16 Sep
2016

インドにおける特許出願に関する十戒 - 第1部

インドにおける特許の出願、手続処理および管理に関する3部構成のレポートのうち、この第1部では、インド亜大陸における国際出願の提出と初期段階の手続処理を取り上げる。

国内移行の期限、特許庁の選択、事業体の種類

国際出願の場合、インドへの国内移行の期限は最先の優先日から31カ月後である。ただし、PCT出願時にインドを指定していることが条件となる。

国際出願は、ムンバイ、ニューデリー、チェンナイ、コルカタにあるインドの4つの特許庁のいずれにおいても申請することができる。出願先となる特許庁は、出願人の送達先住所または特許代理人の住所に基づいて決まる。ある特許庁に提出した国際出願は別の特許庁に移転することができず、また各特許庁は互いに独立に機能しているため、どの特許庁に出願するかを決定する前にこの問題を十分考慮するかインドの特許専門家に相談することが賢明であろう。

出願人は、国際出願の提出に先立ち、出願する事業体の選択を要求される。インドで国際出願を申請することができる事業体の種類は、自然人、スタート アップ企業、小企業、大企業である。

出願人がスタートアップ企業として申請を行うには、インドで非公開有限責任会社、パートナーシップまたは有限責任パートナーシップとして登録していることに加え、設立日または登録日から5年を超えていないこと、過去5年の事業年度のいずれも売上高が2億5,000万ルピーを超えていないこと、かつ技術や知的財産を活用した新しい製品、工程またはサービスの革新、開発、展開または商業化に向けて活動していることを証明する十分な証拠を提出しなければならない。

小企業として申請を行うには、物品の製造もしくは生産に従事する企業であり、かつ設備投資の額が1億ルピーを超えていないこと、またはサービスの提供もしくは供給に従事する企業であり、かつ設備への投資額が5,000万ルピーを超えていないことを証明する十分な証拠を提出しなければならない。

自然人、スタートアップ企業または小企業として申請を行うのに十分な証拠を提供できない出願人は、大企業として申請を行わなければならない。

出願から維持までの各段階で適用される公的手数料は、申請を行うための事業体の区分の種類によって異なるため、適切な区分を選択することが重要である。しかしながら、特許庁は特定の事業体の区分での申請を行うために十分な証拠を要求しており、そうした証拠の収集や提出は、リスクや費用は言うに及ばず、膨大な作業を伴う可能性がある。したがって、特定の事業体の区分を選択する得失を比較検討することが賢明であろう。

出願に必要な書類

国際出願に必要な書類としては以下のものがある。

a. 出願人や投資家が適法に作成した出願書の原本。該当する場合、出願書と共に譲渡証書や雇用契約書など当該出願を行う権利を証明する文書を提出しなければならない。

b. 国際公開公報(英語でない場合はその英訳版およびその翻訳の証明書)

c. PCT第19条または第34条に基づく補正がある場合、その補正書

d. 各外国特許出願の番号、出願日および現在の状況に関する出願日から6カ月以内の情報や保証を記載した様式3

e. 様式5による発明者の要件に関する宣言書

f. 出願日から3カ月以内に、登録特許代理人への授権を証して作成された委任状の原本

必要な書類はすべて、英語かヒンディー語で電子的手段を使って提出しなければならない。書類をスキャンした写しと原本を電子出願日から15日以内に特許庁に提出することが望ましい。

法定の特許非対象

出願人は国際出願の前に特許性がない対象に関連する拒絶について認識しておかなければならない。インド特許法は「発明に該当しないもの」を定めており、それに基づき特許性がない対象として拒絶の決定が下される。よく提起される拒絶理由は以下の通りである。

化学およびライフサイエンス分野の発明の場合

• 科学的原理

• 自然に存在する生物または非生命物質

• 既知の物質の新たな形態の発見であって、当該物質の既知の効用の増大をもたらさないもの

• 既知の物質の新たな用途

• 単なる混合またはその混合を製造するためのプロセス

• 農業または園芸の方法

• 人間に対する外科的、治療的、予防的(診断的、療法的)またはその他の処置の方法、あるいは動物に対する類似の処置の方法であって、対象を疾病から治癒させ、またはそれらもしくはそれらの産物の経済的価値を高めるもの

• 植物・動物の全体または一部。これには種子、変種および種、ならびに植物・動物の生産・繁殖のための 生物学的プロセスが含まれる。

• 伝統的知識

機械工学や電子工学の分野における発明の場合

• 根拠のない発明、または十分に確立された自然法則に明らかに反する事項をクレームする発明

• 既知の機械または器具の使用法

• 既知の方法で機能する既知の機器の単なる配置もしくは再配置または複製

• 集積回路の回路配置

コンピュータ関連の発明の場合

• 数学的方法もしくはビジネス方法、またはコンピュータ・プログラムそれ自体もしくはアルゴリズム

• 精神的活動を行うための単なる計画、原則もしくは方法、またはゲームの実行方法

• 情報の提示

補正

インド特許法は自発的補正と非自発的補正の実行を認めている。出願人は、国際出願の提出時に明細書からクレームを削除できる。どの時点でも実行できる他の自発的補正には、出願人の名称、住所および送達先住所などといった軽微な補正がある。こうした自発的補正を行うには、いずれにも少額の公式手数料がかかる。一方、非自発的補正が実行できるのは、「初回審査報告書(「FER」)」と呼ばれる最初の拒絶理由通知書の発行後、そこに記載された拒絶理由に合わせて是正を行う場合に限られる。非自発的補正では公式手数料は課せられない。明細書に対する補正は、権利放棄、訂正または説明以外の方法では実行できない。注意する必要があるのは、自発的補正または非自発的補正のいずれにおいても、当該補正の実行前に明細書に実質的に開示または提示されていなかった対象をクレームまたは 記述する補正は一切認められないことである。

公開および早期公開

インドで提出された国際出願は出願日から18カ月後まで公開されない。したがって、この期間中、国際出願は一般からの精査を受けない。通常、審査管理官(Controller)は18カ月の期間が満了する1カ月前以降に国際出願を公開する。しかし出願人は、望ましいと考えた場合、18カ月の満了前の公開、すなわち早期公開を請求することができる。国際出願の公開日は重要である。それは、公開日から特許付与日までの間、出願人は、特許が公開日に付与された場合と同様の特権と権利を享受できるからである。反面、出願が公開されると、一般からの精査を受けることになり、第三者の注目を集める可能性があることから、審査管理官が出願を公開するまで待つのが有益であることもある。

審査、迅速審査および優先審査

インドで提出される特許出願はすべて、審査請求が行われて初めて審査対象となる。すべての特許出願は出願日ではなく審査請求日に基づいて審査される。したがって、できるだけ早く審査請求を行うことが賢明である。

国際出願を行う出願人は、(i)審査請求、(ii)迅速(express)審査請求、または(iii)優先(expedited)審査請求を行うことができる。どの場合でも、請求は最先の優先日から48カ月以内に行わなければならず、請求がない場合は、出願人が国際出願を取り下げたものとして取り扱われる。

出願人は、国内移行の期限である31カ月の期間満了以前であれば、迅速審査請求の申請を選択することができる。しかしながら、この種の請求は総じて国際出願の場合にのみ有益であり、また、迅速審査請求に基づく審査は31カ月目より前に実施されることが望ましいことから、その請求は31カ月の期限よりはるかに前に (例えば、およそ19カ月経過後に)行われることになる。迅速審査請求には追加的な手数料が必要な上、案件が31カ月の期限より前に審査されるかどうかは審査管理官の裁量に任されているため、迅速審査請求を申請することは出願人にとってあまり有益とは思われない。

出願人は迅速審査に代えて優先審査の請求を選択することもできる。ただし、請求できるのは出願人が上述のスタートアップ企業に区分されるか、インドを国際調査機関または国際予備審査機関として選択した場合に限られる。

出願人が利用する方法とは関係なく、審査が終了するとFERが発行される。FERの発行後、国際出願が特許を受けられる状態になるまでの期間は発行日から6カ月である。ただし、この当初6カ月の期間が満了する前であれば、3カ月間の期間延長を1回だけ請求することができる。当該期間の満了後は追加的な延長の規定がないため、出願は放棄されたものとして取り扱われる。この放棄を回避する規定が存在しないことに注意が必要である。

FERに対する回答の提出後、一般的な実務としてヒアリングが行われることになっており、審査管理官はその終了後にのみ国際出願の受理または拒絶を決定する。通常、ヒアリングは回答提出日から1年以内に行われる。ヒアリング終了後、出願人は15日以内に書類を提出しなければならない。

出願の取り下げ

インドで提出した国際出願は、出願後、特許付与前であれば、取り下げ請求を行うことによりいつでも取り下げられる。国際出願の審査を請求した後、FERの発行前であれば、取り下げの結果として審査手数料の90%が返還される。

分割出願

インド特許法は発明の単一性の概念を認めている。そのため、実体審査プロセス中に明瞭性の欠如や単一性の欠如に関する拒絶理由が提示されることがある。このような状況で出願人が単一性の原則に違反したとされた場合、審査官は分割出願を指示することがある。こうした拒絶や指示とは関係なく、出願人は自発的に分割出願を行うこともできる。いずれの場合でも、分割出願は親出願の特許付与前に行う必要があるが、親出願に対する特許付与前に分割出願の特許が付与されることはない。さらに、分割出願の期間はそれ自体の提出日ではなく親出願の提出日から起算される。

分割出願を作成する際は、親出願に開示された発明に関連するクレームは含められないことを覚えておくことが大切である。また、インドでは区別される発明概念のそれぞれについて1つ以上の分割出願を行うことができるが、分割出願の再分割はできないことに注意する必要がある。

対応出願に関する明細事項

インドでは、出願人が同一または実質的に同一の発明についてインド以外の国で特許出願を進めている場合、インドにおける特許出願時に、かかる国外の出願すべてに関して出願国、出願日、出願番号、出願の現状、公開日、付与日などの明細事項を提出することが義務付けられている。さらに出願人は、インドで特許が付与されるまでは当該明細事項を継続的にインド特許庁に通知することを誓約する義務も負う。したがって、インド国外で進めている特許出願の状況に変化が生じた場合、その都度、インド特許庁に当該明細事項を提出する必要がある。この要件に違反した場合、インドにおける特許付与を拒絶する根拠または特許を無効にする根拠に なり得る。

さらに、インド特許庁はFERにおいてインド国外の特許出願の進行状況に関する明細事項の提出を要求することがある。こうした要求がなされた場合、出願人は要求された明細事項を提出しなければならない。要求される明細事項には拒絶理由通知書または優先出願で付与されたクレームが含まれる可能性がある。国外の出願が英語で行われていない場合、その英訳を提出しなければならない。

付与前異議申立

インドでは特許出願の公開から特許付与までの間、だれでも特許付与に対する異議申立を行うことができる。異議申立は様々な根拠に基づいて審査管理官に提起されるが、そこには、とりわけ発明の不正な取得、新規性の欠如、進歩性の欠如、発明の先使用者の存在、開示の不十分性および/または義務的な手続の違反などが含まれる。

付与前異議申立を提示するには、異議申立陳述書にそれを裏付ける証拠(もしあれば)および望む場合はヒアリングの請求書を添えて、特許出願がなされた特許庁に提出しなければならない。当該異議申立通知を受け取った審査管理官は、それが維持可能と判断した場合、当該異議申立が提起された旨を出願人に通知しなければならない。出願人は、異議申立通知の受領後3カ月以内に応答書を提出することができる。その後、審査管理官は、特許出願を拒絶する命令または補正を指示する命令を下す前にヒアリングを開催しなければなら ない。

当初、付与前異議申立の規定は、第三者の所見を求め、根拠のない特許をふるいにかける目的で導入された。しかしながら、導入以後、付与前異議申立は本格的な当事者系手続となった。さらに、インド特許法は付与前異議申立の権利をだれにでも付与しているため、これが悪用された場合危険な手段となる可能性がある。そのため、出願人は少なくとも義務的手続を遵守することにより、特許付与に対する異議申立のリスクを最小限にとどめることが望ましい。

ここで第1部を終了する。

第2部の予告

警戒すべき拒絶理由通知書への対処、譲渡証書の作成、拒絶に対する不服申立など。

第2部もどうぞご期待ください。その時まで・・・充実した特許活動を。

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