは増し続け、今や複数の同地域最大の事業会社を顧客に抱えている。
23 西本裕、NEC
同胞のパナソニックと同様、NECは、家電製品市場のシェアが中国その他の機敏で低コストが売りの競合相手に侵食されつつある時代に付加価値を生み出す手段として特許の収益化を採り入れた数少ない日本企業の1つである。西本裕氏の舵取りによって、NECは、この状況から利益を生むためにその知財資産を賢く活用した。2012年に同社はディスプレイ技術を対象とする特許を台湾の鴻海/フォクスコン・グループに1億2,200万ドルで売却して大きなニュースとなった。こうした特許の一部は、その後、米連邦裁判所において、船井、三菱電機および東芝といった日本企業に対して主張された。同社は2014年、モバイル技術に関連する3, 800のパテントファミリーを中国のレノボに売却した一方、最近では楽天、ルネサス、サムスンの他、日本の政府系特許ファンド運用会社のIP Bridge(アイピーブリッジ)への資産譲渡も行っている。この分野では一般的な法務や研究開発部門ではなく企業戦略部門の出身である西本氏は、知財管理に実利的で経営重視のアプローチをもたらし、NECの特許ポートフォリオを同社の収入源へと転換させることに尽力してきた。
22 ダグ・クロクサル、マラソン・グループ
ここ数年の間に出現したNPE(特許不実施主体)の中で、マラソンは今も、厳しさが増す市況において生き残るだけの資金力のある国際的NPEのトップクラスに加わる可能性が最も高いと思われる。このステータスは、2015年8月にルクセンブルクに拠点を置くライセンス企業のユニロックと合併したことにより強固なものとなった。この取引の背景として税務上の検討事項が大きな要因となったのは間違いないが、これによって合併後の企業(マラソン・グループと呼ばれる)は662の特許資産を取得し、NPE部門においてさらなる統合を推進する立場に置かれることにもなった。ダグ・クロクサル氏は、合併後もチェアマン兼CEOとして留まり、知財業界で最も経験豊富なリーダーの一人という評判を際立たせた。クロクサル氏は、多様性に富んだ高品質特許のプールを中心として構築する戦略に取り組み、他のNPEが追随すべき手本として貢献してきた。
21 カイル・バス、ヘイマン・キャピタル
カイル・バス氏がエリック・スパンゲンバーグ氏と共に特許審判部で複数のライフサイエンス企業を相手に行った30余の当事者系レビューの申請は、ハイテク業界が経験したような徹底した再審査活動の対象となる心配はないと考えていた同業界に衝撃を与えた。バス氏は、その訴訟で収益しようとしている事実を隠さないが、これは、製薬会社やバイオ企業の中に、本来付与されるべきではなかった特許に基づく製品に天文学的な値段を付けている会社があるからこそ可能なのだとも強く主張している。同氏のしていることは空売りに過ぎないという主張が広く流布しているが、これが話の全容とは考えにくく、詳しい分析によればはるかに高度な戦略であることが示唆されている。最近、特許審査部は、アコーダが所有する特許に関してバス氏が申請した当事者系レビュー2件の開始を拒否したが、重大なのは、その拒否が当事者の適格性や動機ではなく、狭義な技術的理由によるものだったことである。特許審判部がいずれ、こうした大きなテーマを扱わなければならなくなる時まで、バス氏や他の投資家たちは申請を続けるであろう。
20 マシュー・ヴェラ、アカシア・リサーチ
投資家たちはまだ確信に至っていないかもしれないが、より大きなライセンス取引の機動力となる高品質資産の大型ポートフォリオに焦点を当てるというアカシアの戦略シフトは成果を出し始めている。2013年8月にCEOを引き継いで以来、マシュー・ヴェラ氏は、このアプローチの変化を推進し、同社特許資産を自動車やエネルギーといった新たなセクターに拡大することに成功すると共に、特にアジアにおいて新たな市場を開発することによって、市場の最上位におけるアカシアの地位を固めることに貢献した。最近の裁判所の判決や法制改革案によってアメリカでの特許許諾条件が厳しくなるにつれて、最大手のNPE(特許不実施主体)各社は、市場における自社の地位を強化しようとするだろう。これは正にアカシアの思惑通りである。ヴェラ氏は、戦略シフトを監督する一方、リーダーとしてアカシアの地位の維持に安定した手腕を示してきた。他のNPEの同輩が抱えている問題を見ると、これは同氏が大いに誇れることである。
19 ブライアン・ヒンマン、フィリップス
これまで見たところ、ブライアン・ヒンマン氏は、ルード・ピータース氏引退後の2014年の初めに就任したフィリップスの知財最高責任者の職を満喫しているようである。ヒンマン氏の下、フィリップスIP &スタンダーズは、価値創造への新たなアプローチにおいて先駆者であり続ける一方、収入源を確立しつつ、同社が事業を行っている多様な技術分野の全域で営業する自由を確保していることも重要である。ヒンマン氏は、フィリップスの発光ダイオードのその他事業からの分社化に密接に係わり、4月に行われた中国のコンソーシアムへのルミレッズの株式80%の33億ドルでの売却においては知財資産が中心的な役割を果たした。常に特許市場について深く考え、アイントホーフェンに移る前も長年にわたってその市場の主要プレイヤーであったヒンマン氏は、米国や欧州の特許改革、標準必須特許のこれからの在り方や知的財産が研究開発の機動力となる新たな方法に至るまで、幅広い議論においてフィリップスの意見を代弁している。
18 サイモン・シガース、ARMホールディングス
イングランド東部のケンブリッジを拠点とするARMは、知的財産を中心に据える世界トップクラスの技術企業としては非常に珍しいイギリス企業の1社である。1990年にエイコーン・コンピュータからスピンアウトした同社は、世界で生産されるほぼ全てのスマートフォンの他、その他のタイプの多くのコンピューター・デバイスに見られる半導体の中で動くプロセッサーを設計している。サイモン・シガース氏本人は知財の専門家ではないが、その10億ドルを超す年間収益の多くを技術ライセンスから生み出している会社のCEOである同氏がマーケットメイカーであることに議論の余地はない。つまるところ、スマートフォンを製造するならARMと率直に話し合わなければならないのだ。デジタルテレビやモバイル・コンピューティングといった分野で営業している場合もその可能性が高い。そして、モノのインターネットが普遍的となるにつれて、この領域でもARMは要注目である。
17 ディアドリ・リーン、IPナビ
このところ、IPナビのウェブサイトは準備中ページとなっている。アクセスしても、あるのは「変更中/2016年秋始動」という謎めいた言葉のみである。他には何もなく、同社にその計画について直接問い合わせても、返ってくるのは丁寧な「ノーコメント」だけである。しかし、何が出現するにせよ、ディアドリ・リーン氏の特徴がそのあちこちにみられるだろう。NPEの中で最も訴訟好きな同社の前社長だったリーン氏は、エリック・スパンゲンバーク氏が退任した2015年初めにCEOとなった。彼女の現在の任務は、ただこの変容を監督するだけでなく、ライセンサーにとってアメリカの環境がかつてなく厳しくなっている時期に、IPナビが傑出した収益を生み出し続けるようにすることである。そのために、医療技術といった分野への焦点を強めて産業の多角化を行い、また外国の裁判所(ドイツが決まって好まれる)を使って交渉を推進させるであろう。IPナビが、自社の所有する特許収益化プラットフォームの使用を他のNPE、もしくは事業会社にさえ許諾する取引が増えても不思議ではない。
16 BJ ワトラス、アップル
世界最大の特許ポートフォリオを管理しているにも関わらず、BJワトラス氏は市場において他の者ほど目立つ人物ではない。これは自社の知財戦略についてできるだけ語らないというアップルの方針によるものである。しかし間違ってはならない。最高知財担当顧問であるワトラス氏は重要人物である。訴訟以外にアップルの知財関連事項の全てに責任を負う同氏は、ライセンス、M&A、方針およびポートフォリオといった分野を専門とする。そしてスマートフォン戦争が緩和してくるにつれて、こうした問題への焦点は強まるのみであろう。ワトラス氏は、2014年末のRPXへのロックスター特許の売却に密接に係わっており、まだ改革論議が続く中、定期的にワシントンDCに滞在している。また、アップルが2014年、通常同社とは関連性のない技術を含む特許ポートフォリオを多数を購入した興味深い取引の背後にも同氏の存在があった。これは、おそらく今後、製品範囲が拡大されるというシグナルかもしれない。このペースが今後12ヶ月間続かないと考える理由は全くない。
15 ケン・キング、IBM
製品やサービス事業においていくつかの一時的な問題があったにも関わらず、IBMは特許マーケットにおけるそのエリートの地位を保っている。2014年は、ビッグ・ブルー(IBMの愛称)が米国特許商標庁から付与された特許件数の連続最多企業となった22年目の年であった。知的財産担当ゼネラルマネージャーとして、ケン・キング氏は、この特許取得に対する数量アプローチがIBMの消費者向け商品とマッチするだけでなく、ライセンス供与や売上の点において利益を生むことを保証し、攻撃しようとする者を寄せ付けないようにすることに責任を負う。実際、これらの要素は表面的に見て思うよりも互いに密接に絡み合っている。2014年6月にピュア・ストレージがIBMから約150の特許を取得したのは、その防御能力故のことであった。さらに最近では、ビッグ・ブルーがその半導体製造事業をグローバルファウンドリーズに売却した取引において、特許が重大な役割を果たした。この取引により、前者は不採算部門を切り落とすことに成功した一方、後者はおそらく世界最大の半導体関連特許ポートフォリオを手に入れたことになる。
14 豊田秀夫、パナソニック
日本企業は従来、自社の知的財産の収益化には消極的であった。パナソニックはこの傾向に抵抗する数少ない企業の1つで、状況を好転させる施策を取り続けるにつれ、本国における知財価値創造の先駆者となりつつある。アライド・セキュリティ・トラストによると、パナソニックは2014年、世界のどの企業よりも多くの米国特許資産を売却しており、1月から6月の間だけでも10件の異なる取引において1,930の資産を売却した。同社はまた、自社ポートフォリオの収益化のためにNPE(特許不実施主体)との連携も目指しており、インベンタージー、シズベル、ウィーランなどと提携を結んでいる。また、IP Bridgeが管理する日本初の政府系特許ファンドに対する特許の譲渡と同ファンドへの投資も行っている。また、パナソニックが知財価値の創造を目指すのはライセンスや売却を通じてのみではない。3月には、モノのインターネット分野の開発を促進しようと、同分野の技術に関連する多数の自社特許やその他の知財資産に対するロイヤルティフリーのアクセスを約束した。2014年9月にパナソニックの子会社としてスピンアウトされたパナソニックIPマネジメントを率いる豊田氏とその知財チームにとっては、概して、多忙な一年であった。パナソニックグループ内の独立企業として、同社は独自の収益目標を持ち、知的財産は必ずしもコストがかかるだけではなく、正しい手法をとれば収益を上げることもできる事業資産であるとの考えをさらに印象付けている。
13 ウィリアム・メリット、インターデジタル
インターデジタルは、過去数年にわたり業績の多少の好転を経験したが、これはCEOビル・メリット氏による管理手腕に負うところが少なくない。2012年には、同社の買い手を探す試みが失敗に終わり、かなり見通しが暗い状態であった。メリット氏は方針を変え、インターデジタルは同社の総数2万件を超える特許ポートフォリオの収益化に一層努力するべきであると決意した。この戦略は、やがて成果を上げ始めた。2014年の間に、サムスン・エレクトロニクスとの重大な取引を含む数々の採算性の高いライセンス契約を締結すると、インターデジタルの株価はほぼ80%の上昇を見た。これを背景に、インターデジタルは、四半期配当を2倍にし、3億ドルの自社株買いに乗り出すことを発表するなど、ますます健全な経営状態を示している。2015年末に向けて、メリット氏とそのチームが直面する最大の課題は、標準必須特許の許諾を巡る不確実性であると思われる。インターデジタルは、米国電気電子技術者協会(IEEE)が2月に新方針を導入した後、同協会との関係を見直すことになると述べたが、メリット氏のIAMブログによれば、この新方針は、開発者がそのR&D投資の対価を得るのを「できるだけ困難に」するもので、「実施者に有利な状況となるだろう」という。
12 エリック・アンダーセン、マイクロソフト
ホラシオ・グティエレス氏の指揮の下、マイクロソフトの知財グループは、同社に年間数十億ドルを生み出すAndroidベースのライセンス・プログラムの構築に貢献した。2014年夏にグティエレスがマイクロソフト・クラウド事業へ異動してからは、エリック・アンダーセン氏は同グループを指揮している。Android取引はほぼ全てが締結済みであるため、同氏の主な職務の1つは収益の継続を確保することであるが、これには世界中のあらゆる地域において、特にライセンス契約やその他の知財取引に目を光らせる多くの競争法監督機関の活動について、不断の警戒が必要である。アンダーセン氏の今後のもう1つの大きな任務は、社外共同プロジェクトや多分野コミュニケーション、クラウド一般といった領域におけるマイクロソフトの優先権を反映する機能の構築であろう。同氏がこの職務に就き、現状確認を行った1年の間、同氏から多くのニュースは聞かれなかったが、2年目にはこの状況は疑いなく変わるだろう。
11 ラムジ・ハイダムス、ノキア・テクノロジーズ
ラムジ・ハイダムス氏のノキア・テクノロジー社長就任は、2014年の最重大事の1つであった。その役割は特許許諾よりずっと広いものであるが、これにより同氏は世界最大かつ最高品質のポートフォリオの1つを担うことになった。ドルビー・ラボラトリーズでの長いキャリアを経てきたハイダムス氏は、最先端技術に焦点を合わせた知財豊富な事業での職務に慣れている。この経験により、彼は最近再編されたノキアに最もふさわしい人材であり、テクノロジー部門での新たなバーチャルリアリティ製品の導入を含め、デジタルメディアのような新セクターにおけるイノベーションに重点を置く取り組みを後押しした。同氏の成功は、ノキア・テクノロジーズの技術革新や新製品発売のための取り組みの成果に大きく左右されるが、同様に重要なのは、特許ライセンス収益増大の監督という同氏の役割であろう。アルカテル・ルーセントとの合併という小事も抱えるが、この領域における成長潜在力は依然として大きい。[下記のインタビュー参照]
10 エドワード・ユング、インテレクチュアル・ベンチャーズ
2015年初め、ピーター・デトキン氏がインテレクチュアル・ベンチャーズ(IV)のバイス・チェアマンの職を辞して非常勤的な役割を担うようになった。それに伴い、共同設立者でチーフ・テクノロジー・オフィサーのエドワード・ユング氏が取引の決定で一段と重要な責任を負うようになり、表に出る機会がはるかに増えた。同氏は、生体医科学分野での経歴をもち、以前勤めていたマイクロソフトでは多数のR&Dおよび消費者向け製品プロジェクトの立上げに関与した。こうした経歴から、同社の取引面に独自の特色をもたらし、知財の収益化やベンチャー育成、スピンアウトが絡む取引に重点が置かれるようになった。こうしたアプローチは、IVにとってそれまであまり聞かれなかった肯定的な評判につながった。IVは引き続き特許の購入、主張、ライセンシングを手掛け、2014年に最新ファンドの資金調達を完了しているが、同氏の活動が一定レベルの戦略的リバランスに結びつく可能性がある。その結果、従来型の特許市場が著しく変革されるにつれ、おそらく多額の配当がもたらされるであろう。
9 スティーブ・モレンコ、クアルコム
このところクアルコムは苦しい時期にある。2月には、長期に及ぶ反トラスト捜査の結果として中国の国家発展改革委員会から課せられた9億7,500万ドルの罰金を受け入れ、同国におけるライセンシングのアプローチの変更に同意したことを発表した。次いで7月には、検討対象事業を分離する可能性を伴う戦略的見直しに着手したことを認めたが、それに伴い、チップ製造子会社から好採算の特許ライセンス事業が分離されることになる。スティーブ・モレンコップCEOは、この見直しの詳細を明らかにする中で15%の人員削減を実施しつつあることも公表した。クアルコムはまた、IEEE(米国電気電子技術者協会)が最近行った標準必須特許の方針変更による影響にも対処しなければならなかったが、これは同社本社にとって好ましいことではなかった。これらの後退や困難にもかかわらず、同社が依然として特許ライセンスの世界的なリーダーであり、その結果、モレンコップ氏が特許市場有数の重要人物であることに疑いの余地はない。上記の事業分割が進行した場合、一部のアナリストの推計によれば、独立する特許会社の時価総額は870億ドルにも達する可能性がある。
8 エラン・ザー、フォートレス・インテレクチュアル・プロパティ・ファイナンス・グループ
エラン・ザー氏は、レメルソン・メディカルのエデュケーション・アンド・リサーチ・ファウンデーションのライセンス・プログラムを運営した後、RPXの共同設立者となった。これに飽き足らず、2013年にはフォートレス・インベストメント・グループからその知財ファイナンス・グループの発展を監督する任務を任されて、再び旋風を巻き起こすことになった。それ以来、同氏とそのチームは、特許のみを担保とする融資を提案し、事業会社やNPEと数十件の取引を締結してきた。過去1年の注目すべき仕事としては、2014年11月にインベンタージーと合意した1,100万ドルのファイナンス、2月にマラソン・パテント・グループと締結した1,500万ドルの契約、そして同月、追加的な資本提供のために、2013年にネットリストと合意したファイナンスを改訂した契約などがある。ザー氏は、フォートレスが関係する企業と厳しい値引き交渉をすると言われる。しかし、同社の取引実績が示すように、その提案を受け入れた相手は多数に上る。交渉成立が続けば、この分野に参入する企業がさらに増えると期待される。[下記のインタビュー参照]
7 ローラ・カテラ、カテラ・リンチ・インテレクチュアル・プロパティ
男性が多数を占める知財市場の中で、ローラ・カテラ氏は、これまでトップまで上り詰めた数少ない女性の1人である。コダック時代にその評判を築き上げた同氏は、知的財産部門責任者から始めて、同社の破産時にはプレジデントの職にあった。その後、コダックの同僚ティム・リンチ氏と共に手を広げ、知財アドバイザリー会社カテラ・リンチを設立した。それと並行して、2014年8月にはアルカテル・ルーセントの知的財産担当エグゼクティブバイスプレジデントに任命された。CEOに直属する同氏は、当初同社の3万2,000件の特許の「価値を解放する」ことを託されたが、すぐにノキアとの合併提案をめぐる継続的な交渉に深く関与するようになった。この取引は知的財産が重要な役割を果たすものであった。以上に加え、テクニカラーが将来の知財戦略に関して大株主と対立していた時期に同社の取締役でもあった。現在も同社に在籍するカテラ氏は、今度は新たな事業計画Drive 2020策定の監督に貢献する。[下記のインタビュー参照]
6 ビル・コグリン、フォード・グローバル・テクノロジーズ
近年、自動車業界は特許市場で以前よりはるかに注目を集める業種になっているが、その先頭に立つのがフォードである。過去1年、この米国の象徴的な自動車会社は、RPXに参加した最初の(そして今のところ唯一の)自動車メーカーとなり、ライセンス・オン・トランスファー(譲渡時ライセンス付与)ネットワークの契約を結び、インテレクチュアル・ベンチャーズと先駆的なライセンス取引を締結した。さらに、巧妙な原告を相手とする当事者系レビューの請求への選好を強めており、フォードの特許戦略はますますハイテクセクターの最優秀戦略との類似度が増している。ビル・コグリン氏は、フォード・グローバル・テクノロジーズのプレジデント兼CEOとして、同社とその子会社の世界全体の知財問題すべてに責任を負っており、同社が重要プレーヤーとして登場するのに中心的役割を果たした。同氏はまた、自動車業界の知的財産に関して透明な市場を作り出すために発足した非営利組織オートハーベストの設立者でもある。
5 ジム・スキッペン、ウィーラン
ウィーランのプレジデント兼CEO、ジム・スキッペン氏にとってはかなり忙しい1年となった。このカナダのNPEは6月、7,000件の取得特許と出願特許のパッケージから構成されるキマンダのポートフォリオを3,300万ドルで購入することを発表した。この資産には多数の担保権が設定されているとはいえ、規模だけとっても、ウィーランにとって画期的な取引であった。同氏は、取引締結に引き続き、サムスンとのライセンス取引を直ちに公表した。そして同時に、同社を退職して、トップを務めた9年のキャリアに終止符を打つ意思を明らかにした。同氏が、ウィーランの基礎を強固にして去ったことは議論の余地がないであろう。同社の時価総額だけ見ても、在任期間中に3,000万カナダドル以下から3億カナダドル以上に拡大した。したがって、同社は、最も強固な資本基盤を有する最大のNPEとして市場で選好され、極めて有利な位置に立っている。スキッペン氏自身も、NPE業界有数の重要人物としての定評を確立し、市場が大きく混乱する時期に冷静な見解を示している。[下記のインタビュー参照]
4 ジョン・アムスター、RPX
2014年12月におけるR PXによるロックスターの特許の取得は、ノーテルが所有者であった前回の入札ほどマスコミの注目(あるいは入札への関心)を集めなかったかもしれないが、明らかに年間最重要特許取引と言えるものであった。この9億ドル規模の取引は多くの点で、ジョン・アムスターCEOが2008年にRPXを共同設立したときに導入したビジネスモデルの有効性を証明した。RPXによれば、同社はこの取引の一部として、グーグルやシスコを含む30社以上から成るシンジケートからライセンス料を受け取る。この防衛的特許アグリゲーターは約3,500万ドルの自己資金をこの取引に投じた。2013年のコダックの特許取得(RPXはインテレクチュアル・ベンチャーズと協働)と同様、ロックスターからの譲渡は、RPXが明らかに熟達している特許取引における主導的役割を演じられる企業はほとんどないことを立証した。だからこそ、アムスター氏は特許取引市場有数の影響力のあるプレーヤーとなっている。[下記のインタビューを参照]
3 カシム・アルファラヒ、エリクソン
毎年特許ライセンスのロイヤルティから10億ドル以上を生み出す企業はほとんどない。エリクソンはその1社であり、その達成を監督するのが最高知的財産責任者(CIPO)カシム・アルファラヒ氏の役目である。この利益(およびその成長)の重要性は、同氏がハンス・ヴェストベリCEOに直属することに表れている。同社は、3万5,000件の特許から成るポートフォリオ(その多くが移動体通信の最先端分野の標準必須特許)を保有する有力ハイテク企業である。そして、最近注目を集めたアップルやサムスンなどとのロイヤルティ料の紛争が示すように、アルファラヒ氏の下で同社は今後もそうあり続けることを決意している。エリクソンは、IEEE(米国電気電子技術者協会)が最近変更した異論の多い標準必須特許の方針を受けて、新制度の下ではライセンスのために特許を提供しないと述べた。同社は、インドとブラジルで裁判を利用して、協力を拒む中国の低コストスマートフォンメーカーの動きを阻止した。世界が5Gへと移行し始めるなか、アルファラヒ氏とエリクソンに非常に多忙な日々が続くことにほぼ疑いの余地はない。
2 エリック・スパンゲンバーグ、nXnパートナーズ
ヘッジファンド投資家のカイル・バス氏とIPナビの設立者エリック・スパンゲンバーグ氏が、製薬特許について申し立てた一連の当事者系レビューは、たちまち特許業界で今年の注目の的となった。バス氏が、この取り組みの対外的な顔として多くの金融記事に登場しているのに対し、スパンゲンバーグ氏は当事者系レビューの指針となる特許の知識を提供している。この請求によって、両者は製薬業界を震え上がらせただけでなく、政界における特許改革の論争の枠組みを変えた。レビュープロセスの変更は、両者の請求前はほとんど注目されなかった発想であったのに、今や新たな法案に影響する主要論点の1つとなった。そして、ハイテクセクターと製薬セクターには激しい分裂が生み出された。スパンゲンバーグ氏は、IPナビの日常的な運営からは身を引いたようであるが、依然として大株主の地位にある。同時に、他の多くの収益化プロジェクトに従事しているほか、nXnパートナーズのCEOとしてアナリティクスに基づく高度な助言を広範なクライアントに提供している。彼は万人から愛される存在ではないかもしれないが、知財市場に対する影響力はおそらくかつてないほど強い。
1 アレン・ロー、グーグル
2015年にグーグルの特許チームほど多忙をきわめたところはほとんどなかった。この巨大検索企業は上期にグーグル・パテントの新バージョンを発表し、広範な情報源から先行技術を検索することを一層容易にした。また、特許買取推進プログラムを開始し、知的財産を同社に売却する簡素化された方法を特許権者に提供した。さらに、グーグルの特許を無償でスタートアップ企業に譲渡することを目的とする特許スタータープログラムを発表した。これらのイニシアティブの立役者は特許・特許訴訟担当次席法務顧問のアレン・ロー氏である。同氏は、データアナリティクス分析などの分野の専門能力をさらに拡充して特許チームを再編すると同時に、外向きの視点を徹底した。特許業界におけるグーグルの役割については依然意見が割れている。しかし、同氏とそのチームは、低い特許品質や特許不実施主体(NPE)に特許資産を売却する事業会社など、特許制度の欠点と捉えた事項の是正に引き続き尽力している。相互に著しく異なるイニシアティブに取り組むチームを指揮する同氏は、ほとんど誰も及ばない市場支配力をさらに拡大している。[下記のインタビュー参照]
1. ホラシオ・グティエレス、マイクロソフト |
2. ピーター・デットキン、インテレクチュアル・ベンチャーズ |
3. スティーブ・モレンコップ、クアルコム |
4. ケン・キング、IBM |
5. エリック・スパンゲンバーグ、IPナビ |
6. カシム・アルファラヒ、エリクソン |
7. ヨアフ・ロス、ハドソン・ベイ・キャピタル |
8. ポール・メリン、ノキア |
9. ジョン・ベスキ、ロックスター |
10. ケント・ウォーカー、グーグル |
11. マシュー・ヴェラ、アカシア |
12. ジョン・アムスター、RPX |
13. ジェフリー・スミス、スターボード・バリュー |
14. ボリス・テクスラー、テクニカラー |
15. ジョン・リンドグレン、コンバーサント |
16. ナビーン・ナタラジ、エバーコア |
17. エラン・ザー、フォートレス・インベストメント・グループ |
18. ジェラルド・デブラジー、ラウンド・ロック |
19. アンドリュー・パールマン、ブリンゴ |
20. ダン・マッカーディ、アライド・セキュリティ・トラスト/パテントフリーダム |
21. ピーター・ホルデン、IPバリュー |
22. ノリーン・クロール、アップル |
23. アイラ・ブルンバーグ、レノボ |
24. ダグ・クロクサル、マラソン・パテント・グループ |
25. ウィリアム・メリット、インターデジタル |
26. ジム・スキッペン、ウィーラン |
27. 郭台銘、ホンハイ(鴻海) |
28. ジェラルド・ホルツマン、PMC |
29. ロン・エプスタイン、エピセンターIPグループ |
30. 御供俊元、ソニー |
31. リチャード・フィールズ、ジュリディカ・インベストメンツ |
32. ブライアン・ヒンマン、フィリップス |
33. 豊田秀夫、パナソニック |
34. ダナ・ヘイター、インテル |
35. バーナード・フローウィッター、IPコム |
36. イザール・アルモニー、チャールズ・リバー・ベンチャーズ |
37. アシュリー・ケラー、ゲルヒェン・ケラー・キャピタル |
38. ガイ・プルークス、トランスパシフィックIP |
39. クレイグ・トンプソン、アルカテル・ルーセント |
40. スン・ガン・カン、インテレクチュアル・ディスカバリー |
1. アレン・ロー、グーグル |
2. エリック・スパンゲンバーグ、nXn |
3. カシム・アルファラヒ、エリクソン |
4. ジョン・アムスター、RPX |
5. ジム・スキッペン、ウィーラン |
6. ビル・コグリン、フォード |
7. ローラ・カテラ、アルカテル・ルーセント |
8. エラン・ザー、フォートレス |
9. スティーブ・モレンコップ、クアルコム |
10. エドワード・ユング、インテレクチュアル・ベンチャーズ |
11. ラムジ・ハイダムス、ノキア |
12. エリック・アンダーセン、マイクロソフト |
13. ウィリアム・メリット、インターデジタル |
14. 豊田秀夫、パナソニック |
15. ケン・キング、IBM |
16. BJ・ワトラス、アップル |
17. ディアドレ・リーン、IPナビ |
18. サイモン・シガース、ARM |
19. ブライアン・ヒンマン、フィリップス |
20. マシュー・ヴェラ、アカシア |
21. カイル・バス、ヘイマン・キャピタル |
22. ダグ・クロクサル、マラソン |
23. 西本裕、NEC |
24. ガイ・プルークス、トランスパシフィックIP |
25. ジャン-シャルル・ウルカド、フランス・ブルベ |
26. ステファン・ルージョ、テクニカラー |
27. 御供俊元、ソニー |
28. アシュリー・ケラー、ゲルヒェン・ケラー・キャピタル |
29. ジョン・リンドグレン、コンバーサント |
30. ジュ・スプ・キム、LGエレクトロニクス |
31. ダナ・ヘイター、インテル |
32. 長澤健一、キヤノン |
33. アイラ・ブルンバーグ、レノボ |
34. ボリス・テクスラー、アンワイヤード・プラネット |
35. ピーター・ホルデン、ipCreate |
36. 周延鵬、ウィスプロ(世博)/ScienBiziP(賽恩倍吉)/MiiCs&パートナーズ |
37. ジョー・チェルネスキー、クデルスキー・グループ |
38. クワン・ジュン・キム、インテレクチュアル・ディスカバリー |
39. ジェラルド・ホルツマン、PMC |
40. ロン・エプスタイン、エピセンターIPグループ |