2015年度特許 仲介市場 - 急落か単なる踊り場か

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売却希望価格は低下しているものの、仲介ビジネスは、特に一部の選りすぐりのプレーヤーにとっては見た目ほど低迷していない。

我々が4年前にこのシリーズ記事(第57号の「特許仲介市場に注目(Turning thespotlight on the brokered patentmarket)」、第63号の「2013年度特許仲介市場(The brokered patent market in 2013)」、第69号の「2014年度特許仲介市場(The brokeredpatent market in 2014)」を参照)の執筆を始めたのは、透明性の向上が特許市場全体に恩恵をもたらすと判断したからだった。価格設定、技術分野、取引条件、デューデリジェンス・プロセスおよび購入プロセスに関連する他の要素に関する、データに基づく正しい情報を提供してはじめて、企業は特許の購入にそれほど尻込みせず、曖昧で把握しづらい同市場への参加に乗り出せるようになる。我々は、これまでに収集した情報を使用して特許市場の成長に貢献したいと考えている。

この透明性には、好材料と悪材料を共に、偏りなく提供することが必要となる。最近、特許権者にとって厳しい展開がメディアの大きな注目を集めた。最も有名なのはアリス・コーポレーション対CLSバンク・インターナショナル事件だが、それ以外にも5件の最高裁判所の全員一致(9:0)判決がある。また、米国最高裁は、標準必須特許について損害賠償法を割当方式の考え方へ移行させようとしており(マイクロソフト対モトローラ事件およびエリクソン対Dリンク事件参照)、米国の特許権者は圧力を感じている。同様に、知財の収益化に注力する企業(例えば、アカシア、ペンドレル、インベンタジー)の株価が総じて下落し、インテレクチュアル・ベンチャーズ(IV)の購入は実績を大幅に下回っている。フォートレス・インベストメント・グループを顕著な例外として、米国では収益化の資金源も枯渇しつつある。こうした状況は特許市場の将来にとって凶兆と見えるだろうが、我々のデータは悪材料ばかりではないことを示している。

この記事で取り上げる2015年度(2014年6月1日から2015年5月31日まで)特許仲介市場は依然として極めて堅調である。売りに出されたパッケージは購入機会のうち11億ドルを占め、実際の売買取引額は2億3,300万ドルだったと推定される。提示されたパッケージ件数は566件と、基本的に横ばいだったものの、パッケージに含まれる米国発行の特許および提示された総資産は増加している。また、パッケージの売却価格は2014年度の市場価格を上回ったと思われる。さらに、ブローカーは25万ドル以下のパッケージの売却に成功しているようだが、これは市場の効率性の向上を示すものである。買手は興味深い新たな購入モデルを試みてもいる。例えば、今年初め、グーグルは特許の逆オークションを実施し、各々3,000ドルから25万ドルまでの価格で多数の特許を購入した。アリス判決の影響を受ける技術分野のパッケージでさえ、依然市場価格を上回っている。ビジネスプロセスのパッケージは下落したものの、ソフトウェアのパッケージは今も市場価格を上回る。全体として市場の取引総額は減少したが、決して急落と言えるものではない。

昨年度見られた傾向は引き続き明瞭に現れている。特許不実施主体(NPE)と企業は購入を続けている。アグリゲーターはより多くの案件を収集している。不利な判例にもかかわらず、ソフトウェアは依然として堅調である。2015年度の市場について詳しく述べる前に、過去数年の特許市場を概観しておくことが有益であろう。

表1.2015市場年度に5件以上のパッケージを市場に提示したブローカー
アダプトIPベンチャーズ
ブラック・ストーンIP
セリネット
ドレイクス・ベイ・カンパニー
ダイナミックIPディールズ
グローバル IP ロー・グループ
ハントン・アンド・ウィリアムズ
ICAP
アイスバーグ
インテレクチュアル・アセット・グループ(IAG)
インテレクチュアル・プロパティ・トレード
IPオファリングズ
IPパースペクティブズ
ipキャピタル・ライセンシング・カンパニー
IPハーバー
IPインベストメンツ・グループ
IPバリュー
ミューニック・イノベーション・グループ
N&Gコンサルティング
パテント・マネタイゼーション
クイン・パシフィック
レッド・チョーク・グループ
睿智創業有限公司
ソリンIPグループ
タンジブルIP
テクインサイツ(セミコンダクター・インサイツ)
タイナックス
図1.売却希望価格の累積額(単位:百万ドル) - 仲介市場と非公開市場

市場規模

今年度は特許市場の規模を新しい方法で捉えることにした。すなわち、非公開取引と公開取引の両方を検討し、その総額を算定する。非公開取引についての知識は、当社が関与した取引に限定されることに注意していただきたい。ところで、市場の取引額は極めて多額で多様である。

さらに、売却希望価格に基づく追跡対象売却の累計額は17億ドルと、売買は依然として堅調である。

当社のデータベースは、64,105件の特許資産(うち米国発行の特許は37,099件)の状況を追跡しており、その売却希望価格は69億ドル、売買価格はほぼ20億ドルにのぼる。当該資産は2,029件のパッケージ(279件が非公開、1,750件が仲介)に含まれている。各パッケージは、18の一般カテゴリー、106の下位カテゴリーから成る当社の技術分類を使用して、いずれか1つのカテゴリーに分類される。また、売却希望価格、買値提示日およびクライアントがデューデリジェンスで具体的に何を決定するかも追跡している。

以下では、典型的な購入プロセスの流れを示した後、市場の全体的規模を説明する。そこでは、調達、売却希望価格、デューデリジェンスの手順、購入のクロージングおよび訴訟を取り上げ、最後に市場規模の推定を述べる。

特許ブローカー

昨年度以前と同様、分析では特許仲介市場に焦点を合わせる。それは、この市場がすべての買手に開放されているからである。当社は、多数のブローカーと協働しているほか、資産売却を支援してくれる適切なブローカーを求める特許権者をサポートしている。ブローカーは、以下のような多様で有用なスキルを提供する。

  • 特許資産を選別する最初のフィルターの提供
  • 実現性のある売手の選別、および売手がある程度確実な売却の意思を有するという可能性の提示
  • 特許のスクリーニングおよび重要な特許とクレームの特定
  • 価格ガイダンスの提供
  • 売買条件および日程表に関するガイダンスの売手への提供
  • デューデリジェンス、買値提示および売却プロセスの確定
  • より多くの特許の使用証拠(EOU)の確立
  • 価格設定に関するより断固たる交渉の提供
図2.取引が成立した売却希望価格の累積額(単位:百万ドル) - 仲介市場と非公開市場
図3.2014暦年におけるブローカーの提示パッケージ数別成約率
表2.特許仲介市場の内訳
  2015市場年度 2014市場年度 増加率
パッケージ 566 556 2%
米国発行 6,127 4,721 43%
資産合計 8,846 7,021 26%

5件以上のパッケージを保有するブローカー

ブローカー数は60社とほぼ一定水準で推移している(昨年度は58社)。ブローカーが2社増え、パッケージの総数が減少したため、ブローカーが提示する平均パッケージ数は若干減少した。引き続き一部のブローカーがパッケージの大半を市場に提供している。すなわち、10件以上のパッケージを市場に提供するブローカーが15社あり、5件以上のパッケージを市場に提供するブローカーがパッケージの80%を占める。上位4位までのブローカーが提示パッケージの34%を占めている(昨年度は33%)。昨年度以前と同様、ほとんどのブローカーは特定の技術分野に特化していない。例外として、半導体のリバースエンジニアリング会社と提携している例、および多数の技術分野をまたぐハードウェアに比較的集中している例が少数ある。

図3が示すように、特に成績の良いブローカー(緑色の円内)、特に成績の悪いブローカー(赤色の円内)がそれぞれいくつか存在する中で、比較的多く
のパッケージを市場に提供するブローカーの成約率が高かったわけではない。一部のブローカーは明らかに悪戦苦闘している。当然ながら、最大数の案件を市場に提供するブローカーの成約率は業界平均に近い。この分析では、売買の成立と計上に要する時間を十分見込むため、2014暦年を使用した。パッケージ数は566件(昨年度は556件)で、特許仲介市場は拡大したとも縮小したとも言えない(表2参照)。ディールフローを他の大手企業や防衛的アグリゲーターと比較した結果によれば、当社は、同数以上の仲介パッケージを受け取っているようであり、当社の数値が市場を反映している点に確信を持っている。大きく変化したのは、1パッケージ当たりの米国発行資産の件数であり、パッケージ数がほぼ変わらないのに当該件数は43%増加した。ブローカーはこれまでと同様、販売の確率を高めるために米国の資産に重点を置いていると考えられる。

図4.技術カテゴリー別のパッケージ数の分布

 技術分野の分布

全体として、市場は、引き続き広範かつ多様な技術分野のパッケージを提示している。多様性が拡大し、パッケージ数が堅調な水準にあるため、ほとんどのハイテク分野の資産が入手可能である。当社は、パッケージを受け取ると、その資料を利用して当社の技術分野の分類に従ってパッケージを区分している。この分類は、18の一般的な技術カテゴリーと106の下位カテゴリーという2段階で構成されている。図4から分かるように、一般カテゴリーの分布はソフトウェアやクラウドコンピューティングに著しく偏っている。意外なのは、アリス事件におけるソフトウェア関連技術に関する判決および関連する特許審判部(PTAB)の決定にもかかわらず、ソフトウェア関連パッケージの件数が減少していないことである。ステート・ストリートバンク事件およびアリス判決やこの主題に関する他の判決の影響を最も受けやすいビジネスプロセスに関連する特許は、明らかに判例がそれらの特許を危険にさらしているにもかかわらず、依然として高い比率を示している。成約率に対するアリス判決の影響については後述する。

パッケージの規模

昨年度はパッケージの小型化の傾向が見られたが、今年度の分布にも同じことが言える(図5)。ただし、単一特許のパッケージの急減(ほぼ30%減)はその例外である。この減少は、1パッケージ当たり資産数の平均が増加した(12.63件から15.63件へ)一因となっている。1パッケージ当たり資産数の増加に寄与したそれ以外の要因は、25件から199件までの資産で構成されるパッケージの増加である。

図5.パッケージ規模の頻度(資産全体)
図6.月別の1資産当たり平均売却希望価格(最上位5%と最下位5%を除外)
図7.パッケージの売却希望価格の分布 - 最上位5%と最下位5%を除外
表3.2015市場年度における売却希望価格
売却希望価格 資産1件当たり 米国発行の特許1件当たり
平均 $189,880 $276,680
最低 $16,950 $30,000
最高 $925,000 $1,000,000
標準偏差 $183,180 $249,290
データ数 430 423

価格設定

特許の価格とは何か。適正価格とは何か。どんな場合に良い取引といえるか。これらは、我々が価格分析に際して問い続けている問題である。この分析は、顧客の特許売買を支援するためだけでなく、評価に基づく市場価格を提供するためにも利用される。平均的な特許売却の市場価格がわかれば、特定の特許の価格を決定するモデルを構築することができる。重要なのは、この場合、評価のために帰属ロイヤルティ料(Imputed royalty rate)を算定せずにすむことである。

2015年度の売却希望価格は引き続き下落しており、資産1件当たりでは57,000ドル、米国発行の特許1件当たりでは60,000ドル低下した。これは2014年度比20%の下落に相当する。方法の変更に伴い、昨年度のレポートの表と直接比較すると下落幅がさらに23,000ドル広がる。表3は、現在の方法を使用して昨年度の数値と比較した結果を示している。

2015年度を通して、市場が急速に下落しているという声が絶えず聞かれた。そのため、1資産当たりの売却希望価格の算定に際して、年度内の変化を見逃したかもしれないという懸念を感じた。そこでさらに分析したが、そうではないことが見いだされた(図6)。パッケージの規模の変動により、月次の市場規模は目に見えて縮小していたものの、資産の売却希望価格は下落していなかった。1資産当たりの平均売却希望価格は、この市場年度を通じてほぼ同じ水準で推移していた。

図7は売却希望価格の分布を示したものだが、パッケージの価格は引き続き25万ドルから200万ドルの範囲に集中している(パッケージ全体の63%がこの範囲に入る)。この水準であれば、ブローカーは堅実に手数料を稼ぐと同時に、常に買手の予算内で購入できるため、どの取引も予算全体を逼迫させることがない。

今年度は、25万ドル未満の価格帯を別個に追跡することも開始した。この価格帯は、ブローカーにとって比較的利益率が低いという点で興味深い。20%の手数料で、最大5万ドルの手数料が取得可能である。パッケージの成約率が全体的に低い(詳しくは後述)ことを考慮に入れると、ブローカーが、パッケージを市場に出すときにコスト削減の方法を見つけ出そうとすることは明かである。例えば、価格が25万ドル未満のパッケージでは使用証拠(EOU)があるのは稀である。クライアントへの助言として、この種のパッケージを購入するときは、その特許に関して重要な計画がない限り、デューデリジェンスや特許売買契約の交渉に費やす資源を縮小することを勧める。

価格ガイダンス付きパッケージ

パッケージの84%が価格ガイダンスを伴っていたが、これは昨年度(83%)とほぼ全く同じ比率である。価格ガイダンスのないパッケージは、これまでと同様、不利な結果に終わっており、成約率が市場を下回る。ガイダンス付きのパッケージの比率は変わらなかったものの、示されたガイダンスの正確度は低下した。2014年度の市場では40%が正確な数字を示したのに対し、2015年度の市場では26%にとどまった。価格が下落したため、ブローカーが昨年度ほど価格に確信を持てなかった可能性がある。しかしながら、明確な価格ガイダンスは明らかに買手の意思決定の助けとなる。ガイダンスがない場合、単に売手が市場の水準を理解していないというシグナルが送られているというだけの理由で意思決定に至らない(売買が成立しない)リスクが高くなる。明確な価格設定がなされていれば、売手が市場をある程度理解しており、取引が成立する可能性が高いというシグナルが送られることとなる。さらに、目標価格が示されれば、買手は適切な水準のデューデリジェンスを開始しやすくなる。

パッケージの規模別の資産1件当たり価格

パッケージに含まれる資産数により価格設定がどのように変わるかについても検討した(図表8、9)。当然ながら、平均すると資産1件当たり価格はパッケージの規模が大きくなるにつれ大幅に低下する(ほぼ40万ドルから5万ドル強へ)。行動方針としては、時間をかけて主要特許を見つけ出して絞り込みを行い、それらをより小規模な取引としてまとめることが最善である可能性が高い。しかしながら、大規模なポートフォリオを検討する際には別の見方もあり得る。時には、絞り込んだ主要特許がごく少数しかないこともある。この主要特許は高額になるとしても、それを取り出してしまうと、パッケージには多数の画一的な資産が残り、売却できない恐れがある。こうした場合は、価格が低下しても資産を大きくまとめて売却することでリターンが向上する可能性がある。これらの計算は難しく、市場の最新の知識とその特定のポートフォリオに関する深い知識が必要になることがある。

図8.パッケージの規模別の資産1件当たりの売却希望価格
図9.パッケージの売却希望価格別の資産1件当たりの売却希望価格

総じて、資産1件当たりの価格は、売却希望価格が25万ドルから1,000万ドルの範囲では比較的一定であり、最低は169,000ドル、最高は227,000ドルである(図9)。25万ドル未満のパッケージでは資産1件当たりの価格が低下し、特許が高リスクまたは低価値であることが示唆される(無侵害、遅い優先日、失効寸前の特許)。その対極にある1,000万ドル超のパッケージの価格は、市場平均を大幅に上回っている。これは、質の高い資産で構成される案件、またはその資産1件当たりの価格で売買が成立する可能性が非常に低い案件に相当する。

ブローカーの売却希望価格とEOUの影響

今年度は、使用証拠(EOU)付きのパッケージは約6万ドル、率にして34%の価格の上乗せが見られた(表4)。図10と図11は、EOUによる価格の上乗せを示しており、EOUが提供された場合、資産1件当たりの売却希望価格が明らかに高くなる。EOU付きのパッケージの場合、2014年度から2015年度にかけての売却希望価格の下落は4%に留まったが、パッケージ全体の下落は20%であった。EOUが提供された場合のパッケージの価格上昇分は2013年度の市場では27%だったのに対し、2014年度の市場では5%以下だった。EOU付きパッケージの比率を見ると、昨年度の47%から37%へと低下しているが、価格の上乗せがあることを考慮すると意外な結果である。ブローカーは、EOUを含むパッケージの提供を準備するコストの一部に補填するため、引き続き売手に前払手数料を要求している。

表4.EOU付きパッケージの資産1件当たりの売却希望価格
EOUパッケージと一般市場の格差(%) 34%
平均 $255,0000
最低 $22,730
最高 $1,000,000
標準偏差 $233,120
データ数 167
図10.パッケージの売却希望価格の分布 -EOU付きの場合
図11.パッケージの売却希望価格の分布 -EOUがない場合

技術カテゴリー別売却希望価格

5件以上のパッケージを市場に提示した技術分野すべてについて、市場のデータ全体の最上位5%と最下位5%を除外した上で、技術カテゴリー別に米国発行の特許1件当たりの平均売却希望価格を算定した(図12)。これまでと同様、技術カテゴリーは売却希望価格に対する強力な影響要因であり、資産1件当たりの売却希望価格が最も高いカテゴリーであるソーシャルネットワークのパッケージは、部品のカテゴリーに比べ、資産1件当たりの売却希望価格が322%高かった。一般的に言って、インターネットコンピューティングに関連する技術分野は、アリス判決の影響にもかかわらず、依然として売却希望価格が最も高い。

図12.技術カテゴリー別の資産1件当たりの平均売却希望価格

アリス判決による技術分野への影響

アリス判決およびPTABの決定に影響される技術分野のパッケージの提示率は、判決後も変化していないと思われる(図13、図14)。図13では、アリス判決に影響されるパッケージと影響されないパッケージの提示率を比較しているが、両者は同じ全体的傾向をたどっている。提示率は変化していないのに対し、成約率は低下している(後述)。しかし、予想されたほどの低下ではない。

図13.アリス判決の影響有無別パッケージの四半期当たり提示率(移動平均)
図14.アリス判決に影響されるパッケージが提示全体に占める比率

主なデューデリジェンスのデータ

特許購入の可能性を検討する際、特許に関して「低品質」という表現を使用するのをやめるのが望ましいと思われる。市場にはがらくた、低品質または劣った特許があるという言い方をよく耳にする。確かに、客観的に見て、劣悪であるという見方に同意できる特許が一部には存在する。しかしながら、単に品質基準(例えば、権利行使可能性)の試験はコストが高すぎるという理由により、大部分の特許はそうした試験が行われていない。客観的な品質基準が試験されたことはないのである。

効果的と言われる特許購入プログラムは、自身のビジネスニーズに適合する特許発見のコスト削減を重要な目的としている。ビジネス基準を満たさないという理由で(他のデューデリジェンスの実施前に)特許を除外してしまえば、自身のニーズに適合する特許を発見する上で、それは最も費用効率の高い方法となる。しかしながら、このことは特許の品質がめったに検討されないことを意味する。あるパッケージ(例えば、ウェアラブル)がクライアントの興味を引く可能性があると捉えられた場合、次のステップは、記載技術が本当にクライアントの関心を引くものかどうかを確認することである。問題は、「この特許が他の点では完璧だと仮定した場合、果たしてそれを購入するか」という点となるであろう。多くの場合(72%)、答えは「ノー」である。それは単に、当該特許がこの特定のクライアントにとって目的適合性がない可能性があるためである(例えば、そのウェアラブルは腕時計には応用できるが、フィットネストラッカーには応用できないという可能性)。技術的なフィルターを通過した残る28%のうち(表5)、43%は応用される市場が小さすぎるために(例えば、不十分な損害賠償、潜在的な侵害者のグループの不適切性)見送られた。それ以外の57%(全体の16%)は資産の詳細な試験が実施された。

クライアントが懸念する点のいくつかは、パッケージが除外される理由にはほとんどならない。例えば、買値提示期日が近すぎる場合、ブローカーは単にそれを先延ばしすれば解決できる。またブローカーは、たいていの場合、パッケージの妥当な価格を認識しているため、仲介パッケージは妥当な価格で設定される傾向にあり、クライアントも購入を決定するまでに、その資産に支払うべき妥当な価格を十分に把握しているため、価格が見送りの理由になることも稀である。

表5.最初に技術的な適合性が確認された後、パッケージを見送る理由
見送りの理由 2015市場
年度の比率調整
2014市場
年度の比率調整後
実際の市場の採用が少なすぎる 43% 37%
使用の証拠のマッピング
が不適切
22% 16%
価格 14% 16%
先行技術が未解決 7% 13%
資産の残存耐用年数が短すぎる 9% 10%
入札までの期間が短すぎる 1% 6%
審査手続に関する懸念が未解消 1% 1%
クライアント固有の購入基準 1% 2%

売買

今年度の成約率は昨年度をわずかに上回ったと思われる。確かな証拠もなく、市場が急落したと言われることがあるようだが、データはそれを反証している。

売買データに関しては異なるデータセットに切り替える必要がある。このデータセットは、1,582件のパッケージで構成され、うち352件が売却と認定されたもので、暦年を基準としている。このサンプルセットは、前年度までのレポートで分析したパッケージを含んでおり、2009年に提示されたパッケージにまで遡る。売却を認定する方法として、米国特許商標庁(USPTO)の譲渡データベースを使用した(パッケージ内の1件以上の特許が売買・譲渡されている場合、当該パッケージが売却されたと取り扱う)。また、使用するデータを記録された譲渡日から実際の契約締結日へと変更することにより、売買の分析を改善した。このデータは2015年5月31日までに受理されたパッケージ、および2015年8月20日までにUSPTOに登録された売買に限定されている。

引き続き売却プロセスが長期化しており、全体的な結果は昨年と類似している。しかしながら、成約率および売却までの期間は安定化し、幾分の改善さえ見られる。

市場は引き続き堅調なものの厳しいと言える。2014年の成約率は現在約18.4%で、2013年の14.9%を大幅に上回る(市場の比較可能な時期で見た場合)。2013年全体の成約率は、長期売却の更なる減少(提示時点から18カ月以上経過後の売却が減少)を反映して、予測結果を下回った(それぞれ27%と32%)。2009年の成約率51%が依然として最高水準となっており、市場はこの水準を回復する兆候を見せていない。この成約率は必然的に実際の市場に遅行する(最大18カ月)ことに注意されたい。

昨年度のレポートで説明したように、パッケージを売却する現実的な可能性のある提示後の期間は短期化が続いている。2013年に提示されたパッケージの場合、提示後から3年目の年に売却できた比率は0.5%にすぎない。これは、2012年(1.5%)および2009年(12.3%)を大幅に下回る。2014年の場合、提示後1年を超えるパッケージの成約率は同様に低いと予想される。買手は、正式な評価プロセスを確立しており、それにより迅速な決定を下していると考えられる。

図15に示すように、2014暦年に提示されたパッケージの予想成約率を算定した。現在までのところ、2014年に提示されたパッケージは、2013年よりも高い比率で売却されているため、2013年の1年目における実際の成約率を上回る水準に設定した。その後成約率が低下するペースは、2011年から2013年に提示されたパッケージの成約率を使って推定した。

図15.パッケージ提示後の年数別累積成約率

パッケージの規模別の成約率

提示されたパッケージの規模に基づく成約率を分析した結果、資産数が6件から10件までのパッケージが最大であることが見いだされた(表6)。一見すると、資産数の範囲が大きいパッケージの成約率のほうが高く見えるが、これは売却の認定方法に原因があると考えられる。パッケージ内のいずれかの資産が譲渡されればパッケージが売却されたとみなしているため、パッケージが大きければ、それだけ売却が認定されやすくなる。大規模なパッケージにおける買手の選り好み買いは考慮に入れていない。しかし、こうした方法を使用していることからすれば、資産数が51件から100件の範囲ではもっと高い成約率が予想されるであろう。実際、資産数が101件から200件の範囲(表示外)では、買手の選り好み買いのために成約率が高くなっている。

表6.2014年に提示されたパッケージの規模別成約率
資産数 2014年に提示されたパッケージの成約率
1 17%
2-5 17%
6-10 25%
11-25 17
26-50 23%
51-100 18%

受領日別の成約率

また、買手がどの程度の期間内に買値を提示する必要があるかを推定するために、パッケージの売却までの期間を分析した。魅力のないパッケージでは買値の提示を急ぐプレッシャーはかからないものの、買手がどの時点で決定を下す必要があるかを算定するために、実際に売却されたパッケージに焦点を合わせた。図16は、売却の80%がパッケージの受領日から11カ月以内に生じたことを示している。パッケージのほぼ3分の1が最初の4カ月以内に売却されていることに示されるように、一部の買手は極めて迅速に動くことができる。購入では迅速な意思決定が強みとなる。

EOU提供の有無による成約率

確かな証拠もなく、ブローカーのEOUは役に立たないと買手が言うのを耳にするが、データはこれを反証している。上記の価格設定のセクションで説明したように、ブローカーがEOUを提供すれば、売却希望価格が25-34%上昇する。しかし、EOUがもたらす利点はこれに限らない。売却が実現する確率も高まるのである。EOU付きのパッケージは、2014年度または2015年度に提示されたパッケージの売却の半分以上(51%)を占めていた。このデータセットで提供されたEOUの比率が36%にすぎないことを考慮すると、これは明らかな利点と言える。これらの数値を文脈と関連付けて言えば、EOU付きのパッケージは売却できる可能性が平均より41%高く、一方、EOUのないパッケージは23%低い。

USPTOの譲渡

追跡対象の売却全体を通じて、売却年度にかかわらず、登録日と契約締結日の間の平均期間は54日であった。我々の経験によれば、3カ月以上の遅れは必要以上に長すぎると思われる。図17は、譲渡から登録までの月数を示している。これによれば、売却の80%が3カ月以内に登録されている。

図16.受領日からの経過月数と累積成約率(2014年度の提示)
図17.契約締結日から譲渡の登録までの経過月数(売却全体)

アリス判決による売却への影響

最高裁判所は2014年6月19日にアリス事件の判決を下し、その後、PTAB、連邦巡回区控訴裁判所および地方裁判所の多くの関連事案がそれに従った。我々は通常、分析前にパッケージの売却までの期間が十分長く取れるように、暦年に基づいて売買を検討する。しかしながら、アリス判決が2015市場年度の開始時期と一致するため、早めではあるがこの期間を分析対象とすることにした(図18)。確実なことを知るには時期尚早ながら、興味深い趨勢がうかがわれる。

図18.アリス判決に影響される成約率と市場全体の成約率の差異

技術分野の106の各下位カテゴリーをアリス判決に「影響される」か「影響されないか」で区分し、それぞれに分類した。アリス判決に影響されるとみなされたのは、大半のソフトウェア、ビジネスプロセス、ソーシャルネットワーク、広告を含む31の下位カテゴリーである。次に、2013、2014および2015市場年度(前年の6月1日から当年の5月31日まで)について、アリス判決に影響される分野の成約率と各年度の成約率全体とを比較した。判決以前、アリス判決に影響されるパッケージの成約率が相場を上回っていたことは意外ではない。2013市場年度は15%、2014市場年度は20%上回った。しかしながら、意外なのは、2015市場年度も10%と、依然としてかなり相場を上回ったことである。成約率は2014年度ほど良好ではないものの、この早期のデータは依然として平均以上の成約率を示しており、アリス判決で市場が壊滅状態にならなかったことを実証している。

さらに、ビジネスプロセスと金融の特許についても相対的な成約率を分析した。この中には、ビジネスプロセス(具体的には、電子商取引、決済および金融商品取引)および決済に関連する最小限のハードウェアなど、7つの下位カテゴリーが含まれる(図19)。これらの下位カテゴリーは、2014市場年度には成約率全体を40%上回る成約率で売却されたのに対し、2015市場年度には45%下回る成約率となった。ビジネスプロセスのパッケージはアリス判決から著しい影響を受け、その下落が大幅であることから、売却の減少の多くはこれにより説明されると思われる。アリス判決が市場に与えた影響の多くはビジネス用ソフトウェアに限定され、ソフトウェア技術全体に及ぶほど大きくはなかったと言えるであろう。

図19.フィンテックの成約率と市場全体の成約率の差異
図20.売却年別の売手タイプの分布

売手

次に、誰が特許を売却しているかについて述べる(図20)。予想通り、2014年1月1日から2015年8月20日(本データのために譲渡を確認した最終日)までになされた売却の大半は事業会社によるもので、62%から71%に上昇した。これに対し、個人発明家による売却は21%から8%へと大幅に低下した。NPEの売却は11%から16%に上昇した。NPEは購入活動も拡大しており、結果として、NPEは資産を売却する以上に特許を購入しているように思われる。これらの数値から防衛的アグリゲーターの売却が抜け落ちている可能性があり、その多くは非公開で実行されていると考えられる。

13の事業会社と2つのNPEを併せた15の事業体が、2014年1月1日から2015年8月20日までに2件以上のパッケージを売却した。この売却は、パッケージの売却の23%、資産の売却の41%、米国発行の特許の売却の46%を占めた。IV(インテレクチュアル・ベンチャーズ)に関する記事(「IVの特許ポートフォリオの構成(What’s inside IV’s patent portfolio?)」、第66号)で説明したように、企業はクロスライセンス(あるいは移転時ライセンス)の導入により、継続的な売手から発生する特許へのエクスポージャーを大幅に低減することができる。反復的売手リストはいかなるクロスライセンス戦略においても注視するべき存在である(表7)。

表7.反復的売手(2014年度または2015年度における売却)
アルカテル・ルーセント
AT&T
BAEシステムズ
ハリス
インベンテック(英業達)
NEC
NXPセミコンダクターズ
パナソニック
ペンドレル
ラムバス
ロックスター
シーメンス
スパンション
ビデオマイニング
ゼロックス/PARC
方法の変更

我々は、データを比較する場合、過去の方法を堅持するために最善を尽くす。以前データベースを構築したことがある人なら、一組の問題を解決できるとすぐに、全く新たな一組の問題が提起できるようになり、必要性は変化することを経験したであろう。

また、我々は市場の変化にも対応する(実際、価格が25万ドル未満の取引に対応する新たな価格帯や、新規の技術カテゴリーを追加した)。さらに、技術の改善も行い(当社のプログラマーは常に忙しい)、今年度は譲渡の登録日ではなく実際の契約締結日を使用できるようになった(一部の企業は譲渡の登録までに長期間を要する)。

これらの変化が重なって、前年度との比較がより困難になることがある。我々は、変化が大幅と判断した場合、対応する項目の比較ができるように、新しい方法に基づく昨年度のデータを提供する。

買手

買手を分析するため、売手の場合と同じく2014年1月1日から2015年8月20日までの期間に着目した。NPEの購入は38%から42%に上昇した。同様に、防衛的アグリゲーターの購入も13%から21%へと上昇した(図21)。それに対応して、事業会社の購入は46%から34%へと12ポイント低下した。昨年のレポートで予測した通り、NPEの活動の拡大は、IVがそのインベンション・インベストメント・ファンド3のために購入を再開したことに起因する可能性が高い。

同期間中、108の買手が206件のパッケージを購入し、15の買手が複数のパッケージを購入した。反復的買手は、売却されたパッケージの54%を購入し、上位3位までの買手、すなわち、IV、RPXコーポレーション、アライド・セキュリティー・トラストが36%を購入した(表8)。IVは具体的には、単独でパッケージの19%、資産の25%、米国発行の特許の25%を購入した。

図21.売却年別の買手タイプの分布
表8.反復的買手(2014年度または2015年度における購入)
9051147カナダ・インク
アライド・セキュリティー・トラスト
アップル
ブロードコム
ドーモ
インテレクチュアル・ディスカバリー
インテレクチュアル・ベンチャーズ
ナップ・インベストメント
コーニンクレッカ・フィリップス
オープン・インベンション・ネットワーク
楽天
RPX
サムスン・エレクトロニクス
サウンド・ビュー・イノベーションズ

訴訟および当事者系レビュー

我々がブローカーからパッケージを受領した後、資産がどのように使用されているかを見いだすために、データベースに含まれる資産リスト付きのパッケージすべてを分析した。我々がブローカーからパッケージを受領した後、訴訟が提起された資産を含むパッケージは、売却・非売却全体では2.1%にすぎなかった。売却パッケージのうち、訴訟が提起された資産を含むものの比率は3.5%と、65%高かった。非売却パッケージのうち、その受領後に訴訟のあったものの比率は1.7%と、20%低かった。

また、当事者系レビューの比率も分析した。追跡対象のパッケージ全体のうち、我々がパッケージを受領した後に当事者系レビューの請求がなされたものは、売却・非売却全体で7件にすぎず、当事者系レビューの比率は0.47%だった。売却パッケージの場合、当事者系レビューの比率は0.58%で、当事者系レビューの確率が22%高かった。非売却パッケージでは、当事者系レビューの比率が0.44%となっており、その確率は7%低かった。この7件のパッケージを通じて、12件の独自の特許が14回当事者系レビューの対象となった。2件は2014年に、12件は2015年に請求がなされた。このことは、予想通り当事者系レビューが増加傾向にあること、および仲介特許が特許権の主張に使用されていることを示している。当事者系レビューはまだ比較的新しい制度であるため、現在のデータが示唆する以上にこの趨勢が強まることが予想される。

市場全体の規模

2015年度も市場は縮小したが、最近の環境から懸念されたほどではなかった。2014年6月1日から2015年5月31日までの実際の売買高は2億3,300万ドル(昨年度の2億6,000万ドルから減少)だったと推定される。

昨年度までと比べ、以下のような様々な点で方法の変更を採用した。

  • 売却の認定プロセスにおける契約締結日の使用
  • 企業が売却を登録するのに要する期間に関する新たな知見の活用
  • 平均価格に関する方法の改善

その結果、全体的な市場の推定方法を単純化することができた。2015市場年度中に執行された、実際に観察された売却およびそれらの売却希望価格を使用するというこの新たな方法は、より単純かつ正確であると考える。価格ガイダンスを伴わない売却が観察された場合、資産1件当たり平均売却希望価格189,880ドルに資産数を乗じて予想売却希望価格を算定した。

2015市場年度には、136件の売却が認定され、売却希望価格の総額は3億4,200万ドルであった。同期間中の売却の一部がまだ登録されていないことは明かであり、その比率は約3%と推定されるため、売却希望価格と予想売却価格間の標準的な割引率35%を32%に引き下げた。その結果、2015市場年度の予想市場規模全体は2億3,300万ドルとなる。昨年度の分析では、2014年度の市場を2億6,000万ドルと推定した。したがって、市場は約10%縮小した。

平均的な手数料率である20%を用いれば、この市場におけるブローカーの収入は年間4,700万ドルとなる。ブローカー1人当たり平均総賃金率(loadedlabour rate)を年間30万ドルと推定して市場規模をバックテストし、157フルタイム相当量のブローカーという結果を得た。各仲介業者で3名のブローカーが働いていると仮定すれば、仲介業者数は約52社となる。我々のデータによれば仲介業者は61社であることから、仲介業者1社当たりのブローカー数がもっと少ないか、ブローカーがコンサルティングなど他の業務を行っていることが示唆される。さらに、各仲介業者は年間11件のパッケージを市場に提供している。しかしながら、我々のデータは、少数のブローカーが多数のパッケージを市場に提供し、大半は少数のパッケージしか提供していないことを示している。

表9.2015市場年度の要約
2014年6月から2015年5月までの調査対象パッケージ数 566
米国発行の特許件 6,127
資産総数 8,846
米国発行の特許1件当たりの売却希望価格 277,000ドル
特許資産1件当たりの売却希望価格 190,000ドル
2015市場年度に売却されたパッケージの比率(2015年8月20日現在) 13%
パッケージの売却比率(2014暦年の予測) 29%
パッケージ1件当たりの資産数の平均(資産200件超のパッケージを除く) 15.6
パッケージ1件当たりの資産数の中央値(資産200件超のパッケージを除く) 5
米国発行の特許が10件以下のパッケージの比率 75%
年間売買額 2億3,300万ドル
ブローカー職の被雇用者数(推定) 157

機会、結論および考察

我々は5年前、市場への情報提供のためにこのレポートシリーズの執筆を始め、最も楽観的な予想をはるかに上回る成功を収めた。毎月ほぼ50件のパッケージが市場に入ってきており、ニッチ分野を埋める必要のある事業会社にとって依然潤沢な機会が存在する。価格設定の効率性の向上により、25万ドル以下の価格帯で特許を取得する機会が企業に提供されている。

過去数年間における売手のベストプラクティスとして以下のようなものがある。

  • 一般に、売却を促進するため売却予定の資産を小さなグループに分ける。
  • 積極的に明確な価格ガイダンスを提供する。
  • 可能な場合、EOUの資料を作成して買手の集団に提供する。

事業会社の場合、将来的なNPEへの特許売却を扱った計画の必要性が、引き続き市場データによって裏付けられている。クロスライセンスや移転時ライセンスは、将来的なNPEのリスクを低減する強力なアプローチの一部にすぎない。

我々は、2016年度にクライアントが扱う高額な特許取引において、引き続き役に立つ存在でありたいと願っている。来年度のレポートで更なる問題に答えるために、データ収集や分析の実務の改善に向けて引き続き努力していきたい。

行動計画

特許購入を目指す買手のために、購入プロセスから最大の効果を得る上で従うべきベストプラクティスの助言をいくつか挙げる。特許を購入する場合
  • 購入のビジネスケースを作成し、どんな問題を解決しようとしているのかを特定する。
  • 購入プログラムのためにリターンをモデル化する。
  • 特許の90%以上は自分のニーズに適合しないことを考慮した購入作戦を準備する。早めにそうした特許を対象外とすることは、コストの大幅削減になる。
  • 購入プログラムをできる限り実施可能なものにする。このことは次第に一般化しており、したがってすべての買手にとって重要性が増している。
プログラムのパラメータには以下のものが含まれる。
  • 日程表。売りに出されたパッケージがますます短期間で成約しているため、過去数年より日程表の重要性がはるかに高まっている。
  • 予算
  • 購入チームの権限と責任
  • 購入基準
  • 受入可能な特許パッケージの提供元のリスト
  • 優良な無認可企業のリストなど、特別な要件
以下は、望ましくないパッケージを迅速に排除するフェイルファスト(早めの除外)の選別プロセスである。
  • 興味のある市場や技術を特定するための基準をビジネスケースから抽出し、デューデリジェンスの必要性を確定する。
  • 市場、技術知識および法律面の多面的分析を実行し、いずれか1つの分野で不合格になれば、当該パッケージについてそれ以上の検討を行わない。
  • 経験から学べるようにプログラムに関する基本情報を追跡する。
買値提示と購入に関する助言。
  • 最大限の買値を決定するために評価モデルを構築する。
  • デューデリジェンスは計画以上の時間を要することを想定しておく。
  • 発明家を引き込める場合、発明家とのコンサルティング契約を追加することを検討する。
ケント・リチャードソンとエリック・オリバーは、米国カリフォルニア州ロスアルトスのROLグループの設立パートナー、マイケル・コスタは知的財産アナリスト。

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