特許価値の自動的推定システム
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現在、知的財産は企業価値の主要な構成要素と認識されており、正確で広く受け入れられる特許評価方法の必要性が、かつてないほど重要となっている。
知的財産から生み出される収益が引き続き拡大する中で、特許評価がますます重要となっている。よく知られた特許評価方法としては、インカムアプローチ、コストアプローチ、マーケットアプローチ、オプションアプローチなど数種のものがあるが、実際には適用が困難な場合がある。その主な原因は、それらの方法を裏付ける実証的データが不十分なことや、主観的要因への依存度が大きすぎることにある。
本レポートでは、業界の既存の財務データや特許データに基づいて、特許から生み出される利益を推定する新たな方法 -「 特許評価システム 」- を提案する。その狙いは、主観的分析が絡むのを最小限にとどめることにある。この方法は、特許から生み出される予想リターンの推定を必要とするどんな評価方法とも組み合わせることができる。本特許評価システムの正確性を測るために、本システムによって生成される価値と、実際の特許取引の現実的な価値を比較する。
現在のところ、最も広く使用されている特許評価方法はインカムアプローチとオプションアプローチである。これらは、特許から生み出されるリターンに基づいて価値を算定する。しかしながら、これらのアプローチを用いた特許価値の推定には多くの困難が伴う(例えば、特許に帰せられる利益部分の推定)。本レポートでは、既存の財務・特許データと併せて割引キャッシュフロー(DCF)モデル(インカムアプローチのモデルの1つ)を使用して、この利益部分を自動的に計算する新たな革新的方法を紹介する。そして、この方法によって生成される実際の特許価値を、公表された特許価値と比較することで、その正確性を検証する。
特許が生み出す利益を既存の方法で推定することの問題点
特許権者の多様性
既存の特許評価方法があらゆる種類の特許権者に適合するとは限らない。例えば、インカムアプローチでは、特許権者が、特許技術を組み込んだ製品の製造・販売から得る利益に基づいて特許の価値を算定する。しかしながら今日では、多くの特許権者が製品の製造・販売を全く行わないため、このアプローチは適用できないことになる。さらに問題を複雑にしているのは、自身で製品を製造・販売する特許権者の多くが、製品の販売から収益を上げるだけでなく、その特許技術を組み込んだ製品を製造する他の企業から特許料収益も受け取っている点である。従来のインカムアプローチではこの追加収益も説明できない。
特許所有権に関連する別の問題は、特許権者の特許管理実務が特許価値に大きく影響する場合があるということである。例えば、特許権者が特許に担保権を設定した後、債務不履行となった場合、融資銀行は、元の特許権者が算定した価格で特許を売却して債権を回収しようとするであろう。しかしながら、特許の購入者側は、自身の意見も考慮に入れてもらえない限り、その価格を受け入れない可能性がある。その結果、そうした処分による売却価格が、特許の実際の技術的価値から大幅に乖離することがあり得る。こうした主観性が伴った場合、正確な特許評価は極めて困難になる。
製品に対する特許の寄与
特許技術を組み込んだ実際の製品の利益データが入手可能な場合でも、現実には、特許に帰属するのは利益の一部のみである。販売の努力や製造の効率性など、他の多くの変数が、特定の製品の利益に大きく寄与することがある。また、複数の特許が1つの製品に組み込まれた多様な技術に利用されているため、特許技術に帰せられる利益部分をさらに分割する必要があるかもしれない。ほとんどの場合、特定の製品の技術に利用される特許には、その製造会社自身が所有する特許だけでなく、競合他社や特許不実施主体(non-practicing entity)に帰属する特許も含まれている。さらに、1つの特許が、多くの異なる製品で使用される技術に関わっている場合もある。このような場合、恐らくは多くの異なる製造会社の製品も含め、数種の製品の利益を合算しなければならない。その結果、1つの特許の価値の算定が非常に複雑となる。
将来の利益の予測
特許を正確に評価するには、特許から生み出される将来の利益を説明しなければならないため、その利益の予測に主観的な要素が入り込む可能性が高い。将来の予想利益は普通、特許権者によって算定されるため、往々にして誇張されがちである。
特許利益推定のための新たな方法
以上で述べたように、特許価値の客観的な評価が困難なことを踏まえた場合、正確な客観的方法では、特許技術が関係するセクターの業種全体、およびその業種の全参加者、つまり製造会社と特許権者の両方を考慮に入れる必要がある。
以下で詳しく述べる新たな方法は、まさにそれを実行する。そして、市場規模、その市場参加者全員が生み出す利益全体、適用されるすべての特許、その業種における技術の寿命を考慮する一方で、主観的変数はできる限り分析から排除する。
具体的に言えば、対象となる特許の市場が、その市場で活動する特許権者全員から得たデータを用いて定義される。次に、その市場の事業体の財務データを用いて、市場規模および市場から得られる利益を推定する。そして、市場からの推定利益総額を基にして、すべての特許技術に帰せられる利益部分を算定した後、各特許に割り当てられた個別スコアに応じてそれを各特許間で分割する。次に、各特許の実際の評価期間を考慮に入れるが、それは、最大20年という特許の存続期間と異なる場合がある。最後に、DCF法を適用して特許価値を算出する。図1に、この方法の要約が示されている。
図1.特許評価システムの方法

市場規模と利益
市場参加者の特許データと財務データを用いて市場規模を推定できるかを検証するため、統計分析により、特許件数(有効な特許の件数または出願件数)と企業収益の相関を調査した。
調査対象企業は、特定の有効特許を1件以上保有する米国の公開企業である。様々な業種間の差異を評価するために、NASDAQの産業分類を用いて対象企業をグループ分けした。各グループの収益総額(グループに含まれる企業の収益合計)と特許総数(グループの特許出願件数と有効特許件数の合計)を計算するのに用いた期間は、2009年から2013年までの5年である。2年間の特許出願数が10件に満たない業種は除外した。全部で87の業種について、ピアソン相関解析を用いて特許件数と収益の相関を分析した。分析結果は表1と表2に示されている。表1は、有効特許件数が特許出願件数よりも収益との相関が高いことを示している。
表1.ピアソン相関係数に基づく企業数
ピアソン相関係数の値 |
企業数(収益と出願件数の相関) |
企業数(収益と有効特許件数の相関) |
>0.3 |
43 |
77 |
>0.5 |
34 |
74 |
>0.7 |
29 |
66 |
>0.9 |
16 |
44 |
表2.有効特許と収益の相関の上位10業種(全業種のデータについては表4参照)
業種名 - セクター名 |
企業数 |
ピアソン相関係数 |
容器入り商品/化粧品 - 基礎産業 |
4 |
0.999408865 |
カタログ/独自製品の販売 - 消費者サービス |
6 |
0.997138588 |
バイオテクノロジー - 資本財 |
13 |
0.996677901 |
電子部品 - テクノロジー |
14 |
0.996224361 |
コンピュータ用通信機器 - テクノロジー |
17 |
0.995777597 |
航空宇宙 - 資本財 |
10 |
0.995627976 |
自動車製造 - 資本財 |
12 |
0.99535364 |
バイオテクノロジー - ヘルスケア |
104 |
0.994939964 |
コンピュータ・ソフトウェア - テクノロジー |
79 |
0.992561494 |
産業用機械/部品 - その他産業 |
5 |
0.991021666 |
年間の特許出願が10件以上の87業種の約89%で、ピアソン相関係数が0.3を上回っていた。したがって、有効特許件数とこの89%に含まれる企業の収益の間には、強い相関があると言える。
表2は、有効特許件数と収益間の相関が高い上位10位までの業種、および各業種の企業総数とピアソン相関係数を示している。
この分析から、市場参加者の財務データと特許データを用いて市場規模を推定できると言えるであろう。しかしながら、弱い相関または逆の相関を示す業種については、この評価方法は正当と言えない可能性がある。
表3.公表された価格と本特許評価システムによる見積価格の比較

本特許評価システムでは、市場を定義する際に、対象となる特許の特許分類コードを使用している。特許分類コードは、特許が適用される技術分野に基づいて特許を分類する標準化されたシステムの一部を構成している。このシステムではまた、財務データと特許データを用いて特許1件当たりの平均収益を計算するために、対象となる特許と同一の特許分類に所属する特許すべての出願者全員を合計している。次に、この平均収益にその市場の有効特許件数合計を乗じることにより、市場規模が推定される。市場の利益の合計は、市場規模を使用し、参加者全員の税引後純利益を平均することによって推定される。
表4.有効特許と収益の相関が最も高い業種
業種 |
企業数 |
ピアソン相関係数 |
容器入り商品/化粧品 - 基礎産業 | 4 | 0.999408865 |
カタログ/独自製品の販売 - 消費者サービス | 6 | 0.997138588 |
バイオテクノロジー - 資本財 | 13 | 0.996677901 |
電子部品 - テクノロジー |
14 | 0.996224361 |
コンピュータ用通信機器 - テクノロジー |
17 | 0.995777597 |
航空宇宙 - 資本財 | 10 | 0.995627976 |
自動車製造 - 資本財 | 12 | 0.99535364 |
バイオテクノロジー - ヘルスケア | 104 | 0.994939964 |
コンピュータ・ソフトウェア - テクノロジー | 79 | 0.992561494 |
産業用機械/部品 - その他産業 | 5 | 0.991021666 |
油田サービス/設備 - エネルギー | 8 | 0.987978709 |
専門医療 - 資本財 | 4 | 0.985010141 |
汚染防止設備 - 資本財 | 3 | 0.984874498 |
金属加工- エネルギー | 6 | 0.984720493 |
専門医療 - ヘルスケア | 13 | 0.984709868 |
病院/看護管理 - ヘルスケア | 4 | 0.984435018 |
消費家電製品 - 非耐久消費財 | 7 | 0.984013473 |
テレビサービス - 消費者サービス | 9 | 0.983623507 |
対事業所サービス - その他産業 | 45 | 0.98012015 |
電子部品 - 資本財 | 6 | 0.978317523 |
その他消費者サービス - その他産業 | 1 | 0.970336998 |
金属加工 - 耐久消費財 | 6 | 0.9694767 |
コンピュータ用通信機器 - テクノロジー | 17 | 0.963246868 |
オフィス用設備/備品/サービス - 耐久消費財 | 5 | 0.962987485 |
林産物 - 基礎産業 | 4 | 0.960919896 |
産業用機械/部品 - テクノロジー | 35 | 0.959453392 |
特殊工業製品 - 資本財 | 7 | 0.958350469 |
建築製品 - 耐久消費財 | 4 | 0.95495862 |
製靴 - 非耐久消費財 | 9 | 0.95313726 |
石油・ガス生産 - エネルギー | 31 | 0.947454943 |
自動車部品 - 資本財 | 24 | 0.946621619 |
消費者向けグリーティングカード - 消費者サービス | 1 | 0.944540852 |
電気製品 - 耐久消費財 | 2 | 0.942375522 |
電子医療機器 - ヘルスケア | 2 | 0.942140339 |
特殊化学製品 - 耐久消費財 | 10 | 0.939672972 |
軍需品および付属品 - 資本財 | 3 | 0.938889319 |
特殊工業製品 - ヘルスケア | 18 | 0.934566678 |
容器入り商品/化粧品 - 非耐久消費財 | 5 | 0.933429905 |
娯楽用品/玩具 - 非耐久消費財 | 9 | 0.925757759 |
百貨店/専門小売店 - 消費者サービス | 2 | 0.922661201 |
容器/梱包 - 耐久消費財 | 12 | 0.922102302 |
発電 - 公益事業 | 8 | 0.912091769 |
産業用機械/部品 - 資本財 | 70 | 0.910659487 |
電気公益事業 - 公益事業 | 18 | 0.903878337 |
電気製品 - テクノロジー |
10 |
0.899288978 |
特殊工業製品 - 耐久消費財 |
4 |
0.898461653 |
器具/金物類 - 資本財 |
1 |
0.897116287 |
マルチセクター企業 - その他産業 |
3 |
0.897110523 |
オフィス用設備/備品/サービス - その他産業 |
4 |
0.894889665 |
飲料 - 非耐久消費財 |
5 |
0.893205299 |
電気製品 - 資本財 |
27 |
0.883992896 |
半導体 - テクノロジー |
122 |
0.8734982 |
コンピュータ製造 - テクノロジー |
12 |
0.872710122 |
その他製造業 - 耐久消費財 |
7 |
0.865708477 |
ラジオ・テレビ放送・通信機器 - テクノロジー |
29 |
0.855652613 |
消費家電製品 - 耐久消費財 |
3 |
0.836780254 |
加工食品 - 非耐久消費財 |
21 |
0.79668538 |
飼育/播種/製粉 - 非耐久消費財 |
7 |
0.79526501 |
EDPサービス - テクノロジー |
64 |
0.772834121 |
医療/看護サービス - ヘルスケア |
3 |
0.766912211 |
建設/農業用機器/トラック - 資本財 |
9 |
0.746520529 |
衣料品 - 非耐久消費財 |
9 |
0.745085135 |
出版 - 耐久消費財 |
2 |
0.729871136 |
消費家電製品 - エネルギー |
4 |
0.720692047 |
コンピュータ周辺機器 - テクノロジー |
15 |
0.71085734 |
通信機器 - 消費者サービス |
12 |
0.704553528 |
通信機器 - 公益事業 |
44 |
0.668183038 |
軍事/政府/技術関連 - 資本財 |
6 |
0.658079922 |
総合石油会社 - エネルギー |
11 |
0.624824975 |
大手製薬会社 - 耐久消費財 |
151 |
0.603961066 |
鉄鋼/鉄鉱石 - 基礎産業 |
7 |
0.597556285 |
投資銀行/ブローカー/サービス - 金融 |
8 |
0.558670681 |
金融/消費者サービス - 金融 |
10 |
0.52438708 |
産業用機械/部品 - エネルギー |
16 |
0.509890749 |
損害保険会社 - 金融 |
6 |
0.400420578 |
製紙 - 基礎産業 |
9 |
0.338250447 |
医療/歯科医療用器具 - ヘルスケア |
59 |
0.33685498 |
家具 - 耐久消費財 |
9 |
0.291347663 |
プラスチック製品 - 非耐久消費財 |
7 |
0.2470702 |
大手銀行 - 金融 |
18 |
0.238980255 |
通信機器 - 基礎産業 |
6 |
-0.356323484 |
自動車アフターマーケット - 耐久消費財 |
3 |
-0.460730086 |
主要化学製品 - 基礎産業 |
39 |
-0.775429086 |
金属加工 - 資本財 |
22 |
-0.79338969 |
不動産投資信託 - 消費者サービス |
6 |
-0.858756279 |
通信機器 - 耐久消費財 |
11 |
-0.861781097 |
農薬 - 基礎産業 |
5 |
-0.981182581 |
市場の利益
市場の利益に対する特許の寄与分は、市場の利益全体の一部にすぎない。販売、販売促進、顧客満足、経費削減、R&D活動など、市場参加者の他の活動も市場の利益全体に寄与する。利益全体のうちの特許の寄与分を算出するために、企業の活動全体に対するR&D活動の比率、企業の費用総額に対するR&D費の比率、または企業の従業員総数に対するR&D関連従業員総数の比率のいずれも使用できるが、本特許評価システムでは、企業の従業員総数に対するR&D関連従業員総数の比率を用いて、市場の利益に対する特許の寄与分を算出した。
各特許に帰せられる市場の利益
各特許が市場の利益に寄与する額は、すべての特許の寄与による利益総額を、市場の特許総数で除すことによって得られる。
しかしながら、市場の利益に対する各特許の相対的な寄与度は互いに異なり得る(特許によって重要性に違いがある)。そのため、各特許の評価スコアを使用してこうした差異を考慮に入れた。特許の評価スコアは、多くの商用データベースのプロバイダーが提供している。本特許評価システムでは、ActionablePatents.comが提供するスコアを使用した。
特許の存続期間
特許の法定存続期間は最大20年であるが、個々の技術にはそれ自体の寿命があるため、特許の実際の価値が法定存続期間の終了時まで続くとは限らない。本レポートでは、特許の実際の技術上の寿命を測定するために、その技術分野における特許すべての引用関係を抽出し、被引用特許と引用特許の出願日間の期間の中央値を使用した。そして、DCF法により、市場の利益に対する特許の将来の寄与を計算した。
ケーススタディ1
この方法を例証するための事例を図2に示す。
スマートフォン市場に9社(A社からI社まで)が参加していると仮定する。このうち、A、B、E、F、G社は財務データを公開しているが、C、D、H、I社は公開していない。この長方形はある年のスマートフォン市場の規模を示している。この年の各社の収益は、それぞれの平面の大きさに対応している。
図2.公開・非公開のスマートフォン会社9社

市場の利益
本特許評価システムでは、A、B、E、F、G社について特許1件当たり収益[収益/(有効特許件数)]を計算する。本システムでは、特許1件当たりの収益の平均値Rを算出する際、外れ値(特許1件当たり収益の最大値と最小値)を除外して計算を行う。9社全体が所有するスマートフォンの有効特許総数をNとする。スマートフォン市場全体の規模Mは、次式で計算される。
M=R x N
A、B、E、F、G社の税引後利益率の平均をPRとすれば、市場の利益Pは次式で計算される。
P=M x PR
すべての特許によって生み出される市場の利益
本特許評価システムでは、平均価値CRを得るために、1社当たり従業員総数に対する特許発明家総数の比率を計算する(最大値と最小値は除外する)。特許が生み出す市場の利益Cは次式で計算される。
C= P x CR
個々の特許が生み出す市場の利益
スマートフォン市場の特許全体に対する特許評価スコアの合計をSとし、特定の特許に対する特許評価スコアをsとする。その特定の特許が生み出す市場の利益vは次式で計算される。
v=C x (s/S)
個別の特許の価値
本特許評価システムでは、この技術分野における全特許間の引用関係を使用して特許の平均寿命を算出する。すなわち、被引用特許と引用特許の出願日間の期間の中央値を特許の平均寿命Tとする。すると、特許の価値Vは次式で計算される。
現在価値(V)=


ケーススタディ2
表3は、公開された実際の特許の売却価格と、同じ特許に関する本特許評価システムの算出結果を比較したものである。ここでは、米国特許商標庁の特許譲渡データベースとActionablePatents.comを利用して取引特許のリストを作成した。ただし、公表された取引特許の数はデータベースと厳密には一致していない。比較のために、本特許評価システムによって算定された価格は、公表された売却取引の特許数に応じて増価または減価されている。
主観性と客観性
本特許評価システムの結果は、多くの場合、実際の市場価格によく近似している。しかし場合によっては、評価結果が、公開された市場の売却価格と4倍も食い違うことがある。こうした乖離の原因としては、特許が標準的なプールの一部か特許プールの一部か、売却者と購入者が直接的な競争関係にあるか、特許に侵害の請求や訴訟が絡んでいるか、あるいは特許権者の破産状況など、多くの状況的要因が考えられる。それにもかかわらず、本特許評価システムは主観的要因を最小限にとどめ、実際のデータに評価の基礎を置いている。また、本特許評価システムは自動化されているため、複数の特許を低コストで迅速に評価することができる。知財のファイナンスや売買に関与する事業体にとって、本特許評価システムは交渉の効果的な出発点として機能するであろう。
行動計画
企業が自社の知財資産からより大きな価値を生み出そうとする中で、広く受け入れられる特許評価システムの必要性がかつてないほど高まっている。そうしたシステムが直面する困難には以下のものがある。
• 様々な種類の特許権者とその多様な目的を認識し、考慮する必要性
• 特許を基にした製品やサービスから得られる利益に対する当該特許の寄与分の理解
• 特許に帰せられる将来の利益の正確な予測
本特許評価システムの方法では、下記事項を考慮することにより上記の3つの課題に対処しようとする。
• 特許権者が活動する市場の規模
• その市場の全参加者が生み出す利益総額
• その市場に適用される特許総数
• 関連業種における技術の寿命